月曜日
想定外のレベルじゃない
それは突然だった。家に帰ってきた途端、目についた緑の服。
幼い頃に両親を亡くして親戚に引き取られて、高校からはマンションの一室で一人暮らしを始めた私の家に、誰かがいるなんてことはまずありえない。
親戚の誰かが来るにしても、連絡のひとつくらい寄越すはず。
ましてや、目の前に倒れているこの人は、親戚なんかじゃない。
でも、今まで全く逢ったことがない人、というわけでもない。
いきなりだけど、私はアニメや漫画なんかが好きだ。
元から歴史が好きなだけあって、その手のものだったら大体は知っている。
もちろん好きな(好きすぎて困るとも言う)キャラクターなんかもいて、そんな人がトリップ、所謂逆トリなんかしてくれたら、なんて思ったこともなかったわけじゃない。
「でも、さすがにこれは…」
想定外にも程がある。
最近ニュースで政治家がやたらこの言葉を使っているのを耳にするけれど、こういう場合くらいは、世間の手厳しい一般人の皆様は許してくれるんじゃないかという自信がある。
だって、私の目の前に倒れているのは、この時代、いや、この世界の人間じゃないのだから。
そこまで考えて、こんなときでも冷静な自分はずいぶんと肝が据わっているものだと思った。
目を閉じて深呼吸してから、もう一度瞼を開けてその人を見つめる。
緑の衣。
茶色の短髪に混じる、一部分だけまとめてある長い髪。
その全てが、私の見慣れているもの。
「やっぱり…」
この人は、私のよく知っている人に違いない。
山崎烝。
あの薄桜鬼というゲームやアニメに出てくる、あの人だ。
外はもう暗いし、一人でこの人を運ぶ体力も残っていないから、携帯を取り出して、幼なじみのあいつに電話をかけた。
なんとなくだけど、あいつならこの状況でも私を助けてくれるだろうと思ったから。
「もしもし?」
『なに?』
「ねえ、逆トリって信じる?」
『…………は?』
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