※本編とは全く関係ありません。
※謎時空の為スコッチ生存時のどこかの時空です。
※スコッチのキャラを捏造しています。お互いシスコンブラコンです。





青い空、白い雲、広がる海!そして、座礁したボート!

「遭難したな!」
「笑って言う話じゃないからな、ヒロ」

遭難しました。
流れ着いた先はテレビで見るような古典的な無人島で、軽く降谷さんが見回りに行ったけれど人の気配はないらしい。洞窟のような場所で私は集めてきた木片を積み上げていた。と言っても、危ないからとお兄ちゃんがほとんど持って行ってしまったけれど。

「いやあ、運良く着替えのトランクも一緒に流れ着いてよかったなぁ」
「ひろにい、アロハシャツすっごく似合ってる!」
「なまえもその花柄ワンピースとっても似合ってるな。妖精みたいだ」
「えへへ」
「おいイチャつくな彼氏は俺だ」

同じくアロハシャツに身を包んだ降谷さんはどす黒いオーラを放ちながら大きな魚を担いでいた。片手に掴んだシュノーケルにヒビが入りそうだ。

やっと火を起こすことに成功し、積み上げた木片に移していく二人をそっと眺める。インドアな虚弱人間は無人島では生きていけない。つまり、全く役に立たないのだ。罪悪感でいっぱいになりながら、せめてもっと木を取りに行こうと立ち上がる。日差しの跳ね返る眩しい砂浜に目を細めた。

「なまえ、どこに行くんだ」
「ふ、降谷さん。えっと…もっと木がいるかなって、木を…」
「なまえはそこにいろ。荷物当番っていう重要な役割があるからな」
「は…はい」

ぱちぱちと火の勢いが増していく。今は明るいけれど、やがて日が落ち暗くなるだろう。頻繁に訪れる虫に何度も震え、逃げ惑っている間に焚き火は完成していた。幸運なことにサバイバルナイフもあったから、降谷さんが綺麗に魚を捌いている。サバイバルナイフで魚は捌けるものだったのかぁ。降谷さんは本当にすごいなぁ。

「で、どうする?零」
「連絡はついているが、救援が着くのは明日になるそうだ」

お醤油かポン酢か、何かが欲しい。焼き魚を食べながらそう思っていたら降谷さんがどこからか塩を出して私に渡してきた。四次元ポケットでも持っているのだろうか。何でも調理に使おうと持ってきていたらしい。

「なまえ、調子はどうだ?疲れただろう、休んでいていいよ」
「私、何もしてないし…何か食べ物とってくるよ、ひろにい!」
「危ない!ダメだ!絶対だめだ!」
「少しそこの森で果物とか」
「だめだ危ない!!」

肩を掴まれ、揺さぶるような勢いでものすごい剣幕のひろにいに尻込みしてしまう。このまま振り切って行ってしまったらとんでもないことになりそう。渋々お兄ちゃんの言う通り森へ行くことを諦めると、また何かを持ってきた降谷さんは顔を顰めていた。岩や砂利や、様々な種類の石とお鍋を腕に抱えた降谷さんはしかめっ面だ。

「俺達に全部任せて、なまえは安全なところにいろ」
「でも…」
「…わかった。じゃあ俺と一緒に行くか」
「え?」

薄く笑った降谷さんは私の手をするりと取った。ぽん、と帽子を被せられるとそのままの調子で「行くか」と言われる。複雑そうなお兄ちゃんにいくつか言葉を投げた降谷さんは私の手を引いて歩きだしてしまった。未だ理解の追い付いていない私の思考を残して。


さくさくと砂を踏みしめる音が心地いい。砂浜に流れ着く波の音と砂浜を踏みしめる音、鳥の声が聞こえる。自然に溢れた静かな場所に、心が洗われるようだ。まぁ、無人島だから人がいないだけなのだけれど。

「ほらなまえ、カニいるぞ」
「わあ…ちいさい!かわいい!」
「なまえの方が何億倍もかわいいと思うけど」
「ひょえ…」

小さなカニのもとへ走ろうとした体を後ろからすっぽり包まれてしまう。西洋映画みたいな体勢に、ぼんっと沸騰したように顔に熱が集まった。そんな人前で、と言おうとしたけれどここには人がいないんだった。どうしよう!恥ずかしくて今すぐ爆発して死んでしまいたい!

「すぐお前は“お兄ちゃん”にべったりで、彼氏を放置する」
「え、えと…」

耳元で囁かれる声が心臓に悪い。たっぷりと色気を詰め込み、ゆっくり落とし込むような声色に体が震える。意味深な手つきで滑らせ、降谷さんは私を抱きしめる腕に力を増した。

「ヒロは洞窟で見張り番と、寝床の確保をしているからここには来れない」
「……っ」
「やっと…二人っきりだ」

な、なんだこれ。乙女ゲームみたい。

慌てて逃げようと暴れると、体勢をぐるりと変えられてしまった。間を置かず手首を掴まれ口が塞がれ、退路を絶たれる。ぐっと密着しているこの体勢は、よく降谷さんの体温が伝わってしまう。私の心臓の音が聞こえてしまう。終わらない口付けに慌てて胸板を押すと、べろりと舌が侵入した。そ、外です降谷さん!!

「…っは、どうした?」
「ふ、…や…さ…そ、外…」
「誰もいないだろ」
「や、やだぁ…」

じわじわと涙が滲む。木陰とは言えこんな晴れた開放的な外でこんな、恥ずかしいこと。ぐっと息を詰まらせた降谷さんは私の胸元に顔を埋め、深く深く息を吐いた。

「…襲わないって約束するから、俺の気の済むまでキスさせてくれ」
「え、え…」
「なまえが足りない」

上目遣いのはずなのにこちらを見る降谷さんの目は、肉食動物のようで。狩られる小動物の気持ちになったかのよう。背中に回った腕はがっちりと固定され、逃げられそうにない。

「でも、木材とか、果物とか…」
「俺がさっき採ってきた。缶詰もある」
「ひろにい、一人ですし…」
「だめか?」

しゅん、とした降谷さんにかわいいわんちゃんが連想される。きゅんと胸に響いたその姿に思わず頷きそうになる。ずるい、そんな顔。
抵抗しようにも逃げられない。言い訳の退路も絶たれた。せめてもの抵抗で咄嗟に思いついた言葉を滑らせた。

「た、立ったままは…体勢が、辛いです」
「…じゃあそこの木陰に行こう」
「えっ」

ぐっと抱き上げられ、言質を取られたことに気づいたのも後の祭り。ばたばたと足をばたつかせても赤子の手をひねるかのようにすんなりと抑え込まれてしまう。やばい、これはまずい。

確か、さっき降谷さんは“俺の気の済むまで”と言った。突然されたあの口付けだって、息ができなくて恥ずかしくていっぱいいっぱいだったのに。つまり、あれよりもっと激しくなる。

「ふ、降谷さ…」
「ヤらないから、多分」
「多分!?」

そっと木陰のところに寝かせられてしまった。ギラつく降谷さんに、びくりと震える。襲わないと言っていたけれど、今から襲いますと言っているかのような瞳をしている気がする。

ばたつく足は絡め取られ、押し倒され逃げ道をなくした私の抵抗手段はゼロだ。諦めた瞬間それを悟った降谷さんに襲いかかられたのは言うまでもない。






その後洞窟に戻り、つやつやした降谷さんと顔が真っ赤なまま抱き上げられた私を見たお兄ちゃんは発狂した。救助が来るまで私は降谷さんから遠ざけられ、降谷さんとお兄ちゃんは何故か怪我をしていた。



2018/05/06