※悲愛




小さな小さな芽は踏んだら消えていく。大きくて傲慢な人間がいとも簡単に踏み潰す。
その人間でさえ、そこまで成長するのに何回も踏まれていたのに。



夏が終わり、肌寒くなると洗濯物を干すのも億劫になる。冷たい服、冷たい風。窓を少し開けるのでさえ躊躇って..



「…食べないの?」

いつも優しい君は、我儘で自分勝手な私の全てを許す。それが私にとっては、とてもありがたい事なのに素直に表現する事が出来ない。君の視線を独り占めしたい。理由はただ、それだけ。

「…食べて来たから。」
「……そっか。」

鼻孔を刺激する優しい匂い。ああ、お腹すいたな、なんて言葉は絶対に吐かない。
夜も遅く、他のメンバーは寝静まっていた。リビングにいるのは彼だけ。多分私の帰りを待っていたのだろう。…こんな顔をさせたいわけじゃないのに。

「…なまえの好物だよ?今日は休みだったから、朝から…」
「…いらないってば。」
「…。」

ねぇ優しくしないでよ。
期待させないで。
それが君の悪いところだよ。

「ねぇ、なまえ…最近変だよ?何か…」
「変じゃないよ。普通だから。」
「でも」
「…」

背中から聞こえる優しい君の声と、優しい匂い。
私に君の伸ばした手は届かない。


待っててくれてありがとう、って言いたいけど。



足早に自室に戻って鍵を閉めた。階段を上って、君は追いかけてこない。

もし、君に早く伝えていたら変わったのだろうか。
ただ一言、好きだと伝えていたら。
関係が変わるのが怖くて、伝えなかった。
もしかしたら、に逃げる事ができなくなるのが怖かった。

真っ暗な部屋の中で膨らむのは妄想

ああきっと、
あの子とキスもして、愛も囁いて。
私にするような苦い顔じゃなくて笑顔で。
頬を少し赤く染めて。
周りの人も祝福してくれて。

残された私の気持ちはどこにぶつけたらいい?



部屋の端に残されたものが目にうつる。

夏の残り物。
他の花火より量が少し多くて、飽きてしまって残った物。
持ち手が少しヨレていた。

頭の中で再生される思い出。
火がユラユラ揺れて…

君の笑顔は眩しい。

あっけなく消えた線香花火。
消えた先は地面
踏まれて消える


「ハイセ…」
















「なまえがいないんだけど、どこか出かけたのかな…」
「アイツならよくフラフラどっか行くから、そのうち帰ってくんだろ。」
「(どうでもいい)」
「才子ちゃん知らない?行き場所」
「才子も聞いてないぞー。」


沈んだ線香花火



20151025
イメージ曲アストロノーツから。

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