※スコッチ死後、原作前。流血注意
心臓に突き刺さる大きな鉄は、私を殺そうとしているかのようだった。ドクドクと嫌に頭まで届く鼓動の音は収まらない。ぴりぴりと痺れる腕では大きな鉄の塊を引き抜くことができず、コンクリートの床にその手を投げ出した。
体がどんどん冷えていく。流れ出る血がどれほどの量なのかはわからないけれど、致死量は超えているだろう。はくはくと口が動く。呼吸がしにくい。これさえ抜ければ、後は簡単なんだけど。
助けに来る気配もない。実験以来鈍った痛覚のおかげで起き上がることはできた。そのまま立ち上がり、重力を利用して落とすことにした。
ごとん、と鈍い音と共に扉が開いた。抜けたおかげで、どぱっと血が出てしまったけれど。
「ッ何しているんですか!?」
部屋に来たのはバーボンだったらしい。任務の同行者にバーボンはいなかったはず。なんで、と紡ぐはずだった口からは血液が出た。思っていた以上にやばいらしい。
「喋らないでください!」
「ターゲット、始末、した」
「だから喋らないでください」
目の前がぐるぐると回り始めた。ふらついたのを気づいたらしいバーボンが私に駆け寄り、支えてくれたけれど私はその手を跳ね除けた。
口からも、心臓からもとめどなく血が出ている。致死量だ。でもそれは普通の人間の場合の話。いくら血が出て行こうが、心臓を潰されようが、頭を潰されようが私は死なない。
「私、不死だよ」
「…ですが」
「何やっても死ねない体してる。余計な感情、は…いらないから」
どくどくと流れっぱなしだった血液が、徐々に止まっていく。それを見るたびに、私は化け物なんだと実感してしまう。普通の人なら死んでいるのに、私は死なない。死ねないのだ。
ただ、死なないというだけで、健康というわけじゃない。死なないだけなのだ。だから、そう。今の状態をいうならば、貧血。今すぐにでも休みたいところだけれど、なんとなくバーボンには頼りたくなかった。
バーボンとよく一緒にいた、彼を思い出してしまうから。
(…スコッチ)
彼がこの体だったのなら、今頃生きていたのだろうか。
「…そうは言っても、フラフラじゃないですか。貧血なんでしょう、当たり前です。それだけの血を流せば貧血にもなります」
「!ちょっと」
「黙って運ばれて下さい」
私を横抱きにしたバーボンはどこか怒っているようだった。暴れる体力も残っていない私は、なけなしの力を使って胸板を押しのける。が、あまり意味がないようだった。
バーボンを見ていると、辛くなるのだ。隣にいつもいたスコッチの姿がないから。今だって。スコッチがいたら、スコッチがいたら彼は私を抱き上げた。それから、自分のことのように心配して、自分の上着をかけて。まるで私を普通の人間かのように扱うのだ。そして、ありったけの優しさで包んでくれた。辛かっただろう、と私の額と自分のを合わせる彼は泣きそうだった。
ああ、なんでスコッチはここにいないんだろう。
2018/02/03