※洛山虹村
俺の名前は樋口正太。先日も黛と赤司に振り回されかけた普通の男バスのマネージャーです。
先日は黛と赤司だった、が。今回は更に1人問題児が増えた。
「なぁ樋口さん。」
何だよ、俺は暇じゃないぞ。と言いたいのだが言わないであげる。何故なら目の前にいるバスケ部の後輩、虹村修造はゲンドウポーズで黒いオーラを滲みだしている。しかも元々目付きが鋭いのにさらに鋭くなって怖い(確かコイツ元ヤンだったらしいな…)。
「赤司が黛さんばかりに構ってるんですがどうすればいいんですか?」
知 る か
という本音を飲み込み、「まぁ恋人だしなぁ……。」という事実を提示する。いや、間違ってないだろ。どう見たってあれは先輩後輩の域を越えている。
「……でも俺とも恋人なんですよ。」
虹村の衝撃の一言に俺は口に含んでいたあめ玉を喉に引っ掛けそうになった。
「……はい?」
「いや、俺と赤司は恋人なんですよ。」
余計な面倒事が俺を襲いかかってくるフラグ。
昼ドラ並みのドロドロな三角関係の予感しかしない!
「赤司と俺帝光中だったじゃないですか?」
「お、おう…それは知ってる。」
あと俺にこの話の拒否権はないのか。だが虹村は構わず話し出す。
「んで、一時期主将と副主将という関係もあり、お互い好きになり、ひっそりと交際していました。ですが俺が洛山に来て数ヵ月後、連絡が途絶えてしまったんです。」
「それは災難だったな。」
「それから今年、赤司が入ってきて、鉢合わせたんすけど、まるで知らないような素振りをされて……俺は赤司を追い詰めたんです。」
もしかして壁ドンか?流行りだった壁ドンでか。つかもしかして体育館裏のコンクリート壁のまさに拳ぶつけた跡のひび割れってコイツのせいか?
「なぁ、もしかして体育館裏のひび割れって……。」
「俺です。」
マジか。元ヤンこえぇ……。
「そうしたらアイツは"今のアイツ"に変わっていたんです。」
「今のアイツ……?」
「俺が卒業した後、帝光で色々あったらしく、人格が代わったようで。」
「赤司、二重人格ってやつ?」
「そうです。」
「つまり人格が代わったことにより、虹村の云う今の人格は黛と……。」
それは災難だわ。恋人に浮気されたと言っても過言じゃないな。
「んで、虹村は赤司を好きなの?」
「……好きだから今悩んでるんですが。」
そりゃそうだわ。音信不通になったかと思えば素っ気ない態度とられて挙げ句に浮気されて辛くないわけないな。
だからといって俺は何もしない。ただコイツの話を聞いてやるだけだ。
「……んで?お前はどうしたい?」
「……まぁ、取り戻すのは無理だとは分かっています。」
そうだな、お前の言う"今の人格"では当面拒絶されるだろう。
「……だから、」
何か腹を括るのか?俺は急かさず待つ態度をとる。すると、
「黛さんと一緒にあいつを愛そうと思います!」
そうかそうか……って、は?
「樋口さんお時間頂きありがとうございました!」
虹村は丁寧にお辞儀をして走り去っていく。俺はその背中を見つめることしか出来なかった。
「……結局自己完結かよ。」
さっきまでの時間は何だったんだ。つか俺を利用するな!
「小テスト受かるかな……。」
背凭れに寄りかかりため息をつく。
俺はお前らの恋路のマネージャーまではしねぇぞ!