▽男装設定
▽最強設定


―君は何を求めて
―私にその言葉を紡ぐのだろうか



「というわけで、ヴァチカン支部のシュラさんが表立っちゃいましたが…どうするんですか?貴方は。」
「どうするもこうするもねぇ…別に私も出てもいいんだけど…もうちょっと秘密にしてた方が面白いかなあとは思ってる。」
「相変わらず、悪趣味ですねぇ…なまえは」
「悪魔のあんたに言われたくないわっ」
「異端児という意味では、奥村燐と貴方は同じ待遇ですからねぇ。変な同情とか辞めてくださいよ?」
「同情はしないわよ。仕事だし」
「ほぉ?…」
「…」

シュラ同様、奥村燐の監視官として高校生に成り済まし、クラスの一員として溶け込んでいる私。本来の姿は、「聖騎士」…ではなく、そのまた上(実際は公表されていない地位だが)の「正聖騎士」としての地位を築いていた。異端児として同じというのは、私が異世界からきた人間だから、ということ。燐みたいに悪魔と人間の子、なんて設定は持ち合わせてはいない。

最初は、私も燐みたいに力を持て余してたなー…。懐かしい。

古びた男子寮の一室を借りて、燐や雪男を監視しつつ、普段の生活を送っていた。クラスに溶け込むなら徹底的に溶け込もうと思って、男装し始めたのは、我ながら良い案だと思ったけど(シュラにマネされたし)、毎朝、髪をまとめて、ウィッグをかぶるのはキツいわ。

私の本当の立場や存在を知っているのは、学校内ではシュラとメフィストのみ。男としての私が男子寮に住んでいることは、燐や雪男も知ってるけど。いつも雪男から「兄さんのことバレたらどうするんですか?!」と小言を言ってくると愚痴るメフィストがいい加減煩わしいが、どうでもいいので適当に聞き流していた。



++++




「なまえ!おはよー」
「…おはよ」

男子寮の食堂で頬に米を詰め込む燐と雪男に会う。

「相変わらず低血圧だなー。一緒に学校いこーぜっ!なまえの分の弁当も用意したからよっ」
「…うん。ありがと」

私が本当は女だって知ったらどんな反応するのかなー。とか、
てかそもそも実は正聖騎士って知ったらどうするのかなー。とか、
異世界からきたんだよーって言ったらどうなるのかなー。とか。

彼らと話していると、そんなことばかり浮かびあがる。
空は今日もとても眩しくて、その答えを教えてはくれないけれど。

「今日一限なんだっけ?」
「……僕の授業ですよ、兄さん」
「あ、は…は…わりぃわりぃ…」
「燐のばーか。」
「あっ!言ったな〜なまえっ!お前だって俺と成績かわんねーだろっ」
「能ある鷹はなんとかって言うでしょ?」
「脳…?何言ってんだてめェは」
「ハァ…兄さん…」


++++


薄暗い廊下を一人で歩いていると、明るい髪色の露出狂が後ろから話しかけて来た。いつも思うけど…その恰好ポロリしないの?

「おい〜っなまえ。お前いつまで正体隠しとくんだよ」

手を回してきたので自然と身体が密着する。

「勝手にバラしたのシュラでしょ…」
「まぁそうだけどよー。そのおかげで余計な仕事まわってくるんだよなー。」
「私、人に教える能力とかないし。シュラのが適任だって」
「いやいやー。同党だろ」
「なんかでもさ、シュラはカッコよく正体バレたじゃん?私もそうしたい。」
「なんじゃそりゃ」


「…正体、て何のことだ。なまえ」

―後ろから聞き慣れた声が鼓膜を通る。
人の気配は感じてたけど、まさか燐だったとは。迂闊だった。

「…燐」

振り向くと、一人寂しそうな顔をした彼が立っていた。

「あ…わ、わりぃ。誰だって言いたくないこととかあるもんな」
「…」
「ま、まぁ…言いたくなったら…」
「―あれ?兄さん?なまえくん?」
「!ゆ、雪男…」

色んな役者が揃って来た。燐と私達の微妙な空気を感じ取ったのか、雪男は名前を呼んで言葉を紡がない。

「チッ、カッコよくはバラせねーみたいだぞ?」
「シュラのせいでしょ?私だって不本意なんだけど?!」
「え、なまえくん…?わたし…?」

状況が飲み込めない二人。


―本当はカッコよくウィッグとって女の姿見せたいけど。
絶対髪の毛やばいから無理。なので。




「―…みょうじなまえ。正聖騎士の称号をもつ……





女です。」

普通に自己紹介。

「「…」」

注射を打つ瞬間みたいな静けさだった。時が止まったような。次の瞬間までは。

「「えぇえぇえええぇぇええええええええぇぇ」」




++++


「というわけでぇー、シュラ同様、大人の事情で潜入してたみょうじなまえでーす。ぴちっぴちの永遠の18歳です。女の子です。これから面倒な授業とかは出ない気がします。」

