※6.0以降の話。光♀固定名あり

終末は去り、暁も解散した。
暁の解散はあくまで表向きは、だが。

かの英雄と呼ばれた冒険者はオールドシャーレアンに足を運んでいた。
「キャロットラペ♪キャロットラペ♪」
るんるんと軽い足取りでギルドリーブに駆け寄る。オールドシャーレアンのギルドリーブにキャロットラペを納品していく。
ふへへへと不思議な笑いを浮かべて代金を貰っていく。
「あら、ヴィーゼさんこっちに来ていたの」
ふと自分の名前を呼ぶ声がし、振り向くと誰もいない。だが聞きなれた声だった為、下を向くといた。クルルであった。
「クルルさんこんにちは〜」
「あなたも忙しそうね……あ、ヤ・シュトラさんがヌーメノン大書院にいたわよ」
「あ、そうなの? 最近連絡取れてないから助かった〜」
ヴィーゼはほっと胸を撫で下ろす。自分からの告白で恋人関係になった同じく暁のヤ・シュトラと最近連絡がつきにくくなっていたのだ。きっと本にかじりついているのだろうとは思っていたが案の定であった。
「ありがとう、会いに行ってくる」
「気をつけて行ってらっしゃい」
クルルに見送られ、ヴィーゼは足早にヌーメノン大書院に向かった。シャーレアン魔法大学のそばにある大きな建物、大書院は魔法大学に通う学生たちの取り扱う分野の書物が多い。
静かな雰囲気に落ち着かない様子のヴィーゼ。コツコツと足音だけが響く。中を歩いていると見慣れた背中が見える。走りたい気持ち、抱きつきたい気持ちを必死に抑えて近寄った。
「シュトラ」
彼女の名前を小さく呼ぶとヤ・シュトラは耳もしっぽもボワッと立てて勢いよく振り向いた。そして呼んだ主が誰なのか把握するとしっぽをゆっくり下ろす。
「……久しぶりね」
「お話したいから外出たい」
ヴィーゼがうずうずしている様子にヤシュトラは察すると「分かったわ、待っててちょうだい」と本の整理をする。先にヴィーゼは外にある東屋に向かった。
外に出るなりはぁ〜と項垂れ、大きく息を吐いた。賑やかな場所が好きなヴィーゼにとって大書院やグブラ図書館など静かな雰囲気は苦手だった。
「待たせたわね」
東屋の椅子に腰掛けて待っていると、やっとヤシュトラが来たようだ。その手には分厚い本を3冊ほど抱えていた。
「シュトラ〜…」
ヴィーゼは我慢していた気持ちを解放する。彼女の名前を呼びながら抱きついた。
「今日のあなたはずいぶん甘えん坊ね」
「連絡しても反応してくれないのそっちじゃん〜」
「そうだったかしら……」
ヤ・シュトラは思い返せば呼び出し音が聞こえた気がしたが、気のせいだろうと気にしていなかったようだ。嘘でしょと落ち込むヴィーゼに、ヤシュトラは調べ物に没頭してしまって……私の悪いくせねと反省している苦笑を浮かべた。
「シュトラは何を調べていたの」
「そうね、世界を飛ぶ方法とそれから……」
ヤ・シュトラは1冊の本を手に取った。そこには身体に関する本のようだ。
「目……」
「ええ、そうよ」
ヤ・シュトラはかつて禁呪であるエンシェント・テレポを使用し、視力を失った。しかし辛うじて人間の動源力であるエーテルを見ることでなんとか生活出来ている。ヤ・シュトラは目を閉じ語り始めた。
「あの時、禁呪を使うことのリスクはもちろん考えたわ。それでも、それを使わないとこの場を切り抜けることを考えて……。使ったことに後悔はなかった。はずなのだけれど……」
ヤ・シュトラはこちらを見て苦笑いを浮かべる。
「あなたと綺麗な景色を見たいと、今更ながら思ってしまったの」
「シュトラ……」
「好奇心は猫を殺すってよく言うわ。知りたい知識欲が禁呪を覚え、それを発動させ……まあ私らしいのかもしれないわね」
ヤ・シュトラはヴィーゼに優しく微笑む。ヴィーゼもヤ・シュトラに見つめられ、んふふ、なあにと見つめ返した。
「あなたが最果てで見た景色を教えて」
終焉を止めるべく宇宙の果てまで飛び立ったあの日、暁のメンバーが一人一人消えていった。もちろんヤ・シュトラもだ。
それでも暁はみんな自分を信じてくれていた。だから歩みを止めなかった。孤独に苛まれる中、決して諦めず進んだ先にあったのは再会した仲間たちと、かつて敵と思っていたどこか懐かしい黒いローブの2人。エメトセルクの指を鳴らすと風が吹き、広がる白い光。そして足元に広がる花、

白く輝くエルピスの花を──

「あなたの髪と同じ色の花だったよ」
ヤ・シュトラの銀髪と同じと例えた。
するとヤ・シュトラはクスクス笑う。
「私の髪に例えるのね」
もう遠くの昔に自分の姿を忘れてしまったけれど、あなたがそういうのならきっとなのね。

そして全てが終わり朝日が登る。
対峙するは因縁の相手。
全力でぶつかった。拳で応えた。
もうボロボロになるほど。

「帰ってきた時のあなたはとても酷かったわ」
ゼノスとの最期の対決を終えた後の自分はズタボロにされていたと。それを思い出したヤ・シュトラはため息をついた。
「だから、もう2度とあんな風にならないでちょうだい」
「わかった。でも、シュトラ」

ヴィーゼはヤ・シュトラの手を握る。
「でも、私はこれからもあなたを守る騎士でありたい」
「ふふ、なら私はあなたを守る魔女かしら」
2人は笑いあった。和やかな時間が2人を包む。
これからも互いを愛し、守りたい、そう誓った。
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