07

それからもう一個ずつ刀装を作ってもらった後、私たちは再び鳥居の前に佇んでいた。

鳥居の奥には木が生い茂っているのが見て分かる。ひらひらと白い蝶が横を通り過ぎ、鳥居の下をくぐった。そのまま吸い込まれるように木々の合間を飛んでいく。

・・・・・・こうして見れば、普通の鳥居なんだけど

刀装を手に国広と今剣は、真剣な表情でこんのすけの話に耳を傾けている。私はもう一度鳥居を見上げてから、その立派な柱に手をついた。そして目を瞑る。





「大丈夫か」

どのくらいそうしていただろう。話が終わったらしい国広が無表情で私にそう言ってきた。「大丈夫って、なにが?」と疑問を口にすると「具合が悪そうだ」と返された。

「気のせいじゃない?」

国広は眉を顰めて「そうは見えない」と呟いて私の隣に並んだ。その後ろからひょっこりと今剣が顔を出す。心配そうにこちらを見上げるその頭を撫でてから、「本当に、大丈夫」と言い聞かせるように言うと渋々納得したように国広がそうか、と呟いた。

「あるじ様」

横からこんのすけに呼ばれ顔を向けると、尻尾をぴんと伸ばしたこんのすけと目があった。
嫌な予感がする。
それと同時に血塗れで帰ってきた国広が脳裏に蘇った。

「遡行軍が暴れているとの情報です。急ぎ出陣しましょう

・・・・・・審神者様??」
「・・・・・・ああ、うん、出陣、ね。二人とも刀装持った? 国広は軽騎兵を二つ、今剣は軽歩兵を一つだよ。よし、ちゃんと装備したね。これで・・・・・・大丈夫」
「あるじさま?」

装備を確認するためにしゃがみこんだ私を心配して今剣が顔を覗き込んでくる。

だめだ、いま、絶対情けない顔をしてる。

――――大丈夫、さっきの国広みたいにはならない。そのために刀装を作ったんだから。・・・・・・でも、もしさっきよりも強い遡行軍と戦うことになったら、刀装なんて関係なくなるんじゃ。

―――本当に、大丈夫?





「―――大丈夫だ」

思わず顔をばっと上げると、そこには変わらず無表情の国広が私を見下ろしていた。
吃驚、した。
一瞬心を読まれたのかと

「無傷でとは約束できないが、必ず帰ってくる」

そう言って手を差し伸べてくる国広。咄嗟にその手を掴むとぐいっと持ち上げられた。

「折れずに、あんたのもとに」

子供に言い聞かせるように優しく、それでいて力のこもった言葉に私はこくんと頷くしか出来なかった。

「だいじょうぶですよ! あるじさま。くにひろにはぼくがついていますから!」
「ああ、今剣には俺がついてるしな。あんたはここで待っててくれ」
「・・・・・・わかった。待ってる」

それを聞いた国広は小さく笑って、今剣とこんのすけを連れて鳥居の奥へと消えていった。

途端にあたりは静かになったけれど、不思議と寂しさは感じなかった。帰ってくると言った国広の言葉を信じてるからだろう。会って数時間の神様の言葉が、どうしてこんなにも胸に響くんだろう。

自分に言い聞かせた大丈夫という言葉よりも、ずっと安心できた。

「・・・さすが初期刀、なんて」