※モブの女性の語り(あくまで創作の話です)


これは私の不思議な体験談です。
私は農家の一人娘です。実家手伝いで野菜や時に機織をしています。
ある日、いつものようにチョコボたちを引き連れてグリダニアへ向かいました。出来た野菜を納品するためです。納品し終え、帰ろうとすると、誰かに肩がぶっかってしまって倒れてしまいました。
「大丈夫ですか? 」
優しく声をかけ、手を差し伸べてくれたのは金色の髪に青い瞳をした好青年でした。私は彼の手を取り、立ち上がります。お辞儀をすると彼はにこっと笑いかけて「では」と言い、仲間3人ほどを引き連れて去っていってしまいました。
「あ、あの……」
お礼をと言いたかったのですが時すでに遅し。もう彼らは消えていました。

後日、彼に再会することが出来たのです。
「キミは先日の」
「あ、あの、お礼がしたくて」
私は手作りクッキーをラッピングしたものを彼に渡しました。「ありがとう」と爽やかな笑顔で言うもので、私は彼に完全に惚れてしまいました。
そこからご縁があってお付き合いをし、彼からエターナルバンドという冒険者の間で久遠の誓いをたてる、という所謂結婚式を挙げよう、と誘われたのです。
私はもちろん、即答でOKしました。
父と母も相手は冒険者とは言えど、結婚することにとても喜んでくれました。

それから式場予約……その前にエオルゼア十二神の皆様の石碑を巡礼しないと行けないらしく、彼と2人で巡礼していました。
ところが、不思議なことが起きたのです。
私の守護神、ニメーヤ様の石碑に祈りを捧げました。しかし、他の神様たちにお祈りを捧げた時には指輪が必ず光るのですが、ニメーヤ様だけは光らなかったのです。
「あれ? 」
「どうしたんだい」
「いえ、なんでもないです……」
きっと気のせいだろうとは思っていました。が、巡礼を終え、指輪を預かりますとクラリベルさんが2つの指輪を見るなり、
「あれ? すみません、1ヶ所お忘れでは無いでしょうか」
「僕たちはきちんと12ヶ所回りましたが」
「んー……確かに回られたというのなら、輝きが足りないはずはないのですが……」
クラリベルさんも長年エターナルバンドの介添の仕事をしているらしいけれどこんなことは初めてだったらしいです。
「ですが、12ヶ所回られた事実があるのなら……」
たまたまそういう風に見えたのかもしれません、と納得され無事に進みました。式場の模様、スタイル、予約までとり、あとは当日を迎えるまでとなりました。
「とても楽しみだね」
私たちは幸せになれる、そう思って楽しみに待っていました。
しかし、不思議な夢を見たのです。

淡い紫色の空の元、足元は水が流れていますが、不思議と濡れた感覚はありません。
『こっちへ』
誰か分かりませんが女性の声が聞こえたのです。
私は呼ばれた方へ歩いていきました。
とても綺麗な世界だったことをとても覚えています。歩みを進めていると、突然床がなくなったように水中にいました。夢だと分かっていたので苦しくなかったです。
ブクブクと泡立つ海の中を歩きました。泳ぐというよりも見えない道があったので歩いた感覚です。
『こっちへ』
再び聞こえた可愛らしい女性の声は近づいてました。
『いらっしゃい、可愛い私の友人』
そう声が聞こえたかと思うと、周りの海に光り輝く星が散らばったのです。そして泡が溢れたかと思えば人が現れたのです。その方はフードを被っていましたが白く輝く髪と赤い瞳が特徴的で、とても美しいと見惚れてしまいました。
「あなたは……?」
『私は星神ニメーヤ。あなたの守護神であり、友人である者よ』
ニメーヤ様、そう、私の守護神のニメーヤ様が現れたのです。驚きのあまり、ニメーヤ様のお姿をジロジロと見つめてしまいました。
『お願いがあるの』
「はい……」
『どうか、あの人とは結婚しないで』
あの人、とは誰のことだろうかと考えていましたが、結婚というワードにハッと思い浮かんだのは彼のことでした。
「どういう……」
『彼はとても悪い人よ。私はそれを知っていたから祝福をさずけられなかったの』
ニメーヤ様の時だけ光らなかったのは恐らくそういう理由だったのでしょう。ですが、私は彼が悪い人だとは思いません。
「ですが、彼は優しくて……」
『いいえ、あれは表向きの顔。甘い言葉で優しい顔で女性を誘い、拐って酷いことをする人よ』
ニメーヤ様の顔はとても真剣でした。私は頷くことも首を振ることも出来ませんでした。
『あなたにピンチが訪れた時はキャンプ・ドライボーンのエーテライトの近くまで逃げて助けを求めて──お願い、どうか……』
ニメーヤ様は薄く消えていきました。それと同時に夢から覚めたのです。
私は守護神からのお告げを聞き、不安になりながら刻一刻と迫るその日まで待っていました。

