【第七章】―カフェテラスに午後三時―




 「どう?変じゃないよね?ホロじゃない高い服なんだけど!」
「大丈夫よ、可愛い可愛い。可愛すぎて、私が襲っちゃいたいわぁ」
「…三人も悪くないわね」
「いや何の話。私は慎也以外、考えられません」
「えぇ〜ざーんねん。慎也君に興味無くなったら、いつでもこっちに来ていいのよぉ」
「いかない!」

 時間は昼時。弥生は相変わらずと言うべきか…カップうどんの麺をすすり、私はというと、恋人同士である二人に今日のデート服をチェックしてもらっていた。
 
 ―昨日、慎也が佐埜蟻に明日俺と約束があるんだ、と言い放った事は現実になったのだ。

 帰宅途中、本当に明日どこか行くか?と問われ、まぁもちろん私はソッコーオッケーだしたよね。

 「いやーでも、良かったじゃない。なんだかんだで、デートは初めてなんでしょ?」
「そーなの!ギノちゃんに無理矢理誘ってもらって、三人でご飯行ったり、仕事の帰りにご飯行ったりはあるけど…デートは初めて!もう嬉しくて嬉しくてニヤけちゃう。」
「まぁ、貴方が監視官だから実現する話よねぇ、ちょっと羨ましいわ。」

 そんな他愛もない話をしてから、慎也の部屋に向かった。先程話した通り、彼は監視官同行じゃないと外に出る事ができない。…普通のデートのように外で待ち合わせができないのが残念だが、まぁ、そう文句も言うまい。…なんたって慎也とデートできるのだから!

 「ふんふんふーん。し・ん・やーっ迎えにき・た・よー」

 鼻歌交じりで、監視官権限を使用し、彼の部屋に入る。が。…応答がない。いつもなら、何かしら反応があるのに。(勝手には入るな、とか)

 「慎也?って…」

 目の前に見えた光景。それは、…

 「寝てるし。」

 がくり、と肩を落としたのは言うまでも無い。ソファでマキシマの資料片手に寝落ちしていた。服は昨日のままだし、夜中にマキシマについて調べている途中で寝てしまったのだろう。
 最近のどこかギラギラとした慎也はそこにはいなくて、静かに眠っている彼がいた。起こさないように、そぅっと近づく。

 「…まつ毛長くない?意外と肌も綺麗だし…」

 いつもは見られない彼の姿。しかも、こんな間近で。

 「…」

 なんか、…

 「今日はこのままでもいいかなぁ」

 外に出かけようと張り切ってたけど。起こさないで、近くにいられるだけでも幸せかもしれない。
 最近はずっと慎也に想いを伝える事だけに必死だったけど。考えてみれば、こうやって、こんな近くで。…彼の側にいる事ができるだけで、私って本当は幸せなんだよね。

 「…」

 慎也の顔をもっと近くで見たくて、近くに座る。胸が上下に動いてて、生きている事がわかる。
 無意識に、慎也の顔に手を伸ばし、触れる直前。

 「ん…」
「…起きた?」
「……」
「おはよー」
「………なんだ…お前か…」
「もう朝だよぉ」
「………昨日いつの間にか寝落ちしたのか…」

 ソファなんかで寝てるものだから、きっと身体が痛いのだろう。起き上がる動作が重い。

 「シャワー浴びてからでいいか?出かけるの…悪いな」
「ん、いいよ。出かけなくても」
「?」
「私ね、慎也の近くにいられるだけで幸せなの。」
「…」
「慎也が外に出たいなら、ついて行くけど。マキシマについてわかった事とか、そういう事教えてくれるだけでもいいよ」
「…お前は信じてるのか」
「?何を?」
「……ギノはマキシマの存在を否定している。」

 ああ…その事か。

 「私は慎也のいう事なら、基本的には何でも信じたいと思ってるからね」
「…」
「…慎也?」
「…すまない。」
「ん?何が?」
「…お前の愛する佐々山を…」
「…」

 ん?

 「…えと」
「…」
「?愛する佐々山とは…?」

 一体何の話だ。

 「…隠さなくていい。お前は佐々山の事が好きだったんだろ?」

 は。い?
 待って。佐々山って、あの佐々山だよね?いや確かに、嫌いとかでは無かったし、好きといえば好きだよ。もちろん今でも。いやでも、なんか慎也が言ってるのって…

 「恋愛感情ってこと?」
「…他に何がある」
「…私、佐々山が好きだなんて言ったっけ?」
「…言われなくても、見てたらわかる。」

 え、待って。なにこれどうすればいいの?慎也勘違いしてるよね?私が佐々山の事、好きだったってなってるよね?

 「慎也、落ち着いて聞いてね」
「落ち着くのはお前だ。何動揺してるんだ」
「私…佐々山と、そういう仲になった事は一度もないし、確かに人としては大好きだったけど、恋愛とか、そういう感情は一切持ってないよ…」
「…は?」
「逆に何でそんな事になってるの…」
「…いつも、一緒にいたじゃないか」
「え?」

 いつも?一緒に??…いや、別にそんな事は無かったと思うんだけど。まぁ確かに、慎也に話しかける時は恥ずかしくて、よく佐々山を誘って…って。

 「原因はそれか!」
「?」
「いやごめん。こっちの話。でも、それ慎也の勘違いだから。私いつも言ってるじゃん。慎也が好きだって。ずーっと前から。」
「…」
「もしかして、それも嘘だと思ってたの?」
「…佐々山が死んで、俺に罪悪感を感じさせないために言ってるものだと…」
「なんっじゃそりゃ!」

 じゃあ今まで言ってきた愛の告白は、全部そんな風に感じてたってこと?…

 「…悪い」
「信じられない!酷いよ慎也!」

 なんだかんだで毎回、勇気出して言ってたのに!私の気持ち返してよ!
 罰が悪いのか、慎也は下を向いている。

 「…本気なのか?」
「何が?!」
「…それは、その」
「何?!」

 なんかむかついてきたわ!

 「…俺への気持ちだ。」

 この期に及んで!!


 「好きだよ!大好きだってば!ずっと前から!!!!」



 
  カフェテラスに三時
(佐々山じゃなく、慎也の事がね!)



20160513

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