おめでとう!

明日はてっちゃんのお誕生日です。
プレゼントは一週間ほど前に、研磨と二人で買いにでかけました。今までは二人でお小遣いを合わせて一つのプレゼントを選んでいましたが、今年は一緒にでかけて、それぞれがプレゼントを買いました。喜んでくれるかなあ、なんてそわそわする真生と違って、研磨はいつも通りでした。でも、顔や態度に出さないだけで、研磨も気にかけてることを真生は知っていました。だって、仲良しの双子ですからね!

それから真生は今日のうちにケーキを焼いておくことに決めていました。明日は月曜日なので、部活のあとに焼いてお家に届けたら、ずいぶんと遅い時間になることが予想できたからです。
前もって てっちゃんのお父さん、お母さんにケーキを焼くことを伝えているので、食卓にケーキが二つ並ぶ、なんて心配もいりません。ケーキが二つあっても嬉しいですが、きっとお腹がいっぱいで食べれなくなっちゃいますからね。
綺麗に焼きあがったケーキは、明日の昼間、真生たちが学校でいない間にお母さんが黒尾家に届けてくれるのです。



次の日、てっちゃんのお誕生日の日になりました。真生はいつものように寝坊助で、研磨も同じく寝坊助でした。
てっちゃんがお迎えに来てくれて、バタバタと慌ただしく学校の準備をはじめました。朝ご飯を食べながら、真生は急に「あーっ!」と大きな声をだしました。

「まおうるさい」
「ごめん!でもまだ言ってなかった!てっちゃん18才おめでとう!」
「あ、ほんとだ。おめでとう」

マイペースにおめでとうを畳みかけるように言う二人に、てっちゃんは少しきょとんとしていましたが、すぐににぃっとして「さんきゅー」とだけ言いました。いくつになってもお誕生日をお祝いしてもらえるのは嬉しいですものね。
お母さんはてっちゃんの前にお弁当のおかずの卵焼きと唐揚げをだしてあげました。



朝練へは真生が二人と手を繋いできたものですから、夜久さんから「ほんと仲良いよね」とそれは微笑ましそうに言われました。

「今日はてっちゃんのお誕生日だからです!」
「あ、そっか。クロおめでとう」
「さんきゅー」
「でもそれじゃあ、真生が誕生日みたい」
「いいんだよこれで」

小さいときから真生を真ん中にして三人で手を繋ぐことが多かったからそれが当たり前になっているのです。
研磨はちょっぴりめんどくさそうな顔をしていますが、真生はにこにこしているので、てっちゃんもまたにやにやと研磨を見ていました。



その日は放課後の練習が終わると、寄り道をせずに真っ直ぐ黒尾家に帰りました。部員たちがてっちゃんのお祝いにどこかに行こうかと誘ってくれましたが、三人はきっぱり断りました。家に帰ればご馳走が待ってますからね。
家に着くと、ご飯の用意はすっかり整っていました。サンマの塩焼きを筆頭にてっちゃんの好きなもののオンパレードです。いっぱい食べて、話して大賑わいでした。
満腹なのが少し落ち着いた頃、てっちゃんママがお茶の用意をはじめました。それに合わせて真生もアップルパイをとりに席を立ちました。戻ってくると、てっちゃんの目の前に嬉しそうに差し出しました。

「じゃじゃーん!アップルパイ!」
「ふはっ!それ研磨の好物じゃねーか!」
「てっちゃんも好きでしょーう?」
「いや、嫌いじゃないんだけどさ」

自信たっぷりに真生が取り出したのはアップルパイでした。笑い混じりにてっちゃんが真生に突っ込むと、自信たっぷりに真生が言うものですから、てっちゃんは照れくさく思うものの、素直にお礼を言いました。研磨は研磨でまだかまだかとそわそわしています。

「じゃあ真生切って」
「まだダメ!歌ってない」
「いいよ別に」
「ダメー!てっちゃんママ!ろうそくー!」
「はいはい、真生ちゃんちょっと待ってね」

てっちゃんはいい加減ハッピーバースデーを歌ってもらうのも恥ずかしいのですけれど、まあ悪くはないかなあと思うのでした。

(20141117)

Happy Birthday!KURO!!


High Five!