かわいい命令を叶えるのは僕の役得。
仕事中にも関わらず、頭の中を支配しているのは、彼のこと。もやが身体に絡みついて、重い。
「おい、ボサッとするな…この区域は最近、凶暴な喰種が人を喰ってる。集中しないと喰われるぞ」
「!…ごめんなさい、アキラさん。」
「……ハイセと何かあったのはわかるが、仕事に持ち込むな。」
「はい。」
今は、ターゲットである凶暴な喰種を捕らえにある区域に来ていた。アキラさんと私と、その他同僚達。
空気がピリピリする、
そう、彼らは突然現れる。霧の中から、幽霊が現れるように。
死ぬのは一瞬。生き続ける方が困難だなんて、
「―っ!現れた!喰種だ!」
枯れた葉が落ちるように。
魚の顔を想像させるような表情で倒れる同僚達。
「危ない―…!」
全てがスローモーション。時間にして、数秒。なのに頭の中はたくさんの言葉が駆け巡る。
避けなければ、でもどちらの方向に?クインケを出す時間は無い。ダメだ、どっちに避けてもあたる。せめて急所は外しても、
―その瞬間、私に降り注ぐ血滴。
「―アキラさん!」
「なまえ、大丈夫か?」
「は、…」
迫ってきた喰種を背後から倒したアキラさんの輪郭がぼやける。足元に力が入らず、そのまま意識、が……
「なまえっ?!」
―アキラさんの声に返事することは叶わなかった。
そう、私達以外にまだ、“ヒト”がいた。
「…お前は誰だ?」
「…。」
「…喰種、か?」
「…」
「…彼女を離せ……私の大事な部下だ。(コイツ…さっきの喰種と格が違う。でも、この感じ…)」
「…」
「お前……、ハイセ?」
「…。」
輪郭が分からないくらい、深い霧とフード。何も言わない“ヒト”は、そのまま彼女を連れて消えた。
―そう、普段なら彼女はあの程度の喰種に追い詰められることも
―ましてや、背後に気付かないわけがなかった。
―すべては“彼女”の策略
「ん…」
目が覚めるとそこは見知った天井……では無かった。ベットに自分が埋もれていることは感覚でわかったが、ここがどこだかわからない。というか視界は真っ暗。
あれ…私…?アキラさんと…
「…目が覚めた?」
耳から入ってきたのは愛しいハイセの声。
「…ハイセ?」
手さぐりで彼を探すけど、私の近くにはいないらしい。
「良かった。」
「あの…ここ、は?真っ暗でなにも、」
「目隠ししてるからね」
「目隠し…?」
「なまえちゃん。」
「ここが今日から僕達二人だけの…部屋だよ。」
手と足に感じる鉄製の物はきっと気のせいで。
心の中を支配する恐怖と愛おしさもきっと気のせいで。
ただ闇に支配されている今の自分に縋れるものは彼だけで。
与えられた作られた甘さに酔いつつ、昔の記憶をたどる。
それはきっと私にとってはどろどろのものでしかなくて。
今の私に受け取れるものは彼からの愛だけなのである。
「どういう、こと?」
「なまえちゃん、笑ってる」
―もう彼以外の誰とも会えない事に嬉しさを感じる私も同種。
『…倉元くんと相当飲んだんだね。お水、どこ?』
『…ハイセと飲みたかったよ、ほんとは』
『……じゃあ、僕と二人だけになる?』
『なれたら、いいなあ』
消えた記憶
20150510
後書き▼
良かった…ちゃんと終わった。(笑)っていうのが正直な感想です。今回の中編は何も考えずに始めてしまったので着地点はさぐりさぐりでした…。進撃やPPと違い、今のツールを作中に使えるのはとても新鮮でした。進撃はそもそも日本じゃないしPPは近未来なのでちょっと違うし…そういう意味でとても書いてて楽しかったです。私の中でのハイセもまだ全然定まっていないまま始めてしまったので、やっぱり安定のちょっと狂ってるけど愛はあるっていう立ち位置で落ち着いてしまいました。書きやすい方に落ち着いてしまいますね…意識しないと。
最終回ですが、結局、なまえを連れ去ったのはハイセです。顔は見えずとも雰囲気でハイセだとわかったので、アキラさんは深追いしなかった。なまえは酔ってて覚えていませんが、ハイセと二人になれたらいいと言ったのは、なまえ。それを実行したのがハイセ。レシートを置いていったのは、記憶残ってないだろうと判断したハイセが、二人の世界を実現させるための実行を行いやすくするためでした。
ご愛読ありがとうございました。またお会いできる事を願って。
�添ui
201509〜20160510
ALICE+