とある高校の家庭科室。そこには調理部の女子たちがワイワイとお菓子作りを進める。
その中に1人、巨体の男子生徒が女子の中に混ざり明らかに浮いていた。
彼の名はヘクトール。赤髪で焼けた肌を持ち育てられた筋肉がとても目立つ。そんな中、女子たちに囲まれつつ、器用に作業に励んでいた。
彼はボクシング部だったが、先輩たちからの嫌がらせにより濡れ衣を着せられなくなく退部。その後、たまたま調理実習があった際クラスの女子たちにその才能を見出されこうやって時々調理部にお邪魔しているとの事。本人としてはとある人を待つ時間が潰せてちょうどいいとの事だった。
「ヘクトールくんって好きな人いないの? 」
「……あ、いや……」
「もう! シャイなんだからそんな急に聞かれても答えられないでしょ」
急に好きな人がいないのかと問いかけられ口ごもると別の女子にフォローされてしまった。
ヘクトール自身、好きな人はいる。だがそれを誰にも打ち明けられていない。打ち明けることが出来ない理由があったからだ。
女子たちはキャッキャと楽しそうに会話を交わしていた。好きなアイドルの話、近所に出来たカフェの話など、それを横目に見ていたが青春をしている彼女たちは輝いて見えた。
「あとは焼き上がりを待つだけ! 」
オーブンに入れたクッキーが焼き上がるのを待つ間に皆で片付けを進める。
「ねえ、ヘクトールくん」
「……なんだ? 」
1人の女子がオーブン前で焼かれるのを見ているヘクトールに近付き、小声で話しかけてくる。
「あのさ、レザラくんって好きな人いるのかな」
その言葉に胸がチクッと痛んだ。
そう、ヘクトールかレザラの事が好きだ。だがヘクトールとレザラはあくまで幼なじみの男同士で親友。この感情はあくまで友愛で無くてはならないと言うのに。
その罪悪感に押しつぶされそうになり、黙っていると「ヘクトールくん? 」と声をかけられ、ハッと我にかえる。
「あんまその話聞かねえな」
「そ、そうなんだね……あと、お願いがあるんだけど」
その先の言葉は何となく予想できていた。
「レザラくんに、クッキーを渡して欲しいの」
「おう」
もちろん即答した。了承してくれたことにその女子生徒は「ありがとう」と笑った。
そして、ヘクトールの元から立ち去ると、仲のいい友達にその事を話したのかとても喜んでいた。
(……それが当たり前だよな)
ヘクトールはオーブンの前でじっくりと焼かれる生地をただただ見つめていた。


「それじゃ、お願いします」
無事焼きあがったクッキーを冷まし、袋に詰める。ヘクトールは自分の分はいいと断ったが皆から「せっかく作ったから持って行って」と少量袋に分けてもらった。
また、先程頼んできた女子生徒の分も抱えて教室へ向かう。
教室には既に誰もいなかった。西日が教室に差し込み、外から聞こえるサッカー部や野球部の声がここまで届いていた。
自分の席に座ると宿題に取り掛かる。机の頼まれたクッキーは割らないように大事にカバンの中に入れておいた。
30分くらいした後、廊下をバタバタと走る足音が聞こえる。息を切らす声も聞こえてきた頃、ガラッと大きな音をたてて教室の扉が開いた。
「ごめん、お待たせ! 」
髪と制服を乱した金髪の男子生徒、ヘクトールの幼なじみであるレザラが教室に飛び込んできた。
いつもの事である故にヘクトールは平然を保ち、「廊下は走んな」とボソッと呟いた。
「だってさっき家庭科室寄ったらもういないって聞いたから……」
レザラは息を切らしながら教室の中に入ってくる。ヘクトールの席まで近づくと、前の席の椅子を引いて座る。そして息を整えながら「帰ろうか」と微笑んだ。
ヘクトールは何も言わず、宿題をカバンに入れ、立ち上がった。やっと息の整ったレザラも立ち上がり、隣を歩く。
「今度の試合、出れそうか? 」
「あぁ、もちろん抜擢されたよ」
下駄箱で上履きから靴に履き替えながら、そんな会話を交わす。
レザラは剣道部のエースである。まだ2年生ということもあり、次期部長候補という立ち位置でもある。
「良かったな」
「試合、明後日の日曜だから見に来てくれるかい? 」
