※クルーザー級ストーリー後
※オリジナル闘士いるし、捏造しかない

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「今日!皆さんにお見せしたいものがありまス! 」
アルカディア闘士であるエレダイト族の男、マッド・コンパウンドが高笑いをしながらアルカディア闘士控え室に入ってくる。その声、姿を認知すると同時に控え室にいた闘士全員が顔をひきつらせる。
マッド・コンパウンド、その名の通り化学物質の調合を使って様々な技を見せるブレーン派の闘士だ。だが、その実験の様子は彼の不気味な笑い声と実験内容により子供に教育が悪いとクレームがくるほど親から不評である。
また同じ闘士からも彼の実験に巻き込まれたくない一心で彼を遠ざけている。
モルモット(実験台)になったら何をされるやら──……。

「見てくださイ! このワタクシの新発明品ヲ! 」
じゃじゃーんとばかりに取り出したのは白いボールだった。
「ボール……? 」
「効果は見てのお楽しみでス」
ふふふと気味の悪い笑みを浮かべると大きく振りかざし、それをレザラに向けて投げた。だがその投げられるスピードは速く、レザラを持ってしても逃げだせなかった。

ボンッ!!

「ゲッホ、ゲッホ……」
ボールが当たったという感触はなかった。どちらかと言うと、目の前で弾けたという感じだった。
白い煙が立ち込め、むせ込む。
だんだんと霧が晴れてくると同時に自分の名を呼ぶ声が聞こえた。
「レザラ!? レザラ!! 」
だがその声に聞き覚えがあったがすぐに思い出せなかった。立ち込める煙が晴れてくると、己の名を呼ぶ人物が現れ始める。
そこにいたのは小さな少年。その少年は子供用であろう剣を構えて震えていた。
レザラはその少年を見て目を見開いた。赤い髪にオッドアイの瞳。まさしく親友であるヘクトールが小さくなったような少年だった。
カタカタと体を震わせてこちらに剣を向けている。
「れ、レザラをどこにやった! 」
泣きそうな声で声を張る。この声はやっぱりヘクトールだ、と確信したレザラは「ボクもレザラだよ」となだめようとしたが「嘘だ!ぼ、お、俺の友達のレザラだよ! 」と強がってさらに声を張る。
参ったな……と頭を抱えていると、うぅっと泣き出してしまった。
「ヘクトール」
レザラは彼の名を呼び、しゃがみ込むと少年は泣き止んだ。「なんでぼくの名前……」とキョトンと見つめる。レザラは優しく微笑むとヘクトール少年の頭を優しく撫でた。
「ボクは害を加えるつもりは無い。だからその武器をしまってくれるかな? 」
そう言うとヘクトール少年は頷いておもちゃの剣をそっと床に置いた。
泣き止んだヘクトールを見るなりレザラは辺りを見回した。そこには見慣れた景色──遠い記憶にある景色が懐かしさを呼ぶ。
(ボクの部屋だ──……)
幼い頃、両親が出かけている間に一人寂しく過ごしていた部屋だ。あの頃より大きくなった為、天井が低く見える。部屋に置いてある物全てがかつて自分が所持していたものだった。
(一体どういうことだ……? )
マッド・コンパウンドにボールを投げられてから一瞬で景色が変わってしまった。
先程までアルカディアの闘士控え室にいたはず。
そして何故ヘクトールがいるのか、ましてや小さくなっているのか。
色々疑問が思い浮かぶが、レザラは目の前で落ち着かないヘクトールに似た少年を見ると、少年はずっと顔を背けている
──あぁ、幼い頃の彼にそっくりだ。
人見知りで気が弱いけれど、優しくて大好きなボクの大事な幼なじみ。手先が器用で、工作が得意だったな。
などと思いを馳せていると目の前の少年は熱い視線に耐えかねないのか顔を真っ赤にしてモジモジとしている。
「どうしてレザラいなくなって、お兄さんが……」
恐らく緊張と不安からだろう。その声は震えていた。目線を合わせたレザラは変わらず優しく頭を撫でた。
「ボクもレザラって名前なんだ」
「お兄さんも……? 」
驚いた少年はこちらを見る。そして視線を上下に動かす。
「何となくレザラに似てるかも……」
「ふふ、もしかしたらボクはタイムスリップしてきたかもしれない」
タイムスリップ?と首を傾げる少年にレザラは1つの結論を出した。実際は分からない。マッド・コンパウンドが投げたあのボールにそのような効果があるのか。
だが現状、記憶にある部屋と小さなかつての彼を見るなり、タイムスリップしてしまったと言うのが的確な気がした。
ヘクトールと呼んだらどうやら彼の名でもある反応を返されたことにより尚更確信した。
恐らく10年ほど前だろう。ヘクトールがレザラに向けたおもちゃの剣を持っていた時期がちょうどその頃だから。
さて、過去のボクは未来でどうなっているのだろうかと少し不安が襲った。
あの頃のレザラはヤンチャな少年だった為、暴れ回っているかもしれない。もし元の時間に戻ったらみんなに謝罪しないといけないかもしれないと思うと少し気が重くなった。
そんな風に色々考えているとヘクトール少年は「大人になったレザラ……? 」とどこか目を輝かせていた。そして「かっこいい」と小さな声を漏らした。
「キミも大人になったら十分にカッコよくなるよ」
そう言うとヘクトール少年は顔を真っ赤にして照れた。思わず笑みがこぼれる。
しかし大人のキミはボクより先に死んでしまうけれどね……などと口が裂けても言えるわけが無い。案の定「大人のぼ…俺はどんな風になってる? 」と尋ねられた。
まだ僕という癖が治りきらず、必死に俺と言い直していた頃が可愛くて好きだった。懸命に変わろうとするキミの努力が好きだった。だけれど寂しい気持ちもあった。
「大人のキミはね、ボクと共にリングで戦っているよ」
「り、リング……? 格闘技をしているの? 」
「あぁ。キミは努力して王者になる」
事実を告げればヘクトール少年はポカーンと口を開けて固まる。それがなんだか面白くてレザラは思わず笑ってしまった。
「な、なんで笑うんだよ……! 」
「いや、ごめんごめんあまりにも可愛くて」
可愛いという単語にヘクトール少年は顔を真っ赤にして眉間にシワを寄せる。
──そうやって拗ねた時の顔はそのままだね。
などと愛おしくて見つめた。しばらく目が合っていた2人のだが先に視線を逸らしたのはヘクトール少年だった。そしてもじもじしながらこう言った。
「……明日は俺の誕生日」
その言葉にレザラは言葉を詰まらせた。ふとカレンダーを見ると、確かにヘクトールの誕生日であった。
「……そう、だったね……」
「もし明日までに小さいレザラが戻ってこなかったら祝ってくれるか? 」
「あぁ、もちろん! 大親友のキミの為ならプレゼントだって買ってくるよ」
そう言うとヘクトール少年は顔を明るくし、喜んだ。だが、レザラは誤魔化していた。
未来の、自分の世界のヘクトールは死んだ。
それがついこの間の出来事だった。
その事からまだ完全に立ち直れていなかったと言うのに、急に過去に戻ったらヘクトールの誕生日だなんて、皮肉な話である。
「……キミは何が欲しい? 」
レザラは問いかける。ヘクトール少年はしばらく考える。うーんと唸りながら長い時間考えていた。
「……約束、してほしい」
「約束……? 」
「ずっと俺の親友でいてほしい」
レザラは泣きそうな顔でヘクトール少年を強く抱き締めた。その力強さにヘクトール少年は「苦しい」と絞り出した声で訴えた。
「あぁ……!あぁ! もちろんだとも! キミとはずっと親友でいるさ! 」
震えた声で、今にも泣きそうな声で言われ、ヘクトール少年は少し緩められたがそれでも強く抱きしめる腕が震えていることに気付いた。だが、腕をそっと抜くと何も言わず自分よりも大きな背中優しく抱きしめ返した。
「……レザラ」
「なんだい」
一通り抱き締めたレザラはようやくヘクトール少年を離し、顔を合わせる。
「未来の俺は幸せかな」
不安そうな顔で、問いかける純粋な疑問にレザラは微笑み、こう答えた。
「本人から聞いたことはないけれど、ボクとキミと2人で楽しいことも辛いことも困難も乗り越えてきた。2人一緒なら平気だからきっと幸せと答えてくれるはずだよ」と。
それを聞いたヘクトール少年は「そっか」と嬉しそうに笑った。
そしてレザラはずっと秘めていた気持ちを言葉にする。
「ボクはキミのことをずっと──……」
その瞬間、光に包まれ、ヘクトール少年が目の前から消えた。
そしてその光は闇に包まれ、レザラは気を失った。

















