「どういう意味だと思う?」
「それはただの独占欲じゃない?」
「なにそれ?それって期待していいの?」
「うーん…微妙だなぁ。」
「ハァ…」

泣ける。期待して損した。

私は臨時で平子班に駆り出され、倉元と手を組んで外での聞き込み調査の途中だった。
ちょうど腹が鳴る時間帯も過ぎて遅めの昼食をとろう、という話になり一回聞き込みは休止して近くの店に。

時間も時間なため、客も少なく、適当に開いてるカウンター席に座った。かなりオシャレな店で周りはカップルが多い。メニュー欄を見てとりあえずドリンクを頼む。もちろん仕事中の為、ソフトドリンク。

「なまえちゃんと組むの久しぶりだねー。」
「そうだね。」
「多分今日は聞き込み続けても何もでてこないだろーな」
「ハズレっぽいよね、ここの区域」
「うーん。あ、ドリンク来た。」

最初は普通に仕事の話。朝から歩き回っていた私達は、日頃の疲れも溜まり疲労度はピークに達していた。

「いやぁ疲れたねホント」
「まだ昼過ぎなのにね」
「アキラさんも人使い荒いからなー。」
「ほんとだよ」

でも私は身体の疲労より気になっている事があった。もちろんそれは先日のハイセの発言。結局あの後、何もそれについてシラズくんから言及される事も無く書類だけ渡して帰った。ご飯の間も彼はニコニコしてるだけ。

全く何考えているかわからない…。

「ねぇ倉元ォ」
「なーに」
「ある男が私に連絡先聞こうとしたら私を振った男がそれを邪魔してきたんだけど、それってどう思う?」
「おっ、面白そうなネタだね。その男って誰?」
「それはいいでしょ。男目線でこれってどういう事か教えてよ」
「うーん、そうだなぁ…なんて言って邪魔してきたの?」
「えーと…突然だったからあやふやなんだけど…確かこいつは俺の事が好きだから的な感じかな」
「お、かなり俺様な男に惚れたんだねぇ。意外だなぁ。なまえちゃんはハイセみたいな優男がタイプだと思ってた。」

うっ。

「…どういう意味だと思う?」
「それはただの独占欲じゃない?」
「なにそれ?それって期待していいの?」
「うーん…微妙だなぁ。」

なにそれ。微妙なの。

また谷底へ落とされた気がした。一回振られたのにまた落とされるって。

「まだ好きなんだね?その男のこと」
「……」
「ひゅー、図星か。ますます気になるなぁ。CCGの人?」
「ハァ…。振られたんだから放っといてよ…。」

気分が沈んだ。もうハイセの話したくない。話せば話すほどつらくなる。

「他にも男はいるから元気だしなって。」
「そんなの…わかってるよ」
「とりあえず飲んじゃう?」
「は?」
「ほらほら。メニューにお酒一覧あるよ」
「…正気?まだ仕事中なんですけど。」
「大丈夫大丈夫。もうこの区域に目星い情報は無いだろうし、疲れたっしょ。酒でも呑んでパーッと忘れようぜ!」

……

それも一理ある。お酒飲んで忘れれるとは思えないが。…

「…じゃあキティ。」
「いきなりワイン?いくねー。」
「キティ好きなの」

罪悪感が無いとは言えない。でも最近働きづめだし、夜もうまく寝付けない。たまには…少しくらいサボっても…いいよね?



しかしこれがマズかった。
疲労がたまっている身体に、酒は、マズかった。




+++




「気持ち悪いぃ…」

倉元にトイレ行ってくる、とだけ伝えた。

いつもより酒の回るペースが早い。嵌め外すくらいお酒を飲む時期はとうの昔に過ぎたのに。自分の限界もわかっていたはずだった。今日はイレギュラーな事が多すぎる。

トイレの前に座り込んで体内に入ったアルコールを吐き出そうとしたが無理だった。指をつっこんでもオエッ、という声が漏れるだけ。

…ダメだ…今日はもう帰ろう……

なんとか席まで戻って、倉元に先に帰ると伝える。大丈夫か?と心配されたが今はとりあえず放っておいてほしい。まだ全然帰る時間帯じゃないのは百も承知だが、もう色々無理。たまには頑張るの辞めたい。

「飲みすぎた?帰れる?」
「帰れる。お金はまた今度払うから」
「いいよ、こんな時間帯から飲ませてごめん」
「いや、私が決めて自分で飲んだから自己責任だよ。とりあえずタクシーで帰るね」

フラフラとお店を出て、近くに止まっているタクシーに声をかけた。暇だった運転手は喜んでお客さんどちらまで?と聞いてくる。家まで…と答えて、そのまま後部座席に寝転んだ。まじ気持ち悪い。ここで吐いちゃだめだ。早く家までついてくれ。

「お客さんの家はどこですか?」

ああそうだ…言わないと…

言うのも面倒で携帯を見せた。こういう時の為にメモに住所をかいててよかった。そのついでに携帯に連絡が入ってないかチェックする。一番上には倉元からラインが入っていて、今日の謝罪とお礼だった。倉元の下も新規通知があって、誰だ…と視線を流すと佐々木ハイセと書いていた。

「…」

何か仕事かな?…
ハイセのトークを開こうとしたが、なんとなく拒まれる。既読をつけたら返さないといけない。とくに仕事の内容だと。でも通知が三つ入っていたので内容がわからない。

…

考えるのすら面倒で携帯を閉じた。

今は吐き気と戦うことで精いっぱいである。

「お客さんつきましたよ。」

やっと…

「ありがとうございます…」
「大丈夫ですか?」
「はい…」
「2500円です」
「3000円で…」
「はい、おつり」
「ありがとうございます…」

なんとか気力でお金を払って、地面に足を付ける。気持ち悪すぎて視線は地面。いつでも吐けそう。実際出るかどうか別だが。

その時、自分に影が重なった。私の前に人の気配。

避けなきゃ…


「なまえ」


名前を呼ばれた。え、知り合い…?
なんとか、なんとか最後の力を振り絞って顔を上げた。


「…!」

真っ青な顔の私は更に真っ青になった…気がする。



「ハイ、…セ…え?」
「さ、早く家帰ろう。」



自然に出された手に意味がわからなかったが、縋ることにした。





お手をどうぞ、とたまには気障に言ってみる



とりあえず気持ち悪すぎて考える事を放棄。



20151002

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