▽舞台は現代
▽逆トリ風?
ワクワクドキドキ。給料と貯金のほとんどを、これに注ぎ込んだのだ。期待通りの物じゃなかったら、メーカーに抗議の電話を入れるつもりである。ワンルームのアパート。この大きな荷物のせいで、足の踏み場も無くなってしまった。
アンドロイド制作キット、とでかでかと書かれた、その商品に目を輝かせ、取扱説明書を手に取る。裏ルートで手に入れたこの商品。世間では、なかなか手に入らないが、大金と愛と辛抱強さで何とか買えた。もちろん誰を作るかなんて決めている。
「えーと?まずは、肌の色…兵長は、白肌だから、砂糖を入れて…」
―――リヴァイ兵士長
私の愛してやまない兵長を作ることを夢見て、約1年待ってこの商品が自宅に届いた。作っている会社も、よくわかんないし、誰にも口外しない、ネットにも情報を漏らさない事を約束し、購入が許可された。自分のお好みのキャラクターや人物を制作し、自分の良いように使う事ができるのだ。所謂、アンドロイドというやつだ。もちろん、私は兵長を作って、私の旦那にするつもり。いや正式に結婚とかは、ね…無理だけど。いいんです。別に。籍とかいれなくても。兵長の側にいれるなら!
そんな思いで説明書と睨めっこし早五時間後。
「後は一日待つだけだ…!」
兵長は今人気があるキャラクターなので、材料名が説明書に書かれていた。…助かった。これ、マイナーキャラとかだったら一週間はかかってた。下準備に。
下準備が終わり、一日放置したら完成するらしい。この大きな商品のせいで、寝るスペースなんて全く無いが…仕方ない。今日はトイレで寝るしかない。めっちゃ嫌だけど…仕方ない。一日我慢したら、兵長ができるんだから!それくらい我慢できるもん。
枕と掛布団を手に取り、トイレへ移動する。明日は絶対枕と掛布団、洗濯しよう、と心に誓って。
+++++
「おい、なまえ、起きろ。」
「ん…?」
「いつまで寝てる気だ?」
「リヴァイ…」
「いつまで俺に起こされるつもりだ?八年前から全く変わってないじゃねェか」
乱暴な言葉から、私の朝は始まる。昔みたいに目覚ましで起きる事は、もう無かった。
なぜか?それは…
「お前、最初、トイレで寝てただろ」
「だからさぁ、それは」
「昔の家は狭かったからな。」
「だから、引っ越したじゃん。二人じゃ狭いからって」
「部屋が広くなった分、掃除のし甲斐が……こんな無駄話してる場合か?遅刻するぞ」
「え?…やばい!今日、友達と待ち合わせって言ったじゃん!」
「早く行け」
リヴァイが私の側にいることが当たり前になって、もう八年。
最初は、あまりの潔癖具合にイライラした日を過ごすこともあったけど、さすがに慣れて最近では幸せな毎日を過ごしていた。
よくできた商品というべきか。八年たった今でも、リヴァイは普通に話してるし、動いている。購入当初は、アンドロイドなのにご飯食べたりすることに驚いたけど。…今でも思う。本当に人間みたいだなぁって。誰に紹介しても、彼がアンドロイドだと疑われた事は一度も無かった。
「じゃあ、いってくるね!夕方には帰ってくる」
「ああ」
「あ、掃除してまた勝手に色々な物、捨てちゃだめだよ?!」
「うるせェな、早く行け」
「うん、いってきますのちゅーは?」
「…」
渋々と言うべきか。唇が触れるだけのキスをプレゼントしてくれた彼は、早く行けと言わんばかりに背を押した。なんだかんだ玄関まで見送ってくれる優しさが、もどかしい。
「じゃあいってきます」
「…気を付けてな」
「はぁい」
ガシャン、と扉が閉まる無機質な音が部屋に響いた。部屋に残されたリヴァイは、ふぅ、とため息をついて掃除道具を押入れから取り出した。
八年物のアンドロイド
彼女は知らなかった。説明書に以下の記載がされていた事など。
――使用期限は三年間です。三年を過ぎると自動的に動かなくなるのでご注意くださいませ。
拍手 20150209〜
「八年たっても、気付かねぇとはな………人形がヤれるわけねェだろ」
ALICE+