あだ名

「ねーねー、てっちゃん」
「ん?」

てっちゃん。
オレのことをそう呼ぶのは今も昔も真生一人だけだ。最初こそ"クロくん"と呼んでたものの、まだ小さかったからか、舌がうまく回らずもつれさせていた。みんなと一緒でクロでいいよ、と伝えたはずなのに、いつの間にか"てっちゃん"になっていた。
今ではすっかり慣れたし、真生からそう呼ばれるのに愛おしさを感じるが、子どもの頃は恥ずかしかった。男なのにちゃん付けなんて!!って。まあ、すぐ気にしなくなったけど。

「てっちゃん、てっちゃん、聞いてたー?」
「ごめんごめん、なんて?」
「あのね、今からウチきてー!昨日パイ焼いたんだー」
「パイ?」
「うん!あのねー、ハロウィンだからねー、アップルパイ!」

うん、期待を裏切らない。
いろんなとこから「カボチャじゃねーのかよ」という突っ込みと、微笑ましそうな笑みを頂戴した。ついオレも笑った。

「えー、なんで笑うの?あっ!ちゃんと白雪姫のだよ!!」
「知ってるよ」

小さい頃からの双子が好きなものも、研磨にはなくて真生にはあるよく分からないこだわりも、全部知ってるよ。

(20141031)


High Five!