レザラの問いかけにヘクトールは一瞬考える。しばらく考えているヘクトールにレザラは「無理……? 」と眉を下げて見つめる。
「いや、行ける……」
そう答えるとパアっと顔を明るくし、嬉しそうに笑った。
「あぁ、そうだ」
ヘクトールはカバンの中にある預かり物を差し出す。可愛らしいラッピングを施されたそれを見るなり、「これは? 」とレザラは受け取った。
「隣のクラスの……」と調理部で隣のクラスの女子から預かったことを説明すると、「そうか」と短く返事してカバンの中に入れた。
「直接渡せばいいのにね」
そう言って無邪気に笑うレザラが何となく怖かった。その目は笑っていないように見えたからだった。
ヘクトールとレザラは途中で別れた。
レザラは一軒家に家族と共に住んでいるが、ヘクトールは家庭の事情によりアパートに一人暮らしをしている。
規則正しい足音でアパートの階段を上り、2階へ上がる。アパートにはヘクトールともう一部屋だけしか住人は居なかった。特に誰かとすれ違うこともなく、自分の部屋の前までたどり着く。
そして鍵を開け自室に入ると暗い部屋に明かりを灯した。
「ただいま」
誰もいない静寂だけが広がる部屋に自分の声だけが虚しく響いた。返答もない、物音1つすら聞こえない。そんな寂しい部屋にヘクトールは帰ってきたのだった。
手洗いをした後、部屋着に着替え干していた洗濯物を畳む。それから夕飯に取り掛かった。自分1人だけの夕飯だから適当でいい。そう思いながら台所に立った。

しばらくするとチャイムが鳴る。こんな時間での訪問者に心当たりなど1人しかいなかった。
ドアスコープを覗けば、やはりと確信し、ドアを開けた。
「……やぁ」
「……」
その相手はレザラだった。毎週金曜日。レザラはヘクトールの部屋に来る。いつの間にか2人の決まりになっていた。
レザラを招き入れると、レザラは手に持っていたものを差し出す。
「母さんが、持っていきなって。今日は回鍋肉」
「いつもすまねえな」
レザラの母親から託されたものはタッパーに詰め込まれたたくさんの回鍋肉だった。とてもいい匂いがする。ちょうど料理を作ろうとしていたからその手間が省けて助かった。
「座って待ってろ」
ヘクトールは再び台所に立つと、汁物を作り始めた。レザラはリュックを下ろし、ソワソワしながら食卓で待つ。
出来上がったのはキャベツとナスと厚揚げの味噌汁だった。ヘクトールの料理は美味い。それを知ってるからこそ、腹をより空かせた。
ご飯もついで食卓を囲む。そして2人で食べ始めた。レザラはまず熱々の味噌汁に口をつける。出汁と味噌の加減が程よく食欲を沸かせる。
「これだけでご飯1杯いけそう」
「腹壊すなよ」
その後はただただ静かに食べ進める。レザラは耳をピコピコ動かしながら、ヘクトールはレザラの母の作ってくれた回鍋肉に舌鼓をうちながら。
食欲旺盛な男子高校生2人には少し物足りない量だが、それでも満足した。
レザラが皿を洗い、その間にヘクトールがシャワーを浴びる。これが決まったルーティンだった。
ヘクトールがシャワーからあがると今度はレザラがシャワーを浴びる。
これが始まったのはヘクトールがボクシング部を退部させられてからだった。一人暮らしをしているヘクトールの部屋に週末転がり込んで共に夜を過ごす。それを約半年ほど続けていた。
2人ともシャワーからあがるとテレビを見たり少し宿題に手をつける。そして夜が更けると布団を2つ並べて隣で寝るのだった。


──動く気配がした。布の擦れる音が聞こえる。
「ヘクトール、起きてるかい」
ヘクトールは閉じていた目を薄らと開けた。すぐ側にレザラの顔があった。至近距離まで寄っていたのだ。
「……」
ヘクトールは無言を貫く。だが返答せずとも起きているのはレザラも知っているようだった。
「……ヘクトール」
甘ったるい声で自分の名を囁く。泊まる日はいつもこうだった。
ヘクトール自身は嬉しい気持ちと悲しい気持ち、両方が混じり合う。
自分は親がいない一人暮らし、青春真っ盛りな男子高校生2人。幼馴染を超えた秘密の関係。
