※スコッチの死亡シーンから始まります。死に方違う気がする。


















色素の薄い髪に血がつこうとも、彼女は構うことなくその亡骸にしがみついた。小さな声で何度も名前を呼ぶも、反応はない。当たり前だと言わんばかりに、壁には大量の血液が付着していた。一目見て致死量だとわかり、握られている銃と撃ち抜かれた頭が物語っていた。それでも彼女は名前を呼び続けた。

「スコッチ、スコッチ………」

か細い声だった。細い彼女の腕がゆるゆるとスコッチの体を揺らし続ける。居合わせたライにも、駆けつけたバーボンにも、組織のものに止められても彼女はやめなかった。

遺体は、破棄される。いつまでも離れない彼女にしびれを切らしたのか、無理矢理剥がされていた。彼女が咄嗟に掴んだのは、死に追いやった銃。抱きかかえられ、必死に抵抗する彼女が目に焼き付けた最期の姿。流れなかった涙が一筋、落ちた。嘘だとこぼした言葉は誰に拾われることもない。



部屋に戻された彼女はずっと銃を見つめていた。血液が付着したままのそれにはまだ弾が詰められており、拭き取れば使えるだろう。…そしてまた、命を奪う。
この銃がなければスコッチは死ななかったのだろうか。これが故障していれば、まだ生きていたのかもしれない。どんなにたらればを予測しても、彼が死んだことは変わらない。無機質な銃を見つめる彼女の瞳は濁っていた。

彼女は、あろうことか自分の脳天に銃口を向けた。かけられた指は引き金にあり、少女は無表情のままそれを引いた。
パン、と銃声が響く。一緒に噴き出た血液は部屋を汚した。倒れた少女の瞳は閉じ、流れ出る血液の量は死を暗示していた。

「なまえ!」

激しく開かれた扉から駆け込んだ男は、部屋の真ん中で頭から血を流す彼女をみて血相を変えた。もう一度彼女の名前を呼び駆け寄るとすぐに、握られた手には拳銃。その拳銃がスコッチの死に使われたものであるということに気づくには、余裕が足りなかった。
脳天を撃ち抜いた。おびただしい血の量。スコッチと同じ状態の彼女の体を抱き起こそうと手を伸ばしたーーーーーと同時に、彼女はむくりと起き上がった。何も映さない瞳で前を見据え、ぽつりとこぼした。死ねなかった、と。

「なまえ、まさか、その銃」
「……」

同じ死に方、だが生きながらえた少女。お得意の推理でその銃がスコッチのものだと悟ったバーボンは複雑そうに眉をひそめた。ベリーニは頭から垂れる血液をわずらわしそうに拭う。穴なんてなかった。違和感も何もない。血も、既に止まっていた。

何も言わず風呂場へと向かうなまえは、銃を手放さなかった。まるでそれが形見のように、大切に持ちながら。

彼女は死ねない。死ぬことは許されない。傷跡一つない体はこの世のものとは思えないほど、綺麗だった。






2018/01/28