「その、ウォルってさ、ガーランドのおっさんと仲良いじゃん? 」
ノクティスが口を開く。ガーランドとは仲がいい、という訳では無い。私は彼とは戦う運命であるだけで……
「本当はガーランドのおっさんの事が好きなんじゃないの? 」
「なっ!」
「ノクト」
セシルがノクティスの首根っこを掴んでどこかに行ってしまった。一人残された私はノクティスに言われたことを深く考える。
私が……ガーランドのことを……?
そんなことはない。私は……
「あれ? 君1人なの珍しいね」
「! 」
聞きなれた声に振り向き、剣を向ける。男──アーデンは「ごめんごめん」とヘラヘラ笑い、一度距離をとる。
「そんなに構えないでよ。何もしないからさ」
「……君とは馴れ合うつもりは無い」
「そりゃ残念。俺は悲しいよ。こんなに惹かれた相手にさっぱり振られてしまうなんて……」
アーデンはやれやれとジェスチャーする。それでもアーデンは再び近づいてくる。いつ剣を抜くか分からない相手の行動に緊張が走る。
「ちょっとぐらいお話してよ、ね? 」
「そこから動かないというなら、話は聞こう」
「全くお堅いね、君は。でもそういう所も魅力的だよ」
アーデンはその場に座った。私は剣と盾を下ろした。しかし、本当に襲撃する様子もなく、たわいも無い話を始めた。
「ここはなんにもないね。でも景色が綺麗だ」
コーネリア城と湖が見える。私の旅はここから始まった。アーデンやノクティスのいた世界は、建物で覆われ人が盛んだという。確かに彼らからした物足りないのだろう。ノクティスは以前そう言ってた。
「ここは、私の故郷だ」
優しい風が吹く。草原が揺れる。木々の音が聞こえる。ここは私を包み込んでくれる。
ふと目を閉じると、異様な感覚が襲う。すぐに目を開けると目の前にアーデンが立っていた、咄嗟のことで思わずよろけて倒れてしまう。するとアーデンはしゃがみこんで顔を覗いてきた。
「なっ……」
「君さ、ガーランドくんの事どう思っているの? 」
先程のノクティスと同じ質問と、目の前に移動されていた事に戸惑う。私は……ガーランドの事を……。
「俺さ、君に惚れちゃったんだよね」
「……私は、男だ」
「俺も男だよ? それでもさ、恋愛感情って性別関係ないと思うんだよね。」
アーデンが顔を近づけてくる。その時、鎖と重い音が耳のそばで揺れる。
「貴様は何をしておる」
「バレちゃった」
アーデンは笑うとその場から逃げ消えた。ガーランドは伸縮性のある大剣を元に戻すとこちらに近づいてくる。そして手を引いて起こす。
「あやつに何をされた」
「な、なにも……」
「それは本当か? 」
いつもより低い声で問いただしてくる。されそうになったが、されてはいないことは事実だ。本当だ、と真っ直ぐ答えると兜に隠れた瞳が少し和らいだ気がした。安堵のため息をつかれる。
「もうちょっと危機感を持て」とガーランドに言われたが、それは貴様に対してもだろうと呟くと怒られた。……なぜだ。


一方、ノクトはセシルに「それは禁句だからね」と今まででいちばん怖い笑顔で釘を刺されたという。
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