ぎゅー!

練習が終わると外は真っ暗だった。体育館もひんやりしてるけど、外は風が冷たくて、もっと寒い。家に着くまでを、いつものように研磨とてっちゃんと三人で歩くけれど、その歩いてる間もずーっと寒かった。
ついこないだまであったかかったのに、急に寒くなってきた。もう11月も半分近いもんね。これからどんどん寒くなるんだ。やだな。寒いのって苦手。暑いのよりちょっとだけマシだけど、やっぱり苦手。
ピューって、冷たい風が吹いた。

「うー寒いー!」
「…寒い」
「寒ぃ…!」

みんなほとんど一緒に言った。
研磨はあたしよりもずっと寒そうで、きゅっと縮こまってる。てっちゃんもきゅっと縮こまってるけど、研磨ほどじゃない。研磨はあたしよりもずっとずっと寒いのも暑いのも苦手だ。てっちゃんはあたしよりも寒いのも暑いのも平気。
もともと研磨とてっちゃんの間を二人に引っ付いたり離れたりしながら歩いていたけど、両手を伸ばして、二人と腕を組んだ。うん、さっきよりあったかい。

「真生、歩きにくい」
「だって寒いんだもん」

研磨は文句を言ったけど、逆にあたしともっと引っ付いた。片腕だけじゃなくて、両腕を絡めてる。磁石みたいに研磨の頭と頭をくっつけた。反対側はてっちゃんがいて同じように腕を組んでいる。もぞもぞして、研磨みたいにもっとくっつくのかと思ったらちょっと違った。

「つめたっ…!」
「うおっ、真生あったけぇー」
「てっちゃん手ぇ冷たいー」

てっちゃんの両手で包まれた手がじんじんする。てっちゃんは冷え性なのか、寒い時はいっつも冷たい。
てっちゃんはあたしの手をカイロみたいにもみくちゃにした。しばらくそうやって満足したのか、今度は手を繋いでてっちゃんのポッケにしまい込んだ。だんだんとぽかぽかあったかくなってくる。

「三人一緒だとあったかいね」

風はやっぱり冷たくて、寒さで鼻はすんすんするけど、くっついてるとその分あったかい。お家までまだかかる。きゅっと二人の腕を引っ張ると、そのまま引っ張られてくれた。

(20141111)


High Five!