※キルア19歳設定

01:さあ、本能のまま狂気に服従


私は一体いくらの値がつきますか?
++++

「なまえっ」
「あら今日はキルアが護衛なんだ」

息苦しいゾルディック家からやっと出てきて、今日の護衛担当らしいキルアと車に乗る。本当にあそこは一般人の私にとっては地獄でしかない。よく生きてられるなあって純粋に思う。いくら私が、“5000兆ジェニー”の価値があるからと言って、ほぼ監禁状態。まあ確かに戦闘能力ゼロだから、誰かに襲われたら一瞬で死ぬけども。だからって過保護すぎでしょ。

「…この前の返事、考えてくれたか?」
「(こういう急かすところまだ若いんだよねえ)…んーん、まだ」
「…イルミには負けねぇから!俺。」
「ほお、頑張って」

キルアはゾルディック家の中で1、2を争うくらい私に対して過保護である。…理由は簡単。

「俺がなまえを幸せにしてやる!」
「ありがとーキルア。ほんと可愛いね。律儀に告白なんかしてくるところが良いよね」
「ハァ?!当たり前だろっ」

私に惚れているからだ。

おおっと、何の説明もしてなくて、よくわかんない状態だよね。説明しましょう。…箇条書きで。

・私は21世紀の人間でHxHが好きでした
・まさかのトリップ
・異世界からきたということでオークションに出品された
・ジンに落札されたが、本人は手元に置いておくことを拒否。
・ジン→ゴン→キルアに流れ着いた
・ゴンからの依頼という形でゾルディック家に保護されている。

…というわけ。こっちにきたばっかりは、言葉は通じても文字が読めなくて本当に大変だった。どうにかして誰かに助けてもらいたくて、イチカバチかの賭け(オークションに出品される)に出て、今に至る。…まぁゾルディック家にいる以上、死ぬかもしれない可能性は変わってないけど…………まぁでも向こうは仕事だと割り切ってるから、下手な事はしてこない。毒入りの食事も食べさせられないしね。そして嬉しいことに、謎にキルアに好かれて、告白されて返事を濁してる状態。先程の会話は、そういうことである。キルアは本当にカッコイイし、一番人間味あるし、2つ返事でOKしたいけど、年齢的にちょっとなあっていうのと、あそこで生活してる以上、キルアと付き合うなんてことなったら殺されそう。…死にたくはない。

「今日はイルミもいねーし、なまえの行きたいところ行こーぜ。ひさびさだろ?外出許可おりたの。」
「うん。わたし本屋行きたい。」
「?そんな身近なところでいいのかよ」
「次いつ出れるかわかんないし、家で暇つぶしできる本を大量購入する。通販だとアタリハズレ大きいし、本当は中味ちらっと見て買いたいんだよね」
「ま、それは懸命だな。」

「なまえ様、キルア様、あと数分で町に到着いたします。」
「おー」
「はぁい。」

そうだ、今日はイルミが護衛じゃない。思う存分、町を楽しもう!

車内から見える青空が私の心を現していた。

+++



昼時だからだろう、私とキルア以外にもたくさん人がいる。鼻腔を刺激するピザの香りが胃を元気にさせる。

「どんだけ本買ったんだよ」

炭酸を口にして料理が運ばれてくるのを待つ。

「わかんない。でも私一人じゃ持てない」
「…まぁっ俺は余裕だけどなっ」
「さすが〜。キルアってほんと頼りになるっ」
「……」

やはり反応が年齢と比例してて、カワイイ。女の子に対する免疫もないのだろう。すぐ顔を赤くして、目線をそらす。イルミにはこんな事言っても無反応だし。

お待たせしました、と言ってピザの香りと共にやってきたウェイター。視界も刺激する独特な赤と黄色のコントラストが口腔内に与える刺激を想像させた。

「次はどこ行く?」
「イルミが護衛の時は行けないところがいいなあ」
「アイツ…どんだけなまえのこと縛ってるんだよ」
「まず男が多いところは行けないよね。ゲームセンターもダメだし、レストランも絶対個室。しかも信用できるお店しか連れてってくれないから、こんな雰囲気のとこはアウト。だから今日はキルアが護衛で嬉しい」
「…べ、別に予定さえなければいつでも俺が連れてってやるよっ」
「頼りにしてるね」

