以前の俺なら、女に時間を奪われるなんて信じられなかっただろうなぁ、なんて他人事みたいなことを考える。
今の俺を過去の俺が知ったらきっと、呆れ果ててしまうだろうな。
「なあ」
「なに」
「好き」
女に興味はなかった。否、正しくはバトル以外に興味を持てなかったんだ。
異性に興味なんてなかった。付き合いたい願望とかもまったくなかった。俺はこの先もずっと、ポケモンと暮らしてバトルして…それ以外に一途に考えることないだろうって思ってた。
「…私は嫌いだよ」
「なかなか堕ちないなぁナマエ」
「私、トウヤタイプじゃないもん」
こんなストレートに切り捨てる女いるわけ?俺自分で言うのもなんだけどなかなか顔もいい方だよ。てゆーか俺から告白するなんてめちゃくちゃ珍しいのに。告白されることがあっても、自分からしたことなんて今までの人生の中で一度もないくらいなのに。
俺から告白とかめちゃくちゃ貴重なんだよ?なのにタイプじゃないってフラれるとかショック過ぎて明日寝込むわ俺。
「私なんかよりいい女、トウヤなら簡単に見つけられるよ」
こいつは何を勘違いしてるんだろう。
べつにナマエ以外の女にはまったく興味ないし、お前以上のいい女俺は出会ったことないから知らないんだけど。
フる理由としては30点だな。なんだよその断り方、ふざけんなよ。
「ナマエ以上のいい女なんていないから。諦めろって言うならはっきり言って」
同情とかいらない、フることに同情すんな。
「ねぇ…トウヤ、なんでいつもそんなこと言うの?私がこたえられないの知ってるくせに告白するなんて、ズルいよ」
困ったように微笑うナマエ。そーだな…、俺も思う。こんな連敗、バトルでも経験したことないよ。顔合わせる度に告白してフラれて、そりゃそーだよな。
お前には旦那さんがいるんだもん。
「好きになっちゃったもんは…仕方ないだろ」
「早く諦めてよ」
「毎回フるための言葉用意するの、いい加減つらいよ」と呟いた彼女に俺は苦笑いしかできなかった。
これから先も、勝機はないかな…、半分諦めを抱きながらも、俺はきっと明日も彼女に言うんだろう。
「なあ」
「ん?」
「好きだよ」
困ったように笑う彼女が簡単に思い浮かんだ。