それは断罪
何か、怒らせるような事をしたか?何か変わった様子はあったか?…わからない、考えても、考えても…答えは出てこない。
「…イライラするのは勝手ですが、それを周りに当たり散らすのは辞めてください。」
「…」
非番の征陸以外の顔ぶれが一係で揃う中、ただ一人、狡噛慎也は苛立ちを隠すことが出来なかった。ヤケクソのように吸う煙草の数だけが、異常に増えていく。
「でーもよぉ、確かに、忽然と姿を消しちゃってから…今日で、一年は経とうとしてるからねェ〜」
「だからって、周りに当たり散らすのは良くないぞ…狡噛。」
「わかってる…ギノ。」
「?」
狡噛の怒りも、理解はできるが、それに同調していたら身が持たなくなる事を理解している一係の者達は、その怒りの矛先が自分に向かわぬように祈るばかりだった。…ただ一人、状況を飲み込めていない常守朱を覗いては。
「でも、な〜んで、急に消えちゃったんだろうね?職務放棄?そんなに監視官、嫌だったのかねぇ。」
「…職務放棄するような奴だとは思っていなかったけどな。」
「……そんなんじゃないっ!…なまえは…」
「狡噛さんが、いくらなまえを庇っても、どうにもならないですよ。実際どれだけ探しても彼女は見つからず、捜査は打ち切りになりましたし…誰かに誘拐されたとしても、何も要求が無いのは不自然です。殺されたとしては…いい加減、遺体は見つかっているはずでしょう?」
「…」
「自分でココから出ていった、と考えるのが一番自然だな。」
「……」
吸っていたタバコを、握りつぶす。掌から、パラパラと灰が落ち、それは狡噛のスーツに落ちていった。払うこともせず、新しい煙草を出し、また、吸い始める。
「あのォ」
「どうした、常守監視官。」
「話を折るようで申し訳ないんですけど…、誰の話をしているんですか?」
「ああ…常守ちゃんは最近入ってきたから知らねェんだな」
「?」
「狡ちゃんの彼女のこと」
「?!狡噛さん、彼女いるんですか?!」
「…」
「ま、一年前に失踪しちゃったけどね〜」
「失踪って…」
「ウチは常に人手不足だが、アイツ…なまえがいなくなったせいで、余計に人手不足になった。その穴を埋める為に、人事に要請して、来たのが…常守朱監視官…君だよ。」
「え…じゃあ、その狡噛さんの彼女って…」
「監視官だ。一係のな。」
「えええ?!…監視官が失踪って…前代未聞ですよ…知りませんでした……」
「そんな大っぴらにする事では無いからな。」
「捜査は?」
「もちろん、したさ。狡噛が中心になって、な」
「…」
「でも…彼女は見つからなかった。突然、姿を消したんだ。前日まで、ここに来ていたし、狡噛と一緒にいた。」
「…」
「アイツは」
「…」
「俺が絶対見つけ出して、連れて帰る。…別れた覚えは、ない。」
世界とのつながりが何処にあるのか時々わからなくなる事がある
―だから早く…見つけなければ。俺はきっと、この世で泡になって酸素になってしまうから。
『馬鹿だな…君は。もう、君の元に彼女は帰る気が無いというのに。』
20150212
「どうしたの、常守監視官。」
「六合塚さん…いや、その監視官さん、狡噛さんに愛されていたんだなぁって。」
「…周りから見ても一目瞭然だったわ」
「なんだか、羨ましいです。」
「…どうして?」
「いや、私、同じ監視官で、狡噛さんの上司のはずなのに…何もわかってなくて。きっと、その監視官さんは、狡噛さんにも信用されてたんだろうなって」
「…貴方、狡噛さんのこと好きなの?」
「え?いやいや!そ、そうのではなくて!」
「…」
「…狡噛さんだけじゃなくて、皆から信用されて、頼りにされてたことが…さっきの話で、なんとなくわかっちゃって。同じ同性だから、比べちゃったのかもしれないです。」
「まだ配属されて数日よ。…彼女とは、経験が違うわ」
「そう、なんですけど…。…なんだか、不思議な人ですね。会ったこともない私が…凄く影響されちゃってます。」
「そうね…でも、」
「?」
「彼女がもし、犯罪者になってたら…きっと、私達…特に狡噛さんは彼女を撃てない。…その時は」
「…はい」
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