「なまえ」

名前を呼ばれて、振り返ると鬼の顔をした上司が書類を抱えて立っていた。休憩中にも関わらず、呼ばれたことに良い予感は全くしない。まだ飲み切っていないコーヒーをテーブルに置いて、問う。

「なぁに、宜野座?」
「何?じゃない。報告書、どういうことだこれは」
「どの報告書?」
「これだ!」

怒られるような報告書を書いた覚えがない私は、彼からその問題の報告書を受け取る。報告書の端が少し皺になっていたのが気になるところだが、今それを言ったらやばそうなので、ぐっと押し黙る。そしてそのまま視線を内容に向けた。

そもそも何の報告書だ、と思って一番上の議題の欄を見ると、遅刻届だった。最近遅刻したっけ?という疑問を浮かべたまま、下へ視線を流す。


理由の欄を見て、顔がにやけた。



「お前ら……」

宜野座の怒声でハッとさせられる。慌てて、にやけている口元で手を抑えたけど無意味だった。時、すでに遅し。

「俺を相当怒られたいみたいだなぁ?」
「い、いや、そういうわけじゃなくて!」
「フッ…まぁいい。この日はお前は休暇日だったからな。お前に責任が無いとは言い切れないが、お前自身の非は無い。」
「うっ…」
「とりあえず狡噛を部屋から呼んで来い…」
「えっ」
「狡噛の部屋にいってもいなかった…どうせお前の部屋にいるんだろ?あとその首元隠せてないぞ!!」

身に覚えのある首元の跡を手で隠して、急いで自分の部屋に向かう。



宜野座が持ってきたのは、先日の狡噛の遅刻届だった。







+++






身体認証をクリアして、自分の部屋に入る。案の定というべきか、暗いはずの部屋の明かりはついていて、誰かがこの部屋に居座っているのは想像がついた。


「…慎也!」


寝室の扉を開けて、居座ってるであろう人物の名前を呼ぶ。もぞもぞと掛布団が動いて、顔が見えた。


「…なまえ?なんだ、今日の仕事はもう終わったのか…?」

寝起きの声。
私の部屋で勝手に寝てたな?


「終わってないよ!ていうか、宜野座から怒られたんだけど!何、あの報告書!」
「…?…」
「遅刻届!」
「……ああ、」
「ああじゃないよ!」
「だって事実だろ?」
「…っ、でも!」

抗議の声をあげる。掛布団をはがそうと手を伸ばしたら、逆にベットに引きずり込まれた。

「…ちょっ!」

すぐさま組み敷かれて、私の上に馬乗りになる。私が暴れないように両手をしっかりと押さえつけて。


「宜野座は嫉妬してるだけだろ。」
「しっ、」
「今ここであの日の再現しても、いいんだぞ?」
「んな…」
「寝間着じゃないけど、な」
「…え、あ、ちょっと」


両手を掴まれたまま、彼の顔が近づいてくる。ここで流されたらだめだ、と思って顔を背けるも、彼にとってそれは全く意味がなかったらしい。首筋に感じるぬるり、とした感覚。唇を何回か軽く押し付けた後、味わうように丁寧に舐める。変な気分になる前に抵抗するけど、やっぱり男の力には敵わない。両手で掴まれていたのに、いつの間か右手一つで押さえられていたみたいで、自由になった彼の左手は優しく私の肌を撫でた。


「ちょっ…慎也、」
「次は…お前が、遅刻届書く番だな」
「ん、もぉ…っ」






服の中に侵入してきた左手を抑える術は、まだ、知らない。




理由:なまえの寝間着がはだけてて、我慢できなかったから。



20150911〜拍手

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