突然差し出された物にロイファはキョトンと目をやった。そして差し出した人物──エレンヴィルと白い包装紙をベースに光に当たるとキラキラ光る小さな箱を交互に見て状況を理解すると疑念の視線を相手に送る。
「……誰からだ」
「……」
エレンヴィルは口を固く閉ざしている。そしてロイファから視線を逸らしている。
ロイファはエレンヴィルを通してわざわざ持ってくるものだからきっとエレンヴィルが信用している相手からだろうと半信半疑になりながら受け取る。
「開けていいのか」
「俺に聞かなくても、それはおたくのだ」
エレンヴィルは変わらずロイファを見ずに答える。ロイファは何かロクでも無いものだったらと少し身構えながら包装紙を丁寧に開けていく。
すると茶色のパッケージに赤いハートが小さく装飾されたものだった。首を傾げながら箱を開けると中から甘い匂いが漂う。
「これは……」
「今日は何の日か知らないのか」
「……何か祝い事でもあったのか? 」
思いつかない様子のロイファにエレンヴィルは大きくため息をついた。
「ヴァレンティオンって知らないのか」
「ヴァレンティオン……そういえば、あいつがララーを引き連れてどっか行っていたな……」
ふと思い出すのはヒューランの女性である冒険者の姿。ララーととても仲が良く、時折一緒に出かけることがあり、先日も忙しそうにしているララーの手を引連れて半ば強制的にどこかへ行っていた。
「ヴァレンティオンは好きな人にチョコレートや花束を贈るイベントだと」
「へぇ……で、これは誰から」
ロイファは白い手袋を外し1つチョコを取り口に含む。カリッと噛めば甘さが広がる。
美味しい。
少し甘いが、食べれなくはない。ボリボリと音を立てて咀嚼する。
「……俺からだ」
エレンヴィルは小さく呟いた。本人はかなり小声のつもりだったのだろうが、残念なことにロイファの長い耳はそれを聞き取ってしまった。
ロイファはエレンヴィルの方を向くと、既に背を向けて歩いていってしまった。
追いかけようにも全て中途半端にした状態ではさすがにここを離れることは出来ない。
「……素直になれよ」
ロイファは口元を手の甲で覆い、青白い肌を赤く染めた。