―今度、ご飯でも行こうよ。
―モテるでしょう?
―え、彼氏いないの?

馬鹿みたいだと思った。携帯の画面に羅列される文字。男は単純である。少しばかり気があるふりをして、優しくて可愛い子を演じればコロッと騙されてしまう。色々な人から声をかけられて良い気分になる時期はとうの昔に過ぎた。本当に好きな人からの好意じゃなきゃ、意味が無いのに。

「はぁ」
「またため息か。」
「ごめんなさい。」

仕事中なのにまたため息が出てしまった。CCGで無意識にハイセを探してしまっている自分に。…諦めようと思ったのにな。

「そんなお前に仕事を与えよう」
「もう…なんですか?アキラさん。」
「シャトーに行って来い」
「え?!」

シャトーって、え?

「そんなに会いたいなら会いに行けばいいだろう。」

相変わらず無茶苦茶な論理を押し付けてくるアキラさん。

「アキラさん、私、振られてるんですよ?しつこいって思われたくないです!」
「仕事なら仕方ないだろ。ちゃんとシャトーに届けてほしい書類もある。」
「!……行きます。」
「素直でよろしい。」

アキラさんに簡単に振り回されてる気もしたが、素直になると、やはりハイセに会いたいと思っているのは間違いなかった。振られてたら一回も喋ってないけど…でも、このままずるずる避けてたら疎遠になる気がする。それは避けたい。

「…今から行ってきていいぞ」
「アキラさん天使!」
「馬鹿言ってないで早く行け」
「はいっ」

行く前にトイレで化粧と身なりをチェックして。グロスはつやつやのお気に入りのものを塗る。笑顔の練習もして。

…さぁ出陣!





+++





と、意気込んだのは良いものの。

シャトーの前でどうしようか、と悩んでいた。押し鈴を鳴らせば一発なのに、鳴らす勇気がまだない。どうしよう。ていうかハイセいるのかな?調査で出かけてるんじゃ。じゃあまだこの書類渡したくないし。確実にいる夜を狙った方がいいかな?いやでもそれは遅すぎて迷惑かな?ていうか夜だったらメンバーみんないるのか。できれば二人きりがいいな。いやでも二人きりになって何話そう。振られたんだから、さっさと出ていけって話か。てか私がここにいる時点できもいよね?ああ、もうやっぱりアキラさんから書類貰ってこなきゃ良かった。違う人に頼めばよかったかな。いやでも違う人でもカワイイ子に頼むとかだったら嫌だな。あー!もう!



「なまえさん?何してんスか。」
「!」

びくり、と肩を鳴らす。後ろから聞こえた声に、思わず振り返ってしまった。

「し、不知くん…」
「サッサンに用事ですか?」

まさかの不知くん。…ハイセじゃなかった。

「い、いや、あのね…」
「?サッサンなら多分家にいるっスよ」

いるのかーい!さっさと押し鈴ならせば良かった!

「とりあえず入ります?」

………!

…


「お邪魔します。」
「うぃース」

…ハイセに書類渡すだけ渡すだけ。…うん。

不知くんに玄関を開けてもらい、家に上がらせてもらった。…あいからわず、広いお家だなぁ。



「おかえー…なまえちゃん?!」
「お、お邪魔してます…」

リビングから良い匂いがするなぁ、と思っていたらハイセが料理を作っているところだった。

「シャトーの前にいたから、とりあえずあげたぜ」
「え?そうなの?僕ずっといたのに!」
「いやー…あはは…」
「どうしたの?なにかあった?とりあえずご飯できるまで不知くんとテレビでも見ててよ!」
「え、あ、うん…」

既にソファに座っている不知くんの隣に座る。あ、身体あたっちゃった。まぁいいか。

「…!」

ぼう、とテレビを見る。どうでもいいバラエティ番組だった。じゅうじゅう、と肉が焼ける匂いと美味しそうなスープの匂い。

「あ、あ、あの」
「ん?」

不知くんが変な声をあげたので、振り向くと顔が真っ赤だった。え、なに?

「ちちち近いっス…」
「あ、ごめん」

自然に謝る。…不知くん、女の子の免疫ないのかな?
なんだかなあ。ハイセは全然変わんないし。いや、無視されたらショックだったけど。

「あの」
「ん?」
「モテますよね?」
「え」
「なまえさん。」

なんとも答えにくい質問を投げて来た不知くん。ハイセはキッチンに立ってるから聞こえないかもしれないけど。

「いや、…そんなことないよ」
「そうなんスか?」
「うん」
「すげー笑顔カワイイな、って思ってました。」
「あ、ありがとう」

笑顔の練習してるからね、鏡の前で。

「…」
「…」

…これはくるな。

「あの」
「ん?」
「良かったら連絡先…」

やっぱりか。

「えっと、」
「なまえちゃん、不知くん、ご飯できたよ」

…!

「不知くん、あ、後にしよっ。ご飯冷めちゃうよ!」
「…そっスね」
「不知くん」
「?」

ハイセが不自然に、不知くんに声をかける。なんだ?

「なまえちゃんは僕が守ってるから、駄目だよ。」


にこり、と笑顔でそう言ったハイセの方がよっぽど笑顔が綺麗だと思った。



君専属の騎士にしてくれるかな?



「どういうことっスか、サッサン」
「なまえちゃんは僕の事が好きだから」
「は?」
「え」

何を言い出すのハイセは!!

「そうだよね?」
「え、や、その、まぁ…」



なんのプレイなのこれは。


20150918

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