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お世話になったバスの運転手さんにお礼を言ってバスを降りる。その際に何故か爆豪に舌打ちをかまされ、訳も分からずイラつかされた後、相澤先生の後に続いてドーム型の建物の中に入った。施設の中はかなり広い。入口には宇宙飛行士のような格好をした人物が待っていた。

「水難事故、土砂災害、火事……etc。あらゆる事故や災害を想定し、僕が作った演習所です。その名もウソU災害S事故ルームJ!」

「13号」という名のヒーローで、災害救助で活躍しているのだという。どんな“個性”なのかと考えていると、相澤先生が13号のもとへと歩いていった。会話の内容は聞こえなかったが、13号が指を三本出している。ここにいない俊典さんの話だろうか。通勤時のヒーロー活動で時間を使い切ってしまった? それじゃあ人命救助訓練はこの二人だけになるのかな。個人的な思いを言えばとてもありがたい。二人の話が終わったようで、生徒へと向き直る。

「えー始める前にお小言を一つ二つ……三つ……四つ」

ナイトアイと似た切り出しだと思いながら言葉を待つ。
13号の“個性”は「ブラックホール」どんなものでも吸い込んでチリにしてしまうという。可愛らしい見た目と裏腹に恐ろしい“個性”でお驚きつつ、だから宇宙飛行士のコスチュームなのかと納得した。その“個性”で人を救い上げるんですよねという出久の言葉に、13号は「簡単に人を殺せる“個性”」だと返した。
私達の中にも、そういう“個性”がいるだろうと。

「超人社会は“個性”の使用を資格制にし、厳しく規制することで一見成り立っているようには見えます。しかし一歩間違えれば容易に人を殺せる“いきすぎた個性”を個々が持っていることを忘れないで下さい」

個性把握テストで自分の力が秘めている可能性を知り、対人戦闘で、それを人に向ける危うさを体験しただろう。この授業では人命のために“個性”をどう活用できるかを学んでいこう、と13号は言った。

「君たちの力は人を傷つける為にあるのではない。救ける為にあるのだと心得て帰って下さいな」

この学校に入って、始めてまともな先生に出会えた気がする。みんなと同じように拍手をして13号を見る。災害救助なら私の“個性”、サイコキネシスが役に立つだろう。瓦礫を退かしたり救助対象を浮かせて運び出したり。

―――けど、室内だからな……。

顎をあげて上を見てみると、ドームの天井が見える。外の光が透けていて施設内は明るいが、太陽光が直接当たらない以上、別のところからエネルギーを吸収しないと“個性”が使えない。昨日の訓練の時のような窓もない。木はあるけどそれぞれの救助ゾーンからは離れてる。今回も最低限“個性”は使わない方向で―――

「一かたまりになって動くな!!」

相澤先生の叫びを聞いて体が強ばる。体に染み付いた癖で、自然と右手が太腿のホルスターに入っていたナイフに伸びる。

「13号!! 生徒を守れ!」

首にかけていたゴーグルをあげた相澤先生が続けて叫ぶ。先生が見ている方向へ視線を向けると、黒いもやが施設中央に広がり、そこから次々と武装している人達が出てきた。

「動くなあれは、敵だ!!!」

10、20……。次々と広場に敵の姿が見えてくる。あれは転送“個性”か。ただでさえ希少な“個性”だっていうのに。よりにもよって敵側に。

侵入者用センサーには反応せず、そして校舎から離れた施設に、少数が入る時間を知っていたこと。事前によく調べて準備をしてきているのだろう。ポケットからスマホを取り出し電波を確認する。

「圏外か」

外部への連絡は不可能。入口付近に集まっているときに出てきたってことは、全員の位置は把握していなかったのだろうか、それとも外に待ち伏せされてる? “個性”を発動させて入口の方へと視線を向けた。

「実操、外に生体反応は?」
「―――今確認したけど誰もいない、施設内だけ」

相澤先生に聞かれて答えると、先生は13号や上鳴に指示を出した。学校への連絡、“個性”を使った連絡。ちょっと待って、と口を挟むと、相澤先生の顔がこちらに向く。

「電波妨害を受けてる。電話も無線も使えないよ。外に出て、妨害を受けない場所まで行かないと応援は呼べない」

相澤先生は少し考えてから「実操は制御室へ行け」と言った。

「制御室?」
「施設の反対側にある制御室に、警報システムを手動で作動させるシステムがある。それと地下にはケーブルがあって、施設と校舎の中心にある電子掲示板に繋がってる」
「……掲示板に襲撃のことを書き込めば、見た人が通報してくれる」
「あの道なら誰か気付く」
「先生が“個性”で電波妨害してる奴を見れば警報システムが作動していることも学校側に伝わる。―――分かった」

私の言葉に13号が咎めるように相澤先生の名前を呼んだ。

「時間が無い。やれるな」
「絶対に成功させる」

相澤先生が敵の集団に向かって階段から飛び降りる。それと同時に私も駆け出す。

「卯依ちゃん!」

出久が名前を呼んできたので、手を軽くあげて応えてから、階段の脇を飛び降りる。先生が気を引いてくれている間に、木が植えられた場所を通って反対側へと向かう。制御室に行ってコンピューターを“個性”で操作すればパスコードも必要ない。後ろから追ってくる気配は無い。急いで知らせないと、私は焦りを抱えてひたすらに走った。