おめでとう!

「えーっ!リエーフ昨日お誕生日だったの?」
「そうですよーっ!!」

なのに、誰もなーんにも言ってくれない!

真生よりもずいぶん大きい一年生はそう言って地団駄を踏みました。心なしか地べたが揺れているような気がします。

「真生さんもオメデトウって言ってくれなかったーっ」
「ごめん!ごめんね!」

駄々をこねるようにするリエーフからは、裏切られたと言われているようで、真生も悲しくなってきました。知らなかったとはいえ、傷つけてしまったのです。

「リエーフ、ごめんね!落ち着いて!」

ぶんぶん動く腕を掴みました。真生も力いっぱい引っ張られて一緒にぶんぶんなってしまいました。あんまりに揺れるものですから、目が回りそうです。手を放してしまえは済む話なのに、そんな簡単な考えは真生の頭からはすとんと抜け落ちていました。

「リエーフ、そろそろ落ち着け。真生も手ぇ放す」

リエーフの腕を掴んだままの真生の手を放させました。てっちゃんです。いつだって困ったときに助けてくれるのです。
耳の横でてっちゃんが「おい、大丈夫か」と気遣ってくれました。真生は頭に手をやりながら「うー…ぐるぐるする……」とつぶやきました。目が回ってもたれかかる真生をてっちゃんはしっかりと支えてくれていました。

「あーそうだ!てっちゃん大変!リエーフ昨日お誕生日だったって!!」
「聞いてた、聞いてた。オメデトウ、リエーフ」

にぃっといつものように笑うと、リエーフは一瞬きょとんとしました。けれど、すぐに嬉しそうにして「あざーっす!!」と頭を下げました。そのあとみんなを集めてハッピーバースデーを歌いました。



次の日の昼休み、真生は一年生の教室の並ぶ階にきていました。まずは1組をそうっと覗きました。年下とはいえ、知らない人ばかりがいるクラスは緊張するものです。

「あ、いた!」

目的の人はすぐに見つかりました。いつものお日さまのような笑顔で友だちと一緒にご飯を食べています。なので、このまま教室の中に入っていくのは気が引けました。かと言ってずっと教室のドアにへばりついていては他の人の邪魔になります。一年生たちも知らない先輩がいるからか、頭が眩しい位の金色だからか、あるいはその両方か、遠巻きに見られている気がします。やっぱり放課後にしよう。そう思い直して、教室を離れようとするとどうでしょう。向こうからわざわざ声をかけにきてくれたのです!

「真生先輩こんにちは!どうしたんですか??」
「走くん…!」
「ハイ!」

今日も笑顔がきらきらしています。

「今日お誕生日なんでしょう?おめでとう!」
「ありがとうござ…わあ!ありがとうございますっ!!」

にこにこ顔も、真生が小さな包みを手渡すと、もっと嬉しそうになりました。

「もうお誕生日で失敗しないって思ったの!」
「昨日のリエーフですか?」
「うん。走くんはリエーフほど気にしないかもしれないけど、やっぱりお祝いないのさみしいもんね」
「へへっわざわざ来てくれてありがとうございます!嬉しいです!」
「また放課後ね!」
「ハイ!」

真生は走くんとばいばいすると、今度は1年3組に向かいました。3組の教室でも目的の人はすぐに見つかりました。走くんの時と違ったのは、すぐに向こうも気づいてバッチリ目が合ったことでした。リエーフも走くんと同じように真生のそばまでやってきてくれました。

「真生さんどうしたんですか?」
「リエーフ一昨日がお誕生日だったからね、遅くなったけどプレゼント!」

走くんのものと同じ包みをリエーフに渡してあげました。するとリエーフはパァッと笑顔になって「真生さんっ大好きーっ!!」と力いっぱい抱きしめてくれました。普段からこういう甘えた名ところが可愛いと思っていますが、あんまりにもぎゅうぎゅうされると苦しくなります。

「り、りえーふ!ギブ!まおさん、くるし…!」

バシバシと背中やら腕やら叩いたところで、感極まったリエーフは放してくれませんでした。しばらくして通りかかったシバくんが助けてくれるまでそのままでした。

(20141103)


High Five!