ばっちり化粧して、カワイイ男子高校生を落としにかかる。大人の色気なめんなよ。燐にはウインク付き。みんな顔真っ赤にしてカワイイなぁ。

「えっ、なまえくんが?なまえちゃん??ってことぉ?」
「そーです。短髪はウィッグです。志摩くんみたいにピンクに染めようかなって思ってます(適当)」
「潜入…ってことはなまえ…さんも、上一級とかなんか?」
「あーうーん。」
「「「「?」」」」

「…聖騎士の上?みたいな…」
「「「「は?」」」」
「あ、いや…だから、そのー」

自分で言いずらいな…シュラにチラリと助けを求める。

「正聖騎士。表向きには存在してない階級だが、…聖騎士はあくまで建前の存在だ。強さ的には建前じゃねーけどな。実際に最強と言われるのは…正聖騎士だ。」

「「「「「「えぇぇえぇぇぇえええぇええええええぇぇぇえ」」」」」

今日二度目の驚声を聞く羽目になった。



++++




色々なことが立て続けにあった帰り道。

「なまえ…さん!色々失礼なことを」
「いや…雪男…いいよ…今更そんな堅苦しいの…」

私の立場を知って、改めて深々と挨拶してくる雪男。

「でも」
「男子寮に私が住んでることをメフィストに愚痴ってたのは知ってるけど」
「申し訳ございませんでしたーーっっ」

見事な土下座っぷり。慣れてるな。

「だから、燐。」
「ん?俺?」
「私、燐がサタンの息子だって知ってるよ」
「えええぇっ」

驚きすぎて尻尾でてるし。

「だから、なんていうか。うーん。私の前では普通に接してていいよ。私的には、尻尾も含めて燐だと思ってるし。」
「…なまえ…。俺も、実は…その」

少し頬を赤く染めて、急に下を向いた燐。夕日が彼とかぶって、よく表情が見えない。

「うん?」
「うっ…。秘密にしてたことが…あって、よ…」
「えっ?なに?私が気付いてないことなんかあるの?」

一応監視対象だから、ずっと観察してたつもりなんだけどな。

「…俺…ホモになったかと思ってた……」

…

「はい?」
「いや、だからその」
「(頑張れ兄さん)」
「?」
「だーーーーーーっっ!」

感情が高ぶったのか青い炎が燐の身体を覆う。

…?…あ。

「?あ、しえみのこと?大丈夫だよ燐。しえみのこと好きなんでしょ?いくら悪魔が人間の事好きになったからってホモとは言わないから。ホモって言うのは基本的に男同士でね」
「いやいやいや。それはわかってる。てか何でしえみのこと好きって…」
「え?違うの?」
「いや、確かにしえみは可愛いと思ってる、し、…女としては一番良いと思ってた、けど…」
「けど?」
「(兄さんがんばれ…)」
「いや、その…よ。」
「?なに?もしかして雪男とデキてんの?」
「ちげーーーー!!!そうじゃなくて、その」

えまって何の話。まさかホモって私のこと好きかもって思ってたってこと?
まさか?いやでもこの雰囲気。え、まじ?…燐て15だよね?え、いや、ダメでしょ。年齢的に。エッチとかできんの?絶対童貞でしょ。

「…」
「なまえのことっ…」
「!待って兄さん。なまえさんて、今いくつなんですか?」

急に燐の前に立ち、遮る雪男。

…

「…永遠の…」
「実際の年齢。教えてください。」

怪しく光る眼鏡。

「女の子に年齢聞くなよ。」
「……立場的にご結婚なされててもおかしくない、ですよね?」
「ええっつっ?結婚してんのかなまえ?!」
「うるさい燐。してないから。」
「なんだーーー…良かった!!結婚してたらなまえと付き合えなくなっちまうところだったぜ!」
「に、兄さん…」
「ん?…あ。」
「…」




子供と大人と大人になれない子供と
(燐となまえと雪男と)




20170115


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