あまりにも都合が良すぎた。
「ヘクトール……」
「んだよ」
つい突っぱねた言い方をしてしまう。だがレザラはひるむことなくシャツの中に手を入れた。
手は指先で体をなぞり上に上がってくる。そして胸元までくると、胸筋を優しく揉む。
ハァハァと興奮が抑えきれないレザラの吐息が間近に聞こえてきた。
正直自分も期待しているのだ。情けないことに。
仮にも片思いを募らせている相手に欲情されれば興奮してしまうのも人間の性だ。
優しく胸を揉まれ、声が漏れ出そうになる。そしてその手を広げると指先に胸の突起が当たり、「んっ」と一際高い声を出してしまった。
そして感じるのは股間が主張していること。レザラもだいぶ興奮しているのか、ヘクトールの太ももに股間を擦り付けてくる。
「ヘクトール……」
ヘクトールは胸を触る手を静止しわ一度起き上がると電気を付けた。豆電球だけの暗い部屋が急に眩しくなり、2人とも思わず目を閉じる。
「……ヘクトール? 」
レザラは不思議そうな顔で見つめる。ヘクトールは布団の上で胡座をかくと、「脱げ」と呟いた。
レザラは一瞬呆然としていたが意味を理解すると、上下共々脱ぎ、全裸になる。
「ヘクトールは脱がないの? 」
そう問うレザラの顔は意地悪な笑みを浮かべていた。ヘクトールはしばらく黙るとおずおずと脱ぎ出し、彼もまた全裸になった。
するとレザラはヘクトールと向き合うように太ももに乗っかる。
「キミもこれが好きだね」
ふふっと笑うと「うるせぇ」と顔を真っ赤にしたヘクトールがそっぽを向きながらボヤいた。
対面座位という形になった2人はお互いすっかり立ち上がったものを握って、ゆっくり上下に扱く。
ヘクトールは恥ずかしいのか目を閉じていた。対するレザラは2人のそれを見ながら時折、興奮しているヘクトールの顔を見て、先走りを溢れさせた。2人して吐息を漏らしながら互いのものを扱きあう。ぐちゅぐちゅと愛液と混ざる音と互いの漏れ出た声だけを聞いていた。
意地悪がしたい、そうレザラの心をくすぐる。眉間にシワを寄せてレザラのものを扱くのに必死なヘクトールの顔を見つめた。
顔を近づけ、鼻を引っつける。すると目を閉じていたヘクトールが顔を上げ、こちらを向いた瞬間口付けた。逃がさないとばかりに反対の手でヘクトールの後頭部を押さえつける。
ヘクトールは驚きのあまりビクビクと自身を脈打たせ逃げようとするが、後頭部を固定されており後ろに引けない。ただ舌でくちびるをなぞられ、体を震わせた。
赤い瞳は逃がさないとばかりにじっと見つめる。人より少し鋭い犬歯で厚い唇に歯を立てると薄く開いた唇に舌をねじ込ませ絡め取る。
恋人がするような深い口付けにヘクトールは快楽で目眩がした。口と下半身からくる刺激と興奮に脳が溶けそうになった。んっと目を強く瞑り、ビクビクと震わせたヘクトールの自身から生温かな粘液がレザラの手にかかる。唇を離し、下を見ればヘクトールは達したようだった。
「……気持ちよかった? 」
そう問いかけるが、ヘクトールは羞恥からか顔を背けた。レザラはヘクトールの肩を軽く押し、押し倒す。上に乗れば、ヘクトールもこちらを見ていた。
「……レザラ」
「ん? なんだい? 」
レザラは自分のバッグの中を探る。だいぶ減ったローションと新しく買い直したゴムを探し当てると、慣れた手つきでヘクトールの足を開き、ローションを垂らした手を抵抗なくヘクトールの秘部に突っ込んだ。
「おま、えは……っ」
急に指を入れられ、びくっと震えるヘクトールを気にすることなく、解していく。
「キミさ、分かっててやってるよね」
「は? 」
レザラの言葉にヘクトールは間抜けな声を出す。なんの事だ?と頭の中で心当たりを探す。だが、見当もつかない。
「あのクッキー。なんでボクに渡したの」
「そっ、れはぁ……っ、うっ……! 」
指を2本に増やし、塊を押し上げる。するとヘクトールは体を仰け反らせる。レザラは容赦なく責め立てる。
「キミは嫌じゃないの? ボクにあのクッキー渡して」
「い、や……とは言え、ねえ、だろ……」
