花嵐

花嵐



今年の桜はやけにきれいだ。そんな風に思いながら東京の桜並木の下を歩く。

「わ、鉄朗! さくらふぶきだよ!」

ぶわっと舞い上がった桜の花びらに包まれる恋人は、俺を見て柔らかく笑った。

「ガキじゃあるまいし」

「なによ、一年に一度しか見られないのよ?」

照れ隠しに言った俺の言葉に、彼女は少しだけ機嫌を損ねたように頬を膨らませる。
感情豊かなそれは、俺が彼女を好きなところのひとつだ。

「悪かったって。ほら、花見、つづけるんだろ?」

俺から顔をそらした彼女の手を握り、俺は桜の下を歩き出す。

「ん、ねえ、鉄朗?」

「何だよ?」

彼女は長い髪を風に靡かせて俺の隣を歩き出す。

「うん、好きだよ?」

ああ、今年はやけに桜がきれいだなんて、違った。
隣を歩くお前が、きれいだったんだって今さら気づいた。



160408