勝手気ままな人生を

女の子を連れてスクールから出ると、俺はそのまま近くの草むらを目指して歩いた。


「ちょっと!いいから!私自分で捕まえる!」
「ポケモン持ってる?」
「持ってない、けど…」
「それは野生に襲われるって」


まさか自分の体1つで野生のポケモンを捕まえるつもりだろうか。
そんな原始的なやり方する人今時いないだろ。
嫌がり方があまりにも子供っぽくて笑いそうになったけどなんとか堪えて彼女の手を優しく引いて草むらへと導いた。
離してほしそうな彼女の手を離して、俺は彼女へ振り返る。


「さて、まずはお手並み拝見と行きますか」
「私ポケモン持ってないってば!」
「ほら」
「!」


彼女に差し出したの最近捕まえた野生のポケモン。
見た目は可愛いし女の子にも確か人気あったから、このポケモンなら扱いやすいかなって思って俺はポケモンの入ったボールを渡した。


「投げてみて」
「か、空じゃないんですか」
「投げてみたらわかるんじゃない?」


意地悪く、俺からは何も口にしない。
そしたら彼女は不本意ながらもボールを恐る恐る投げて、中からエモンガが飛び出してきた。

エモンガは木の枝に止まってこちらの様子を伺っている。


「エモンガ、ですか」
「当たり。人懐っこい性格してるし初心者でも大丈夫なはずだよ」
「でも…」
「エモンガは君がいいみたいだけど」


まだ何かを言いたそうにしている彼女の元へ、枝から飛んできたエモンガが頭に着地する。

この子はポケモンに懐かれやすいみたいだな、という分析を内心でしながら笑う。


「良かったじゃん」
「……」


あまり嬉しそうじゃない彼女。
もしかするとスクールに帰ってから周りに僻まれることを恐れているのかもしれない。

そんな彼女が、どこか俺に似てる気がした。
どこにも居場所がなくて、周りからの視線に怯えているのは…俺も一緒なのかもな。


「なあ」
「?」


これから言うことは、きっと彼女に同情したからなんだ。
他に理由なんてない。


「俺と一緒に来ない?」


似た者同士だと思い込んでるだけかもしれない。
俺はただ自意識過剰なだけかもしれない。
だけど、それでもいい。
彼女が俺の手を握ってくれるなら、それでいいかなって何故か思えたんだ。


「…あなたと一緒に行って、どーするんですか」


もっともな言葉だった。
もう少し後先考えない子供みたいに無邪気だったなら扱いやすいかっただろうに、あまりに現実的過ぎて俺は思わず返事に困ってしまう。


「それはわかんないけどさ、少なくともあの中にいるよりはずっとマシだと思うけど」
「…私は、何もできない馬鹿なので」


「あなたと居ても、何の役にも立ちません」と俯き、ネガティブな言葉を呟く。
だけど俺にとってはそんなことは問題の内に入らなかった。


「役に立とうとしなくていいじゃん。自分の好きなことすればいいよ」
「!」
「誰かのために人生無駄にするなんてさ、そんなの馬鹿らしいじゃん」


どーせ誰も助けてくれないし、俺が困ってても他人事なんだし。
だからこそ、誰かのためを思って自分のことを後回しにするのはあまりにも馬鹿らし過ぎる。
俺はそんなに優しくないし、他人に興味もない。

人のために自分を犠牲にするほど、俺は俺以外の人間に価値を見出だせない。


「自分勝手に生きた方が楽に決まってる」
「だったらなんで私に構うの」


彼女の真っ直ぐで揺るぎない瞳が俺を見据えるから、その目に吸い込まれそうになる前に逸らした。


「…気晴らしだよ」


そう、これは何の意味もない気晴らし。
つまらない時間を少しは楽しく過ごせるようにって、軽い考えで思っただけの浅はかな気持ち。
それ以上でもそれ以下でもない。


「…だったら、放っておいてください」


「ポケモンも、返します」と俺にモンスターボールを返し、一礼するとその場を静かに離れていった。

そうだよ、放っておけばいい。
俺は何をやってんだろう。
彼女に何を求めてたんだろうか。

今更何かを求めたところで、この世界に色が戻るわけじゃないだろうに……、


「…悪いなエモンガ、俺で我慢してくれ」


エモンガには悪いことしてしまったな…。
罪悪感が少し生まれ、俺はエモンガの頭を優しく撫でて謝罪の言葉を呟いた。