感情
感情
私は自分の個性が嫌いだ。
「んだよ、ユキ」
「あっ、勝己くん……なんでもないよ」
嘘。
私にはわかる。彼が今、苛立っていることが。
私の個性は、相手の感情がわかる能力、だ。わかるとは言っても、相手の感情が私のなかに流れ込む感じで、だから私はあまりこの力は使わないようにしている。
感情がわかる。そう知るや否や、それまで仲良くしてくれていた子は私から離れていった。
そりゃそうだ。下手をしたら、好きな子は筒抜けだし、女子同士の腹の探りあいなんかには向かないのだから。
それは抜きにしても、私はこの力を使うと酔ってしまうから、滅多に使わないのだ。
強い感情ほど私に影響を及ぼす。ときにシンクロしてしまって、自分の感情なのか相手の感情なのかわからなくなるほどに。
「ユキ。おい、ユキ!」
「あ……勝己くん、なんだっけ?」
学校終わりの帰り道。私と勝己くんは並んで歩いていた。
勝己くんと私は幼馴染みだ。もう一人、出久くんという幼馴染みもいるけれど、いつだったか、私は勝己くんに言われた。出久くんとは関わるな、と。
なんでなのかなんて聞けなかった。彼の感情が私に流れ込んできたから。
怒り、妬み、嫉妬、恐れ。
勝己くんは、ヒーロー志望で、かなりすごい個性を持っている。粗暴だけど、私にだけは優しくしてくれるのも知っている。
でも彼は、いつもいつも何かに怯えていた。
「ユキ、うっぜぇ」
「え?」
私が彼をじっと見ていたからか、彼は私を見て舌打ちをした。
「ご、ごめん。私、……え?」
「お前は俺を、置いていかねぇよな?」
ふっ、と勝己くんに抱き締められていた。彼を見上げても夕日が逆光になって彼の表情が見えない。
私は反射的に彼の感情を読んでいた。
今までに経験したことがない、感情。
あったかくて、くるしい。
「勝己くん……私は。私は勝己くんの友達だよ」
「ちっ、ばかユキが」
このとき私は彼が何を言いたかったのかとか、私が感じた彼の感情の正体をわからずにいた。
160427