窓越しに会話

どこかのクラスが体育をしているらしく、授業中なのに外が賑やかだった。笛の音が聞こえたり、声援のようなものが聞こえたり、どこのクラスも変わらない。
授業を終えて窓際のクロの席に行けば、窓の外を見ていた。ちょうどグランドから校舎に向かって何人もが歩いてきていた。疲れている顔もあれば、楽しそうに話している子もいる。ジャージの色から二年生だとすぐに分かった。

「あ、真生だ」

一緒にいる二人も、明らかに染めているような明るい茶髪の女子だけど、真生の髪色がぶっ飛んで明るいからよく目立った。明るい笑い声からも、すぐに真生だと分かる。

「あいつ、ああしてるとホント派手だよな」
「昔から目立つやつだよ」
「へえ」

そんな話が聞こえていたみたいに(実際は距離があるから聞こえていないと思う。)、不意に顔を上げた真生と目が合った。ひらひらと手を振れば、真生はパッと笑顔を見せてぶんぶんと手を振った。普段のマイペースな所を見ていると猫っぽく見えるのに、こういうところはすごく犬っぽい。

「やくさんだあー!やくさーんっ!!」

真生はよく通る声で名前を呼んで、こっちに向かって走ってきた。体育の後なのにまだ元気なんだなとか、連れに笑われてんぞとか、わざわざ走ってくるのもかわいいなとか思うけど、正直恥ずかしい。そんな心情を知ってか、クロは「良かったなぁ、慕われてて」なんてニヤニヤしている。

「やくさーん!あのねー!一番だったのー!!」

真生は走ってきたそのままの勢いで、息をつくこともなく叫んだ。普段から崩れがちな敬語は完全になくなっている。別に気にするタイプじゃないけど、真生の将来のことを思うと叱ってやるべきかとたまに悩む。

「一番って何だと思う?」
「さあ?一番 点とったとかじゃね?」

遠目に見ても嬉しそうにしているのがよく分かるから、同じように叫び返しといた。「そっか!よかったなー!」と。今度は真生が弾んだ声で「ありがとうございまーす!!」なんて叫び返してきた。また大きく手を振って、友達に囲まれて去って行くのはかわいいと思うけど、やっぱりどこか恥ずかしい。

放課後になって、そんなやりとりを色んな奴らが聞いていたと知って、また少し恥ずかしくなった。クロがまたニヤッとしていたから、遠慮なくボールをぶつけた。あっさりレシーブされたけど気持ちの問題だ。

(20150201)


High Five!