真実はいつもひとつ、で有名なメガネの小さな死神に出会ったらどうすべきか、とファンの間で話題になる。名前のテロップが出たらもう手遅れだとか、不自然な行動を取ったら死ぬだとか。出会わないのが一番だけれど、彼らはどこにでも出没する。最近では朝食メニューではないものを頼んだだけで怪しまれるという展開があるのだから、出会ってしまったが最後な気がする。

何故そんな話をしているのかと言うと、絶賛遭遇中だからです。今ままでポアロに来ていた時に死神にも探偵団にも、毛利探偵にも出会っていなかったのに。数回しか来ていなかったから出会わなかったのかな。わからない。とにかく同じ空間に江戸川コナン少年がいる。怪しまれない行動がしたいのだけれど、私はいつもカウンター席に通されて安室さんとお話をしている。安室さんと仲のいい人間なんて、声をかけられるに決まっているのだ。

でも、まだ安室さんと話さなければ。チャンスがあると思っていた時期が私にもありました。

「ねぇねぇお姉さん、安室さんとずいぶん仲が良いみたいだけどそういう関係なの?」
「え、えっと…」

助けてーー!!!

ここで恋人なんて言ってしまったら確実に目をつけられる。けれど言い淀んでいたら怪しまれる。ちょっとした知り合いだと答えても、どこでと聞かれたり根掘り葉掘り聞かれたらすぐにボロが出てしまう。依頼人だと答えてもまた然り。安室さんに助けを求めて目線を送ってもまた怪しまれる気がする。もうだめだ、詰んだ。

「秘密の関係、ですよね?」
「うえっ」

思わずびくりと肩を震わせ声の方をみれば、コナンくんと私の間ににこにこと笑顔の安室さんがいた。コナンくんは「へえ〜〜そうなんだ!」とかわいく答えているけれどこの声のトーンは納得していない。さらに根掘り葉掘り聞いてくるに違いない。こわすぎる。

「ところでお姉さんは何をしている人なの?」
「え、えーっと…」
「答えられないようなお仕事?お姉さん、自分のこと聞かれるの苦手なの?」
「ど、どうして…?」
「お姉さんのことについて聞いたら言葉詰まらせてるから、そうなのかなぁって」

うわーん助けて神様!夢小説でいつか読んだ文面を必死に思い出す。夢小説でもトリップ主はコナンくんとの遭遇でボロが出たり渡り合っていたりしていたけど、私はごまかせる気がしない。

「無職なの、言いたくなくて…」
「働いてないの?」
「え、ええっと…」
「働く必要がないからですよ。コナンくん、どうしてそんなに彼女が気になるのかな?」

安室さんは神様だった。
言い忘れていたけれど、外では安室透という偽名で行動しているから安室の名で呼ぶように言われている。警察なんだと説明をされたけれど、まぁあながち間違ってはいない。公安であること以外。

「安室さんが、見たことないくらい優しい顔でお姉さんのこと見てるから…恋人同士なのかなって!」

やっぱりこの死神こわい。

私が答えたらボロが出る気がして、ちらりと安室さんに目線を送った。安室さんはこれはまたきれいな笑顔で、コナンくんに微笑んだ。

「相変わらず詮索好きだね」

すごい、イエスともノーとも答えてない!安室さんの話術に感動していると、手に持っていたらしいメニューを渡された。ラミネートのされた一枚のメニューに目線を落とせば、写真付きのケーキが数種類並んでいた。

「食べたいものはありますか?」
「えっと…じゃあ、半熟卵の…」
「パンケーキですね。コナンくんは?」
「えっボク?えっと…」

じゃあ同じものを、と選んだコナンくんは不思議そうに安室さんを見ていた。どうかしたのかな、と首を傾げるとどうやらお金のことを気にしているらしい。もちろん僕のおごりだよ、とウインクをした安室さんに黄色い声をあげそうになった。生ウインクだ!テレビでこんなシーンがあったら絶対アップになってSNSで拡散されるやつだ!

「その代り、もう彼女を詮索しないであげてくれるかな?僕が答えるから」
「…はぁい」

安室さんがカウンターの中に行ってしまい、コナンくんと二人きりになってしまう。実際は後ろのテーブル席にお客さんがいるのだけれど。カウンターにいるからまずい質問をされたら安室さんが助けてくれるだろうか。
そういえば私は今日コナンくんと初対面なわけだから、彼のことを何も知らない女性である。下手なことを言ってしまう前に自己紹介をしたほうがいいのかな。無言に耐えられない。

「え、っと…コナンくん?だったかな」
「あっごめんなさい、自己紹介してなかったね。ボクの名前は江戸川コナンだよ」

知ってる…親の顔よりみた名前…
なんて言えるはずもなく、必死に笑顔を作って自分の名前を告げた。あ、名前言っちゃったからテロップが出たかもしれない。年齢も晒されているかもしれない。まず私はこの世界に来る前の年齢と一緒なんだろうか。姿は変わっていないけれど、服は変わっていたし…どうなんだろう。

よろしくね、と微笑むとコナンくんもにっこりと微笑んでくれた。詮索する時のコナンくんはめちゃくちゃ怖いけど、ぶりっ子している時のコナンくんはめちゃくちゃかわいいのに。ずっとぶりっ子していてくれたらいいのに。でも中身は工藤新一くんだと考えると微妙だなぁ。

「そっかぁ、コナンくんは小学一年生なんだね。学校はどう?」
「楽しいよ!」

心の中で何度も「知ってるけどね!」と叫びながらコナンくんとの会話を楽しむ。詮索しないのであれば、まだ。まぁこういう会話をしている間にも小さな動作や発言から揚げ足を取られる可能性が高いから気が抜けないのだけれどね。
少年探偵団の話もちらっと聞いた。そういえば、安室さんがポアロで働いているということは哀ちゃんもいるってことだよね。今って原作のどこなんだろう。コナンくんは安室さんが公安だって知っているんだろうか。

「お待たせしました」
「!わあ、おいしそう」
「ふふ」

テレビでみたやつだ!
あれ、今このパンケーキがあるということはIoTテロ事件は既に…?これから?まぁいっか。
いただきます、と手を合わせてから半熟卵をそうっと割る。実物が目の前にあることに感動しながら一口食べた。おいしい。しかも本人のお手製だ。おいしい。こんなおいしいものを作れる公安がいてたまるか。公安って料理とボクシングとギターとテニスとカーチェイススキルがないとなれない職業だっけ。

「あれ?お姉さん、首元虫刺されの跡があるよ」
「へっ」

パンケーキを食べるために髪を軽く結わえたからなのか、突然言われた言葉に意識が一瞬飛んでしまった。明らかに虫刺されではない。キスマークだ。どうしよう、恥ずかしすぎて死にたい。

慌てて髪を横に流して後で薬でも塗らないとなぁととぼけながら安室さんを睨んでおいた。安室さんはにっこりと笑っていた。確信犯なのでは?

もう当分ポアロに行けない。






2018/07/28

以下お返事



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>六花様
この度はリクエストしていただきありがとうございました!続編としてやはり主人公と出会わなくては…と謎の使命感に駆られました。やはり江戸川少年には極力会いたくないですね。
これからもお暇な時にお立ち寄りくださると嬉しいです。ありがとうございました!