探偵トリップ


私には前世の記憶というものがあった。記憶といってもハッキリしたものでなく、前も似たような現代で生きていたなという程度。
ひとつ違うといえば、容姿だった。歩けば男女問わず振り返る。街を歩けば必ずスカウトがくるこの優れた容姿に、最初は喜んだもののだんだんと誘拐や変質者の多発、どこへ行っても目立つことから嫌になったのだけれど。

幼馴染の蘭ちゃんと園子ちゃんは贅沢な悩みだと苦笑い、新一くんに関してはおめーはそれ以外にもぼやっとしてるからなと言う始末。私が何をしたと言うのか。普通とはいえないけれど、まだ平和だったあの日常が変わったのは一人の転校生だった。


「姫宮愛梨だよっよろしくねぇっ」

教室に入る前から臭う香水に、濃い化粧。ピンクの髪に視界がくらりとした。容姿は整っているけれど、どこか違和感を覚えた。作っているような、そんな感じ。

そんな姫宮さんは挨拶もそこそこに、何故か新一の前にやってきたかと思うと手を握りしめ、よろしくねと微笑んだのだ。なるほど、面食いかぁ。私は女子だから関係ない、よかった。

「ちょっと…何あの子」

園子がわかりやすく顔をしかめ、蘭ちゃんはキュッと眉間にしわを寄せていた。そりゃ嫌だよね、好きな人が他の女の子に手を握られているのをみたら。
彼女は休み時間の度に新一に話しかけ、クラスの女の子を蔑ろにしていた。典型的な性格の悪さに知らぬふりをしていたけれど、そのクラスの女の子達が私に次々と抱きつくのだ。そして口々に、なまえちゃんの方がかわいい!癒し!とよくわからないことを言いながら嘆く。
うーん、とばっちりだ。

ぼんやりしていると携帯のバイブがなり、見ると新一が私達に一斉送信で助けろとのメール。助けろと言われても、近づきたくない。それにさっき蘭ちゃんが撃沈してきたばかりなのだ。

「なまえお願い!蘭の旦那のピンチ」
「うーん、ケーキおごってね」
「もち!」

重い腰を上げ新一に近づくと、香水の臭いが鼻を刺激する。くっっさい!顔をしかめないように表情筋を固めていると、振り向いた新一は助かった!と言わんばかりの笑顔。まだ助けてないよ。

「新一、帰ろ」
「お、おう!じゃあな」
「…ちょっと、誰よ」

いや貴女が誰。睨みつけられ完全に敵視されている。クラスメイトだと当たり障りない関係を言おうとしたのと同時に、アホ新一が幼馴染だとバラした。その言葉に、一層目つきを鋭くされる。こわい。

「幼馴染…?」
「俺たち用あるから、じゃあな」

手首を掴まれ、蘭達のところに引きずられると新一は晴れやかな顔をしていた。園子ちゃんも嬉しそうだ。蘭ちゃんは、少し顔をしかめていたけれど。

蘭ちゃんの視線の先には、あの転校生。ふと振り返ると、鬼のような怖い顔をした転校生が私をみていた。



2018/01/28