初詣

真生は昼間に「引っ張ってでも初詣いくからね!絶対よ!」なんて張りきってなかったっけ。なのに今ではすっかり寝てしまっている。ガキ使とか紅白とかボクシングとか大晦日の番組をぐるぐる回してたのは父さんで、普通の音量でうるさいのに真生はちっとも起きなければで、張りきってたカウントダウンをするよりも前に寝てしまった。最初はうとうと、次に肩にもたれかかってきて、最終的におれの膝を枕に寝てしまった。動くに動けないし、重いから足痺れそうだ。
もうとっくに年は明けてしまっていて、父さんと母さんは二人で初詣に行ってしまった。おれは最近お気に入りのゲームしながら真生の枕になっている。そうやってまた時間が過ぎていくと、真生の携帯に着信が入った。発信者がよく知ってるクロだったから代わりにでる。

「もしもし」
『研磨か。真生のやつ寝てんの?』
「うん」

あんなに着信音も大きいのに真生はピクリともしていない。

『じゃあ今からの初詣はなしだな』
「約束してたの?」
『真生のやつ三人で行くって張りきってたろ?』
「そうだっけ」

思い返してみるけれど、そんな約束をした記憶がない。おれが返事をしないのに二人で決めたんだろうな。そう思ってると『あー、研磨ゲームしてたかもな』ってクロは言った。よくあることだからお互い気にしない。

『二人とも風邪ひかないようにしろよ』
「うん」
『研磨もある程度したら寝るんだぞ』
「うん」

クロはこうやってよくお兄ちゃん風を吹かせてくる。クロもね、とだけ返してもう切ろうとすると『あーそうそう』って遮る声がした。

『そういえば言ってなかったな。あけましておめでとう』
「…オメデトウ」

なんとなく気恥ずかしかった。

(20160102)


High Five!