「悪いけど、ボクは食べなかったよ。ボクはキミの料理だけを食べたいんだけど」
「っ、あ、る……」
「へえ?なら後でちょうだいよ」
「うっあぁぁっ…! 」
どこか怒りの籠った声で責め立てられ、ヘクトールは先程達したばかりだと言うのにまた自身を膨張させる。尻を弄られ、喜ぶ体はレザラの指を締め付ける。
「ねえヘクトール、そろそろ気づいて欲しいな」
指を抜けば「んぉっ」と声を出し、息を整える。
先程準備したゴムを綺麗にはめる。そして、ローションを足して、「キミのこと、好きってさ」そう言うとレザラは容赦なくヘクトールの中に突き入れた。
「んぉぉっ! 」
欲していたものを中に入れられ、雄叫びに似た喘ぎ声を上げる。ゆっくりと引き抜くと今度はゆっくりと腰を振った。
「ねえヘクトール、キミもボクのこと好きだよね」
「あっ、うっ…んんっ」
「ずっと知ってたよ。キミがボクに向ける視線がとても熱いものだって」
ふふっと笑えば今度は腰を早く動かし、打ち付ける。その度に喘ぎ声が止まらず、胸を突き出すように仰け反る。
レザラはその胸に覆いかぶさり、快楽に任せて腰を振り続けた。
パンパンといやらしい音が部屋に響き渡る。周りの部屋は空室なため、そんな騒音問題にはならないだろう。ヘクトールも唇を噛みしめ声を我慢していたが、隙間から漏れ出る声がまたレザラを興奮させる。
鍛えられた筋肉が汗ばんできてレザラは喉を鳴らした。
ツンとたった胸の突起を見るなり、甘噛みすればさらに声を上げた。ヘクトールの腰を掴み、奥へ奥へと進む。根元まで飲み込んだ頃には、先っぽが硬いところまで来ていた。
胸の突起にがぷっと歯型をつけた後、チロチロと舐める。ヘクトールはそれも好きなのかもっと、と胸を突き出した。
(かわいい……)
いつもすました顔で教室の片隅で過ごす、見た目に反して大人しい彼が自分のちんこで犯され喘ぎ、いやらしい声を出しながらよがっている姿を知っているのが自分だけという優越感を感じていた。
(かわいい…ボクのヘクトール)
ちゅうちゅうと突起を吸い付きながら腰を激しく打ち付ける。
声を我慢できなくなったヘクトールの喘ぎ声に興奮しながら、共に果てた。


それから何回やっただろうか。ゴミ箱の中には精液が閉じ込められたゴムとティッシュで埋め尽くされていた。
青春真っ盛りの彼らは力尽きるまで致していた。
素っ裸の2人は布団もかけずにそのまま寝ていたらしく、朝の寒さに思わず目を覚ました。
くしゅん、とくしゃみ1つ。
「……おい、レザラ」
喉がガラガラのヘクトールがより低い声で名を呼び、睨みつけていた。
起きていたレザラは苦笑いを浮かべながら「ご、ごめん……」と平謝りをし布団をかけた。
「……順番逆だろうが」
「えっ、そっち? 」
ヘクトールの言葉にえっと驚く。がヘクトールは不機嫌そうにギロッと睨む。
「……遅せぇんだよ……」
「……ごめんって」
「てっきりセフレの枠かとおもったじゃねえか」
「えっ」
レザラはそんなつもりはなかったようで、本当にごめんと再び謝った。
「そんな事ない、ボクはずっとヘクトールのこと」
「……なら良かった……」
つり上がった眉はだんだんと下がっていく。今にも泣きそう、という顔で手で覆い隠し、誤魔化したヘクトールにレザラは「ごめん、本当にごめん。好き、大好きだよ」と必死に愛を告げた。
「俺もお前にクッキー渡したかなかった」
「……だよね、知ってる。でもキミは優しいから渡してくれたんだよね、ありがとう」
ヘクトールは自分の心を犠牲にする癖がある。それを知っているからこそレザラは守りたい気持ちに駆られる。
ぎゅっと抱きしめるとヘクトールも抱きしめ返した。
「表向きはお前に渡す」
「うん」
「だが……俺も正直いい気はしねえ」
「うん、知ってる」
「そん時は2人でこっそり食えばいい」
「ふふ、それもいいね」
食べ物に罪は無いしね、と笑った。
その後2人は抱き合いながら眠り、再び目を覚ました後、ヘクトールの作ったクッキーを美味しそうに食べるレザラの顔を見て幸せそうに微笑むヘクトールの姿があった。
book / home