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マグル生まれが石化される事件はハリーが解決し、ホグワーツ内はかつての活気を取り戻しつつあった。
来学期も平和に過ごせると安心した名前は散歩に行くことにした。
散歩と行っても城内を散策するだけ。
それでも秘密の部屋騒ぎのせいで自由に出歩けなかったあの時に比べれば箒で空を飛ぶくらい心は高揚していた。
動く絵画とお喋りしたり普段行く機会が無い教室を見学したり。
休日という事もあってか人気がない城内を歩くのはとても新鮮だった。
どのくらい時間が経ったのだろうか。
夢中になりすぎていたのかもう空が暗くなり始めていた。
このまま気が済むまで散歩(という名の冒険)をするのも良いがそれでは夕食を食べ損ねてしまう。
「 …そろそろ戻ろう 」
ここから大広間までどのくらい掛かるだろうか、と思考を巡らせているとつま先に何かがコツンと当たる。
それは黒い日記だった。
それも見るからにボロボロ。
拾って良いものか躊躇したが城内にあるという事は誰かの落とし物である可能性が高い。
取り敢えずローブのポケットに仕舞い込めば良いだろうと恐る恐る日記に手を付けたが、予想と違う感触に思わず小さな悲鳴が洩れた。
「 うわぁ、湿ってる… 」
どんな保存の仕方をしたらこうなるのだろうか。
この湿り気ではローブのポケットに入れたくない。
こんな時は魔法の出番だ。
ローブから杖を取りだし呪文を唱える。
「 レパロ 」
杖先から飛び出た淡い光が日記を包み込み、破れていた箇所、湿っていた箇所を修復していく。
そしてものの数秒で新品同然になった日記をローブに仕舞い大広間に向かった。
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「 君は誰だ 」
どうしてこうなっているのだろうか。
首もとに杖先を当てられているのに心は意外にも冷静であった。
黒髪に深紅の目をした彼はホグワーツの制服を着ているがローブのデザインやブレザーを着ている。ネクタイの色からスリザリンだろう。
名前は記憶を遡り誰だったかと思い出そうとした。
しかしどれだけ考えても思い出す所か見た事もない。
見た所かなり美形に属する見た目の彼なら噂になっていたり、大広間で必ず見掛けるはずだ。
「 私は名字名前。あの、あなたホグワーツの生徒なの?私あなたの事見た事ないんだけど 」
「 そう。名前、ありがとう。君のお陰で僕はまた甦る事が出来た。 」
「 あー… ごめんなさいリドル 。 私貴方を甦らせた覚えはないから人違いじゃない? 」
リドルは私の首元に供えてた杖を下ろすと、口許を綻ばせる。
「 君のローブにある日記。それが僕の本体だ。 」
そう言うとリドルは私のローブから日記を取り出し私に手渡した。
「 その日記を君が直した。もう少し詳しく言えば、君の魔力で、だ。 」
「 確かに直したけどそれがリドルと関係あるの? 」
「 ある。 その日記は僕の記憶が入ってるからね。名前の魔力でその日記を直したんだ。当然僕にも君の魔力が流れてる。つまり僕は君の魔力が必要だ。 」
「 魔力って人に貸せるの? 」
「 現に名前の魔力を借りてるよ。 」
「 え!? 」
「 まぁよろしく、名前。 」
私一人でどうにか出来る問題なのだろうか。
名前は己の杖をくるくると弄んでいる彼を見ながら悩んだ。
「 …ねぇリドル、これダンブルドア先生に伝えた方が良いと思うんだけど 」
「 嫌だね。後々面倒だから今言うけど秘密の部屋を開けてマグルを石化させてたのは僕だ。そんな奴がまた復活したと聞いたらどうする?また殺されるに決まってる。 」
「 でも--- 」
「 君も同じだよ名前。封印された僕を復活させたんだ。共犯者として見られるかも知れない。 」
「 それは… 事故でしょ。私は何も知らなかった 」
「 どうしても名前がダンブルドアに言うなら僕は君に服従の呪文を掛けて共犯者にしてあげる 」
背丈からしてリドルは私より上級生だ。
日記に記憶を移すくらいの人だ、服従の呪文なんて簡単にやってのけるだろう。
そして生憎私の杖は彼が持っている。
私が勝てる要素は一つも無かった。
「 分かった、言わない。でも私の魔力を使ってまた秘密の部屋を開けたりしないで 」
「 もちろん。 」
そう言うとリドルはゴーストみたいに半透明になった。
驚きつつもこれなら他の寮生に見られる事は無いだろう。
持ったままだった日記を机に置き思い切りベッドに飛び込んだ。
今日はよく眠れそう。