「なまえ」
「なぁに、慎也?」
「いや…、」
「変な慎也。」
日が、窓から侵入する。カーテンの隙間から巧妙に。
槙島の死後、狡噛は逃亡という形で二人の戦いは終えた。私は、そのまま慎也について行ったので、一緒に公安局から追われる身になってしまったけど、まぁ私は元々追われていたし、後悔はしていない。
「聞きたいことがある。」
「ん」
「…お前は公安局に、復帰しようと思えば、できたはずだ。槙島と繋がっていたことは…証拠は無かったし、もみ消そうと思えば、もみ消せた。」
「そうね」
「じゃあなんで俺と」
「…慎也が、私を必要としてるから…かな?」
彼に向かって微笑んだ時に、光が少し憂いしくて、カーテンを閉じようと手を伸ばす。後ろから大きな掌が伸びきて、背中に気配を感じたので、後ろを振り返った。そのまま、見上げると、
「…慎也?」
何か言いたげなのに、抑えている表情の彼。
「なまえ…」
「どうしたの?…ん、」
眉間に皺が寄っていたので、眉間に手を伸ばすと、その手は掴まれ、カーテンに縫い付けられた。そのまま顔が近づいてきたので、抵抗することなく受け入れる。もう片方の手も、窓に縫い付けられ、慎也という牢屋に閉じ込められた。
「んぅ…」
「はぁ、」
「どうしたの?…なんか変だよ、慎也」
「…なんでもない。」
「…」
「なぁ…」
「ん?」
「もう…俺から離れないでくれ。俺の近くにいない間、ずっと槙島といたと思うと…気が狂いそうだ。」
「はは…でも、もうその槙島はいないよ?」
「わかってる…でも」
「大丈夫…近くにいるでしょう?だから、こうやって追われてる身の慎也と、一緒に来たんじゃん…」
「…ああ、そうだな」
ぎゅう、と強く抱きしめられ、言葉にはしないものの、彼から大きな不安が伝わってきた。わかっている…慎也をこうしたのは、私。何も言わずに、慎也を捨てて、聖護を選んだ…私のせい。少しでも、不安がなくなるように、背中を撫でる。
「愛してるんだ…」
「うん…」
聖護、私、今、貴方の敵(かたき)と居るよ。
さよなら、また来世で
無知は大きな可能性の枠を与える。─ジョージ・エリオット
「じゃあ、ちょっと出かけてくるね。」
「悪いな…俺の犯罪係数じゃ、迂闊に外も出られなくて…」
「しょうがないよ。私が我儘言って、ハイパーオーツ嫌がってるだけだから。ちゃんと野菜とか買ってきて、手料理作るね」
「…待ってる」
ふ、と少しだけ笑顔を見せた彼。それを確認してから、いってきます、と言葉にして街へ出た。
―思いやりは友をつくるが、真実を言うことは敵をつくる。
20150212
「ただいま」
「おかえり」
「ちゃんと良い子にしてた?」
「もちろんだよ。さすがに…今、公安に見つかったら面倒だからね。暫くは大人しくしておくつもりだよ。」
「そう…」
「それは?」
「ん?野菜。」
「僕に手料理でも振る舞ってくれるのかい?」
「いいや、慎也に、よ。」
「妬けてしまうね…仕方がないとはいえ、お姫様を、狼の元へ帰らせないといけないのは。」
「とりあえず傷が塞がるまでは…」
「わかってるよ。僕は…なまえのおかげで、生きているのだから、ね」
「また、私に凶器を与えてくれるのでしょう?」
「もちろんだよ…僕の可愛いプリンセス」
世の中には鮮やかな色がたくさんあるのに、なんでも白黒で決めるのは恥ずかしいことだ。─デニス・リトル
END...
▽後書き
あっという間に始まって、あっという間に終わりました。何で槙島落ちにしたのかと言うと…、勝手な個人的感覚かもしれませんが、槙島vs狡噛のお話って、圧倒的に狡噛落ちが多い気がする…!なぜ!という悶え。その悶えから、このお話を書き始めました。大変だったのは、偉人の名言やら本やらをたくさん調べないといけない、ということ…。私、全く詳しくないので、詳しい人からすると、ん?という部分があると思いますが、そこは、流してください…。少しでも、槙島っぽく…!(笑)
槙島が主人公の事を、場面によってお姫様とプリンセスの言い方を変えているのは少し意味があります。狡噛も同じようにプリンセスと言わせたのは、少しでも槙島と狡噛が似ている点がある、というのを見せたくて、同じようにプリンセスと呼ばせました。
執筆日を見るとわかると思いますが、先に最終回を執筆しました。連載初めに、絶対槙島は生きている設定で終わらせようと決めていたのですが、それ以外はぼんやりとしか決めていなくて…狡噛どうしようかなぁ、と悩んでいました。入浴している時に考えてたのですが、ゲスい女の子が大好きな私は(笑)、両方とくっつけるか!…と。そう決めた瞬間、居ても立っても居られなくなり、先に執筆しました。番外編書こうかなぁなんて思ってます。読破ありがとうございました!良ければ拍手から感想お待ちしております。では、これからも卑弥呼。を、よろしくお願いします。
20150210〜20150213
参考サイト
ttp://www1.ocn.ne.jp/~iyasiro/kikou/meigen.htm
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