エターナルバンド前夜、緊張の中、寝付けずなんとなく起きてしまいました。
あの方が、ご友人──冒険仲間の方と晩酌をされていたのでしょう。明かりが灯っていました。
(あまり飲み過ぎないように)
などと心の中で呟くとふと話してる内容が聞こえたのです。
「あいついくらで売れると思う? 」
「あれだけ可愛かったら高く売れるだろ」
「可哀想になぁ、幸せから転落してよぉ。おっさんのおもちゃになるかもしれねえなぁ」
内容が、とても下品なもので、聞きたくないけれど、どうしても聞き耳を立ててしまったのです。
「つかお前演技上手すぎだろ。あの女もすっかり騙されて惚れてよ」
「女の求める理想の男なんか、優しくしとけばイチコロだって。まあ確かに可愛いけどさ、商品に傷つけたらいけねえしな。いい体してただけに食いたかったなぁ〜」
「可哀想になぁ」
ガハハと大笑いする内容で、それが誰のことかなんとなく分かってしまいました。私のことでしょう。エターナルバンドを挙げる前日まで必要以上に触れてこなかったのです。
私はその場から立ち去りました。ニメーヤ様は見ていらっしゃったのですね。
彼らの席からだいぶ離れた場所にある荷物をまとめ、外に出てチョコボを起こしました。
するとクエーと鳴いてしまったのです。
部屋の中から人影が動いたのを目にし私はバレたと思い、チョコボに乗り逃げました。きっと窓から様子を伺ったのでしょう。後ろから「逃げたぞ!」と言う大声が聞こえました。
私は必死にチョコボを走らせました。行先はニメーヤ様の示してくださったキャンプ・ドライボーン。
ニメーヤ様はわざわざ私の夢の中にまで出てきて警告してくださったのです。キャンプ・ドライボーンのエーテライトが見えてきました。
「待てーっ!」
後ろから声が聞こえました。あの3人です。私は誰か…!と強く念じながらキャンプ・ドライボーンに滑り込みました。
その時、チョコボが悲鳴をあげて暴れ、私は振り落とされ、地面に叩きつけられました。
背中から落ち、痛みで悶えているとあっという間に囲まれました。傍らに見たチョコボのおしりに矢が刺さっていました。
「お嬢ちゃん、なんで逃げたのかな? 」
冒険者さんはしゃがみこみ、私の顔を覗き込みました。ですが、その顔は最初見たあの日と一転、とても悪い顔をしていたのです。私はその恐怖のあまり怯え、声が震えてしまいました。
「もう手遅れなんだよ。仕方ねえから足1本持ってくか」
かつて私の王子様だと思っていた人は、もう1人に指示を出し、その日は私の斧を目掛けて振り下ろしました。
(たすけて──……!!)
くる痛みを覚悟し、目を強く瞑ると、聞こえてきたのは金属のぶつかり合う高い音でした。
「何をしてるんだ」
低い声が上から聞こえました。ゆっくり目を開くと大きな人が大剣を構え、振り下ろした斧を大剣で受け止めていたのです。
「なんだ貴様は……!」
3人は武器を構えて数歩下がります。大剣を持つ男の人は恐らくアウラ族でしょう、とても大きい方でした。
「お前らこそ女相手に何をしているんだ」
「ちっ……やれ」
それからのことはあまり覚えていませんが、アウラの男性の方が圧倒的に強く、3人は地面に転がり込んでいました。そして私の方に振り向いてしゃがみこむと「……怪我は」と聞いてくださりました。
「大丈夫です……ありがとうございます……」
恐怖と痛みで涙がこぼれ落ちました。とても怖い思いでした。もう二度とあんな目に遭いたくありません。そしてアウラの彼は小さく呟いたのです。
「……神からのお告げでここにいろ、と」
それから3人は捕まりました。私は助けてくださったお礼を申し上げたいと言うと、彼は礼など要らない、と言いどこかへ行ってしまったのです。

そして数年後、ウルダハの街で再会した私たちはお付き合いをし、結婚。そして子供にも恵まれ、幸せな家庭を築いています。


「あまり人の子の前に出るのは良くないぞ」
「ごめんなさいお兄様。でも……私をこんなに信仰してくれて、可愛い友人が酷い目にあうのは許せなかった」
「……あくまで今後の話だ」
ニメーヤは「少しくらい、手を差し伸べても罰は当たらないわ」とクスクス笑った。
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