ひろにい、元気ですか?私は元気です。お兄ちゃんと連絡が取れなくなって二年くらい経ちましたね。怪我はしていませんか、ちゃんとご飯食べていますか。早くお兄ちゃんに会いたいです。会える日を楽しみにしています。

ところで、零さんに囲われてからも二年が経ちました。お兄ちゃんは妹がこうなっていることを知っていますか。なんだかんだで不自由なく勝ち組ニート生活をしています。
最近、女子高生のお友達が増えました。毛利蘭ちゃん、という女の子で今有名な「眠りの小五郎」の娘さんらしいです。とてもいい子なのですが、少し困ったことになっています。お兄ちゃん、助けてください。

「そんな人、絶対別れた方がいいです!!」
「え、えーっと…」

状況を整理しよう。まず、ここはポアロ。零さんが許可を出してくれたので、零さんと一緒にポアロに来た。給仕をする安室透としての零さんを眺めながら紅茶を飲んでいると、学校帰りの蘭ちゃんとコナンくんと合流した。
学校の話や今流行りの話だとか、何気ない会話に花を咲かせていた。ふと、蘭ちゃんが私の左手にある指輪に気づいたことが発端だった。結婚をしているのかと問われ、籍は入れていないからノーの答える。コナンくんが、学校の終わる時間より前に私がここにいたことから働いているかどうかを聞いたので、素直に働いていないと答える。

そう、コナンくんの問いかけが何故か的確で、気づけばぽろりと恋人の許可が出ないと外出出来ないと言ってしまったのだ。それを聞いた蘭ちゃんは血相を変え、身を乗り出し声を上げた。以上、あらすじでした。至急応援をお願いします。

「だってなまえお姉さん、それって監禁だよね?」
「外に出られてるし…不自由はないし」
「でも、全部許可がないとダメなんでしょ?」
「ま、まぁ…」

コナンくんはとても真剣な顔をしている。カウンターの奥では零さんが調理をしているようだ。

「なまえお姉さん、その人は何をやっている人なの?」
「えーっと…あまり人に言っちゃいけないって言ってたから言えないんだ」
「…お姉さんやっぱり別れた方がいいよ」

コナンくんに呆れた目で見られてしまった、零さんのせいだ。警察という職は反感を買いやすいから口外するなという零さんの言いつけに従っただけなのに。慌てて衣食住の面倒見てもらっていると話すと、余計訝しげに見られてしまった。何が不味かったのかわからない。

「お待たせしました、イチゴタルトとフルーツタルトです」
「安室さん!どう思いますか!」
「え?」

注文していたケーキを届けに来た安室さんは、きょとんとした顔で蘭ちゃん達を見遣る。あまりの剣幕に苦笑いをする安室さんは、普段の零さんを知っている私としては新鮮な気持ちになる。
目の前に置かれたイチゴタルトの輝きに目を奪われている最中、蘭ちゃんは私の恋人の話を安室さんに捲し立てる。零さんの話を安室透が聞く。自分自身の話を人から聞く。どういう心境なのか考えるのが怖い。私、話してはいけないことを話していないだろうか。

「そうですねぇ…かなり過保護な方みたいなんですよね」
「過保護の域超えていますって!なまえさん、今すぐでも家を出ましょう!」
「え、えーっと…でも、不便なことはないし…不自由ではないし…」
「洗脳されているんです!!」

ヒートアップしてしまった蘭ちゃんに私の声は届かないようだ。私の手を両手でがっしりと掴み、蘭ちゃんはしっかりと私の目を見据えた。

「外には楽しいものがたくさんあるんですよ!私がなまえさんにたくさん教えます!コナンくんも!」

零さん、どうしましょう。真横で聞いている心境はどうですか。これは私が悪いのでしょうか。帰ったら説教ルートだけは勘弁して頂けないでしょうか。

外の楽しみ、と言われても。インドア引きこもり人間だから、夏の代名詞海やプールは日に焼けるし暑いし、あまり泳げないから気が進まない。冬のスキーだとかウィンタースポーツも寒いし運動ができない以下略の為特に行きたいと思わない。出不精で申し訳ない気持ちでいっぱいだ。ひろにいがいるならどこにでも行くんだけどな。なんだか蘭ちゃん、引きこもりの子供を外に出そうとする親みたいだ。

「限定クレープとかケーキとか行きましょうねなまえさん!」
「是非お願いします」

お兄ちゃん、テイクアウトのできない限定スイーツが食べられることになりそうです!やったあ!あまり真横にいる安室さんの顔が見たくないけど、今から楽しみですお兄ちゃん!



2018/05/09