すれ違い
「ねえ僕さ、土曜日の夜時間出来たからどっか行かない?」
「どっか、」
「うん。どこがいい?なまえが行きたいとこ」
「…行きたい、とこ」
「うん」
「…特に、ない、かな……あ、いつものホテルとか、」
「えー、せっかくデートするんだからもっと違うとこにしよーよ」
きょとん、としたなまえさんにサトルクンもきょとん
「デート、」
「うん、デート」
「…」
「…どした?」
「んーん…」
考えとくね、となまえさんが腰を上げる
「えっ、帰るの?」
「うん」
「朝までいなよ」
「あー…明日の準備忘れてたから。今日は帰るよ」
「待ってじゃあ送るから」
「いいよ、大丈夫」
「大丈夫じゃないよ、こんな時間に」
「さとるは、」
「ん?」
誰にでもやさしい?
誰にでも「デート」なんて言うの?
ねえ勘違いするからやめてよ
セフレでいいからまだもう少し一緒にいたいのに、面倒くさいやつになりたくない
好きだって気付かないで
もうちょっと、もうちょっとだけ
思っていることがなにも口に出せなくてただ黙ってしまう
「なまえ?」
「…ごめんなさい、」
しょんぼりしたなまえさんをおろおろしながらそっと抱きしめるサトルクン、自分はしゅきしゅきだいしゅき♡で付き合ってるつもりだけどなまえさんにはひとつも伝えてない
一回ヤったり、ちょっと出掛けただけで彼女ヅラされんのめんどい、ってサトルクンがぽろっとこぼした言葉がずっと棘として残ってるなまえさん
きっと自分はコイビトでも友人でもなくて都合の良い存在なんだろうなってずっとかなしい
でもそれでも近くに居たいと思って抜け出せないからだめだよなって自己嫌悪
ちょーっとだけ変な雰囲気になって別れたまま迎えた約束の土曜日、なまえさんは予定がズレて生理二日目
生理なら今日はナシって言われたらちょっと寂しいなって思ってるとサトルクン登場
「やっほー」
「さとる、」
「終わった?」
「うん」
「じゃあ行こ。お店予約してある」
「あの、」
「ん?」
なまえさんが唇を噛む
「どした?」
「…きょ、今日生理、で、」
「あ、そーなの?」
「ごめん、」
「なんで?謝ることないじゃん。あ、もしかして具合悪い?」
「そうじゃ、ないんだけど、」
「うん」
「……あの、」
俯くなまえさんをサトルクンが覗き込む
「具合よくないなら行くのやめる?」
「…行っていいの?」
「えっ」
「あ、くちとか、手なら出来るから、」
「えっ、待って待って………え?」
「えっ」
「いやそんな身体だけみたいに……」
「……違うの?セフレじゃないの?」
「えっセフレじゃないですが…」
「…」
「セフレだと思ってた?」
「うん、」
「……場所、移動しない?」
一旦サトルクンの部屋に来た二人、ソファで微妙な距離感で座ってる
「…僕は付き合ってると思ってた」
「…そ、っか、」
「うん…」
「…」
「…なんでセフレだと思ってたか、訊いてもいい?」
「……付き合うとか付き合ってるって、話したことないし、」
「はい…」
「…」
「…なまえがよければ、遠慮しないて全部言ってほしいです…」
なまえさんが、ぎゅっと目を閉じて顔を伏せた
「……すきって、言われたことない、から…」
「えっ、」
「ごめん、重くて…だからやることやって終われれば、それでいいんだろうなって…」
「…」
「一回ヤっただけとか、ちょっと出掛けただけで彼女ヅラされるのもウザイって言ってたし…」
「…あの、まずごめんなさい…僕がクズで言葉足らずなばっかりになまえを悩ませてしまいましたすみません…」
「…」
「一緒にいてくれるから、なまえも僕がすきで、僕がすきなのも伝わってると思ってました…」
「あと『すき』って、いっぱい言ってると思ってた…」
「…」
「ごめんなさい…」
「…さとるがしおしおしてるとなんかかわいいね」
「ちょっと」
「ふふ、ごめん」
「もー…」
空気が少し和らいだ
サトルクンが腕を広げて、いい?と控えめにお伺いする
おずおずとなまえさんが抱きつくと、ぎゅーっと抱きしめるサトルクン
「ごめんね、不安にさせて。ちゃんとすきだよ」
「うん、」
「僕と付き合って」
「うん、」
私もすき、と言うなまえさんの声に嬉しさが溢れて止まらなくなっちゃうサトルクン、ずーっと大事にしようって思った
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