町に出るのも一苦労だった。異世界からきた女ということで闇のオークションに出品されて…、物好きはたくさんいた。だからあんなに放大な金額がついたのだが。

「でも良かったよな。落札したのがジンで」
「ほんとそこだけが救いだよ。どこぞの変態に落札されてたら私の人生終了してた。」
「間違いないな。」
「まぁそれでもあんまり自由は無いけど…でもまぁ、悪くないよ。今の環境。ゾルディック家、個性強すぎだけど、みんな優しいし。あーピザ美味しい」

熱々のそれを平らげ、乾いた口に水を運ぶ。全部飲み切ってウェイターにおかわりを頼もうと、振り向いた瞬間、女性の断末魔が店内に響いた。

え、なにごと?

「チッ、なまえはジッとしてろよ」
「え?キルア?」

状況が全くも見込めない。ただ私の視界に描かれているのは数十人の武装集団が店内に入ってきたことだけ。

「お前ら騒ぐなァ!大人しくしてろ!!!!!俺らはここにいる5000兆ジェニーの女を盗りにきただけだ!」

おっと私か……まじか。

「大人しく来てもらおうかァ?ああん?」
「なに言ってんだよオッサン。」
「なんだクソガキ…ジンが雇ったボディーガードか?」

私の前にキルアがたつ。やっば…守ってもらえるなんてなんてきゅんきゅんするシーンなの。

「俺からなまえを連れ去るだって?笑わせんなよ。」
「アァん?!クソガキが!」
「なまえから離れたらダメになるのは…俺の方だから。離さない」

え…!!

「クソ生意気なァああ…あ……………」

大きな叫び声をあげ、キルアに猛突進する、と思った瞬間。向こうは勝手に膝から崩れ落ちた。

「ほらね。キルじゃダメなんだ。なめられるんだよ」
「―イルミ…!」

泡をふいて倒れている強盗集団の上を平然と歩いて、こちらに近づく。いつの間にか全員倒れていた。
あれ?今日イルミ仕事じゃないの…なんでここに…

「あんな雑魚!俺でも余裕で殺れた!」
「こんな大騒ぎになってる時点でアウトでしょ。なまえ。今度から護衛は俺固定だよ」
「え?!」
「わかったね?」

有無を言わさぬ大きな真っ黒の瞳。
急に現れて何を言ってるんだ。

「で、でもイルミ仕事で忙しいじゃん…!」
「そうだよ。」
「(そうだよ?!)なかなか外出できないのに、更に機会が…」
「?それでいいんでしょ。わざわざ危険な場所にいくなまえの方が意味わからないし。あまりにも酷いようなら、俺以外の男と話すのも禁止にするよ」

相変わらず正論をぶつけてくるが、そういう問題じゃない…!むちゃくちゃすぎる!

「でも!」
「キル」
「…なんだよ…」
「キルはゾルディック家の大事な後継ぎの自覚そろそろ持ってほしいな。それに、後継ぎなんだから政略結婚が当たり前でしょ。なまえにちょっかい出すの辞めて」
「ハァ?!それはこっちのセリフだよ!イルミの方こそなまえにちょっかいだすの辞めろよ!」
「おいでなまえ。帰るよ」
「オイ無視すんな!」
「…はい。キルアも帰ろ…」

キルアに好かれるのは百歩譲っていいとして。
イルミに好かれてる理由は未だに…わかりません。
―まぁいいんだけど。


「(どっちも選ぶ気ないし)」


ずるい女なのです。
―二兎欲しいんだよ私はね。


結局、数時間の外出は本を買ってピザ食べて終了した。

20160513


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