アウライア様はつい先日なまえさまの弟であるノクティス様をご出産なさったばかりで、
王都インソムニアは連日ばたばたとした日々を過ごしていた。
なまえさま5歳の時の事である。
私は陛下と共に最近あまり構ってもらえていないであろうなまえさまの私室へと訪れていた。
「なまえ」
「おとうちゃま!!」
陛下の姿を見て部屋のラグに座り込んでいたなまえさまはブルーの美しい瞳を一際輝かせて持っていたふわふわの緑色の兎?のぬいぐるみを陛下に投げ弾丸のようにシフトした。なまえさまは本当に才能豊かでいらっしゃる。
そんな突然のシフトにも陛下は慣れたものでおっとっとなどと言いながらなまえさまの小さな身体を抱きとめた。
流石陛下、というほかない。
ノクティス様、アウライア様の様子や昨日食べたお食事のお話、召喚獣の話など様々な話を拙い言葉で必死に話すなまえさまは微笑ましくとても可愛らしくてらっしゃる。
ふいについ最近結婚した侍女の話になり、なまえさまも結婚したいと言い出した。なんとも早熟なことである。
「なんと…なまえはもう…好きな人がいるのか…?」
「うん。でもおとうちゃまもとてもすきよ…?」
「ん゛ん゛っ…それは…ありがとう…。」
顔色を伺うように上目遣いで陛下を見つめるなまえさまの可愛らしさに陛下は悶絶せざるを得ないようだった。
「…して、…それは誰かな?」
深い呼吸で息を整えた陛下はにっこり…と微笑んではいるが目が笑っておらず、目に見えぬ圧が周りに渦巻いている。
そんなオーラに気づくこともなく天真爛漫になまえさまは大きな声で即答なさった。
「こりゅ!!!」
…しばしの沈黙
…しばしの静寂
こりゅ…こりゅというものはいないので下の回らないなまえさまの言い違いということだ…ということは…
「こりゅ…コル!!コルか!!!ッコル!!!????」
陛下も気づいたらしい、そしてなまえさまと20も離れた泣く子も黙る王都警備隊隊長のコルが小さな愛娘のハートを射止めているという事実に父親として驚きと悲しみの声をあげた。
「コルは確かにいい男だ…13歳という若さにして王都警備隊に入りすぐモルスの親衛隊になった…そして15歳で私とともにレガリアで闘いながら各地を旅をした仲だ…間違いなく腕も立つし思いやりもある…堅物で多くを語らんが確かに、いい男だ。そこはさすが我が娘見る目があると言える……しかし!!しかしなぜあんな堅物を!!?なまえから見ればおじさんではないか!!!」
いつも冷静に物事を運ぶ陛下が自分を棚に上げて早口にまくし立てる様はなかなかにレアである。
「あのような…チョコボの雛を見てもにこりともしなかった奴が…!!!魔物もひと睨みだというし…怖い顔ではないか!」
散々な言いようであるが、なまえさまはその様子ににこりと笑って返す。
「おとうちゃま、こりゅはやさしいのよ、なまえにおはなくれたもの」
「スキエンティア、至急コルを呼べ」
そうしてなまえさまの一言によってコル・リオニスは突然招集をかけられたのである。
「失礼いたします、陛下、コル・リオニス参りました。」
至急という伝達が悪い方向に伝わったらしく、不死将軍コルは珍しく少し焦ったようになまえさまの部屋に現れた。
「おおコル、すまんな仕事中に…しかし何か私に言うことがあるのではないか…?」
「いえ、構いません。
…陛下に申し上げること……?
先日王都警備隊が調査した王都の状況報告でしょうか…?」
「いや、そうではない、「こりゅー!!」
陛下のお言葉を遮って突然コルの懐になまえさまが現れる。おそらくシフトを使ったのだろうなまえさまはあの緑色の兎?を抱きしめている。コルは一瞬身構えたがなまえさまだと分かるとそのまま小さな衝撃を享受した。
「なまえさま…」
「しゃま…やだっていった…」
「ああ、すまなかったなまえ、どうした…?」
敬語を取り払ったとりとめもない会話…そんな2人のどこか微笑ましい様子を驚いた様子で見ていた陛下はどんどん眉間に皺を増やしていく。
「いつのまに…」
「はっ、陛下失礼致しました、申し訳ございません何か報告し損じておりますでしょうか?」
あくまで軍人気質で真面目なコル・リオニスはいつもの無表情で陛下に向き直った。
腕になまえさまを抱えたまま。
「いつのまにそんなに仲良くなったのだ!」
もはや陛下は拗ねていた。
コルは一瞬ぽかんと口を開けたがああ、と気づいたようですぐに口を引き締めて事の始まりを話し始めた。
コルによれば最近のアウライア様のお産によりなまえさまはおひとり(もちろんお付きはいる)で庭園や図書室にいることが多く、あまりの寂しさに警備していたコルに話しかけてきたのがはじまりらしい。
最初はびくびくと怖がっていた様子のなまえさまだったが、無骨だが真面目できちんと答えてくれるコルに心を開き始め、本でわからないことを聞いたり、お花を一緒に眺めたり、コルから陛下の話を聞いたり、一緒に勉強したりしたそうだ。
そして今やなまえさまのおままごとで旦那役をやるほどになったと…。
コル自身は記憶が定かではないがその過程でお花をなまえさまにあげたかもしれないとの事だった。
そこまで聞いた陛下はかるく頭を抱えていた。
なまえさまに寂しい思いをさせていたこともあるが、思った以上にコルとなまえさまの仲は深まっていた。
「コルが…息子に……?????」
愛娘の淡い初恋にもはや混乱し始めた陛下はふらふらと柔らかいラグの上に座り込んだ。
「おとうちゃま…?」
コルの元から抜けてとてとてと陛下に駆け寄ってきたなまえさまは心配そうに陛下の頭を撫で始めた。
「どこかいたいいたいなの?おちゅかれなの…?」
優しいなまえさま、そんな様子に陛下は涙ぐみながら強くなまえさまを抱きしめコルを睨みつけた。
「…ッ娘はまだやらん!!!!!」
そのお姿は一般家庭の父親となんの違いもなかった。