▽ヒロイン犯罪係数異常
▽色々注意
―別に私は、狂ったつもりはない。
花は綺麗だなぁ、と今でも思うし、食べ物だって美味しいものの方が好きだ。綺麗な洋服だって着たいし、好きな人と一緒に出掛けて、映画を見て、一緒に笑って過ごしたいとも思う。
どうでもいい些細なことで笑って、日常を楽しむのだ。
きっとそれが、なによりも幸せだから。
―だから。
「ね?慎也。変わってないでしょ?私」
「…本気で言ってるのか?」
「本気も何も…」
彼はドミネーターを私に向け、銃口から笑い声が聞こえた気がした。まだ何もされてないけど。
「お前は…何人殺した?」
「だから、殺したって言い方辞めてよ。作品作っただけなのにぃ。」
「ふざけるな…!確かに昔はお前から芸術の才能はあったが、そんな事で人を殺していいと思ってるのか?!」
「慎也は、マキシマを殺そうとしてるでしょ?私より酷いと思うんだけどなぁ、それ。一応、私の場合は死んだ後も美しく残ってるんだから。」
「…っ」
「それよりもさ、私のさっきの話、聞いてた?好きな人と映画行きたいって話。」
「…」
「慎也、一緒に映画見に行こうよ」
「…俺も今じゃ執行官だ。監視官の同行無しで外は歩けない」
「もぉ、大丈夫だって。私だって普段は買い物行ったりしてるんだよ?監視官辞めた後さ。」
「…」
「ね、慎也。行こうよ。私、慎也と映画見に行きたいの。」
++++
「嬉しいね、嬉しいねっ」
「…」
「今日は忘れてね?執行官の事とか監視官の事とか。」
「…」
「わざわざ町中ハッキングしてもらってるんだから」
「…誰に?」
「んー、内緒。凄腕ハッカーさん」
「男か?」
「…え、なに?嫉妬?」
「…別にそんなんじゃ…」
「可愛いー、慎也」
変わってないね、そういうところ、と続けた彼女の笑顔は、本当に以前と変わらなくて。監視官を突然辞める前に、戻った気がした。
あの時の俺たちは、仕事の休日に外に出かけて、買い物をしたり…執行官達の欲しがるものを買ってはお土産だ、といって渡していた。
―懐かしい記憶
「何みる?今、何の映画やってるんだろーね。やっぱりここは慎也と来てるし恋愛モノ?」
「なまえ…恋愛モノ興味あるのか?」
「別に興味ないわけじゃなかったでしょ?昔から」
「そうだったな」
そして、椅子に座って上映が始める。
隣を見ると、顔を少し赤らめて。
俺の方を見るお前は、とても綺麗で。
「慎也?」
「…」
「どうし、…ん、ふぁ…」
「ん」
「ここ、映画館っ…」
「わかってる…わかってるが」
嫌がる言葉を投げつつ、本心では嫌がっていない。ああ…そうだ、この感覚。この感覚が、幸せに溺れそうな…
―そして、ふと蘇る。
―その時は気にも留めなかったあの言葉。
まだ、俺たちが監視官だった頃。
ゴミ貯めみたいな場所でターゲットを追い詰め、ドミネーターによって裁かれた肉の塊。赤黒い血が調味料みたいだった。
そして、それを見て彼女は言ったのだ。
「これはさぁ」
肉はこの人の味しかしないよ
―なぜそんな事を知ってるんだ。
(それを思い出しても俺はお前が欲しいと思うのは、)
20140429
ALICE+