「1つ、忠告をしておくよ」
ボルセル大牙士から博物学者の捜索を依頼され、早速東部森林へ向かおうとするが、止められる。
「はい」
「シルフ族は特にイタズラ好きでよく人に化けることがあるんだ」
「はぁ」
「聞いた話によると、東部森林に僕や革細工ギルドのゲヴァがいた、なんてことも聞いた事があるね」
確かに本来居ないはずの者がいるのは大層不気味だ。
「彼らは恐らくグリダニア近辺にいる者を観察し、真似する。けれど、グリダニアに"居ないはず"の者に化けていたら、それは別のものだということを覚えていて欲しい」
「……ということはそういう実例があったということですか? 」
「うん、数年に1回そういうことがあってね」
気をつけて行ってらっしゃいと今度こそ見送られた。
それから数日シルフ族との交流が深まった。
ある日、こんな依頼があった。
「悪い子シルフがグリダニア人に化けてるでふっち!この"看破の鱗粉玉"を投げて正体を暴いてやっつけてほしいでふっち! 」とのことだった。
言われた場所に向かうと、以前ボルセル大牙佐が言っていた通り悪い子シルフがヒトに化けている。しかもボルセル大牙佐に。
「やぁ、ボルセル大牙佐だよ。仮宿のシルフたちがグリダニアを滅ぼそうとしているようだ。仮宿のシルフたちを討伐してくれないかな」
姿も言い回しも完璧にボルセル大牙佐だ。だが、生憎彼はそんなことを言うわけがない。もし、シルフ族たちがグリダニアを襲おうと計画してても彼なら穏便に対応しようとする。それを知っているヴィーゼは例の鱗粉玉を投げた。
「なんでバレたでふっち!? 」
ヴィーゼは黙って討伐した。
その後、仮宿に報告。本日の依頼を終えると帰ろうとしたその時。

──けて……

微かに声が聞こえた。

──たすけて……

か細いながら誰かの助けを求める声が聞こえた。
「どこ行くでふっち!?」
声の主の方に駆け出したヴィーゼ。シルフたちは止めようとするが、間に合わなかった。

──たすけて……

聞こえてくる助けを呼ぶ声にヴィーゼは走り寄った。どこ!?と焦りを覚える。
見覚えのある場所だが、深い森の奥にまで来てしまった。だが声の主の所へはまだたどり着いていない。
息を切らして立ち止まったヴィーゼの前に人影が揺らめいた。顔を上げたヴィーゼは固まった。
「こっちだ」
手招きする人物。それはミコッテ族のヴィーゼよりも背が高く、とても優しい声の、水色の髪の、甲冑を着た……
「オルシュファン……」
「着いてきてくれ、怪我人がいるんだ」
彼は優しい顔で手を伸ばす。ヴィーゼはたとえ幻覚でも彼に会えたことに心から喜んだ。
その手を握ろうと1歩すすんだ──……

「おい!ヴィーゼ! 」
背後から別の声が聞こえ、ふいに抱きしめられ後ろに倒れた。どさっと何者かの上に倒れればヴィーゼはハッと我にかえる。
そしてボルセル大牙佐に言われたことを思い出し、青ざめた。


『シルフ族は特にイタズラ好きでよく人に化けることがあるんだ』
『彼らは恐らくグリダニア近辺にいる者を観察し、真似する。けれど、グリダニアに"居ないはず"の者に化けていたら、それは別のものだということを覚えていて欲しい』

じゃあ、あれは……なに?

「ヴィーゼ」
「ひゃい!」
後ろから聞き覚えのある美声が名を呼び、反射的に振り返る。
「ぎ、ギドゥロ! 」
「大丈夫かお前」
「なんでここに……」
「たまたまお前が走ってくとこ見てたらよ、それにシルフ族がなんか慌ててたから追いかけてみたら……」
ギドゥロは視線をヴィーゼの後ろにやる。
「あと数歩進んでたらお終いだっただろうな」
ヴィーゼは振り向く。ヴィーゼの進もうとした先には道がなかった。その事実に震えた。ギドゥロは頭をポンポン撫でる。……何に魅入られたんだか知らねえけどよ、気をつけろよ。と慰めてくれた。
その後無事にギドゥロと共に仮宿に戻った。戻るなりシルフ族たちに心配と同時に怒られた。
またボルセルにも件を話した。するとギドゥロの話をするなり目を丸くする。ギドゥロの意外性に彼は大層驚いたようだった。

結局あのオルシュファンが何だったかは不明である。
しかし、黒衣森には蛮族、精霊以外にもなにか潜んでいるのかもしれない──……。
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