「あ、目が覚めた」
「おはようハウリングブレード」
クリアになった視界に覗き込む数人の顔を認知すれば、どうやら元の世界に戻っていたようだった。
起き上がると頬を雫が伝ってぽとっと床に落ちた。
「もうあのおばかしゃんは出禁にちたほうがいいでちゅ! 」
「まあそれはそうだな〜」
とシュガーライオットとダンシング・グリーン。
「それにしてもあんたの小さい頃って可愛げあったんだな」
「ね! 意外と素直だったよね〜」
とヤーナとハニー・B・ラブリーが言う。
どうやら小さい頃のレザラと入れ替わっていたようだった。
「すまない……小さい頃のボクが何か変なことしてなかったか? 」
その場にいた全員が首を振った。
「まあ今日は解散ってことで」とヤーナが言うと、皆散り散りになった。
随分とあっさりしているなと苦笑を浮かべた。

レザラもアルカディア闘技場から出ると、空を見上げた。
「……ヘクトール」
と小さく名を呟けば風が吹き抜けた。


一方、ヘクトール少年の目の前に戻ってきた小さなレザラ少年は大号泣していた。
「れ、レザラ!? 」
どうした、と慰めるが一向に泣き止まない。ましてやヘクトール少年に抱きついてワンワン泣いていた。
「ヘクトール!! ヘクトール!! 」
うわーーんと泣き止まない親友にオロオロしながらずっと抱きしめていた。


「ヘクトール……」

「へくとーるぅぅぅ」




((キミがいない世界なんて嫌だよ))
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