※某kymさんの描かれているミニキャラのリオをネタにしています。












「か、か、かわいい…!」


ちょこん、と手のひらに乗る小さな妖精のようなかわいらしい生き物に目が輝く。ボスを手のひらサイズにしたような見た目だけれど、マスコットキャラクターのよう。ぱか、と口を大きく開けたまま首を傾げ、そして花が咲くように笑った。そのあまりのかわいさに意識を失いそうになる。


「なまえ、メロメロだねぇ」
「じゃあ当分、この子の面倒はなまえが見ることでいい…?」
「は、はい!」


アイナちゃんにそう言われ、私の手に乗る小さなボスの妖精さんに目を合わせる。楽しそうにきょろきょろと周りを見渡し、私と目が合うとまた笑った。


「きょ、今日からボス…えと、ミニボスのお世話をさせていただきます!よろしくおねがいします!」
「ぶっ」


手は動かさないように頭を下げると、ルチアちゃんが吹き出した。そっと頭を上げると、握手をするかのように私の指をミニボスの小さな小さな手が握りしめた。か、かわいい…


「お腹空いていませんか?何でもご用意します!」
「このサイズで何食うんだ?」
「あ、お洋服とか…シルバ○アの家だとか椅子ご用意しますね、ボス!」
「なまえ楽しそうだね」


隊長に外出許可を貰えば、私はすぐに用意を済ませてミニボスと一緒に事務所を飛び出した。


嬉しいことに、ミニボスは私に懐いてくれているようで、へにゃりと笑いかければにこっと笑顔を返してくれる。見た目はボスなのだけれど、性格は反映されているわけではないようだ。妖精みたい。


某お人形さんシリーズの家具やミニボスに丁度いいベッド、小さな食器やミニボスの移動用のバッグなど諸々を買い揃える。事務所に戻り、空いているスペースに簡単に家具を置く。ミニボスも気に入ってくれたみたいで頬が緩む。


「ボス、紅茶を淹れますね。ミルクはいりますか?あ、クッキーあるんですけど…」
「呼んだか?なまえ」
「ほわっ!?」


手のひらに乗せているミニボスに話しかけていたら、突然背後から聞こえた声にびくりと肩が跳ねる。正真正銘のボスの姿に慌てて振り向けば、不思議そうに首を傾げ、何かに視線を向けると納得したように言葉を続けた。


「…ああ、これが…例の」
「あ、えっと…私がお世話係をさせて頂くことになりまして…」
「ガロから聞いた」


私の手のひらに視線を落とすと、ボスはぎゅっと眉間に皺を寄せていた。自分の姿の小さな生き物がいることはあまりいい気分じゃないのだろうか。だとしたらあまりボスに見せない方がいいかもしれないと考えた所で、ぽんぽんと手のひらをつつかれる。
ん?と視線を落とせば、ひそひそ話をするかのように私を手招く。何の疑問も抱くことなくミニボスに顔を寄せ、耳を向けるようにすると、頬に柔らかい感触。


「な…!」
「…え」


状況についていけぬままミニボスを見れば、楽しそうに笑っていた。か、か、か、かわいい!!
ほっぺにキスをされたのだとわかるとあまりにもかわいくて頬ずりをしたくなってしまう。ありがとう、という気持ちを込めて撫でようとすれば、ミニボスごと私の手のひらに手が覆いかぶさる。え、と驚く間もなく顎に指が添えられ、ぐっと引かれる。視界いっぱいに映ったボスの端正な顔に逃げることもできず、唇が塞がれた。


咄嗟に身を引いて離れた唇を、また塞がれる。意図せず鼻の抜ける声が漏れてしまい、燃えるように頬が熱い。リップ音とともに離れたボスの顔をうまく見ることが出来ず、慌てて酸素を吸い込んだ。必死に視線を逸らす私を叱りつけるように、ぐっとまた顎を引かれて強制的に瞳にボスが映る。


「なまえにキスをしていいのは僕だけだろう」
「……あ、ぅ…」


燃えるような瞳と視線が交わる。捕食者の目つきで見下され、ドクドクと早くなる心臓と頬に集まる熱はどんどん加速していくばかり。
造形のよすぎる顔立ちと真っ直ぐに私を見つめる熱っぽい視線。するりと指が頬をなぞり、添えられる。ゆっくりとボスが近づき、ぎゅうと目を瞑った時だった。


「いっ!って…」
「…?」


ぱ、と離れたボスが声を上げる。そっと目を開ければボスは苛立ちを隠さず顔を歪めていて、視線の先には私の手のひらの上にいるミニボス。そのミニボスはむっと眉を寄せて頬を膨らませていた。何故か仲の悪そうな二人(一人と一匹…?)に首を傾げる。


「なまえは僕のだ。渡さない」
「あ、あの…?」


睨み合う二人にどうすることもできず、未だドキドキと高鳴る心臓を落ち着かせるように胸の前で手を握ることしかできなかった。






2019/08/23