※ハニー・B×光♀のifルート


「やっぱやめよう」
その一言に男、ダンシング・グリーンは固まった。
ダンシング・グリーンは生身の挑戦者ことノアといい雰囲気になり、そのままベッドへ誘導しノアの服に手をかけたところだった。
「……それ何回目だ? 」
「ごめん」
「いや、別にアンタを責めてるわけじゃねえけどさ……」
ダンシング・グリーンは大きくため息をついた。だがノアは本当に申し訳なさそうに俯く。
別にノアが悪い訳じゃないが、何が原因でキス以上に進めないのかが謎で仕方なかった。
最初のうちは怖いからだと思っていた。しかしいい雰囲気になりキスをした後に止められて恐らく5回目。
性欲が強いダンシング・グリーンにとって生殺しをさせられている。だが、そろそろ限界だった。
「……ノア」
「ごめん……」
「何が怖いんだ」
「怖いっていうか……恥ずかしいっていうか……」
「何も恥じる必要ねえだろ。オレの前でスポットライト浴び損ねて転んだあの日──……」
「それとこれとは別でしょ! 」
もうっと睨みつけるその顔すら可愛かった。
ヘイザ・アロ族と同じ猫耳としっぽを持つノア。だが、黒目の大きさが違う。クリクリとした大きい目は彼女の可愛らしさの魅力の1つでもある。
塀の外ではヘイザアロ族はミコッテ、またヘイザ・アロ族のように黒目が細いのを「サンシーカー」、ノアのように黒目が大きいのを「ムーンキーパー」と呼ぶらしい。その黒目を囲む薄い水色の瞳がダンシング・グリーンは好きだった。
彼女は現クルーザー級王者になった。また過去にダンシング・グリーンとも戦っている。その際、スポットライトを浴びれずすってんころりんとばかりに転んだ可愛らしい彼女の姿を思い出しては思わず笑みがこぼれ落ちる。
そんな彼女を手に入れて早数ヶ月、彼女の身体をなかなか拝めない。
ダンシング・グリーンは拗ねた彼女を宥めるように白く透き通った髪を撫でる。
「恥ずかしいも何も、オレたちは恋人だろ? 隠し事は無しって話したし」
「で、でも……」
「ノア、でもじゃねえよ。言いたいことあんなら言えよ。オレは何言われても気にしねえし、受け止めてやっからさ」
そう言うとノアはじっと上目遣いで見つめる。
「本当に? 」
「男に二言は無えよ」
「幻滅しない……? 」
「あぁ、もちろん。どんなアンタだって好きだ」
そう言って触れるだけの口付けを交わす。
それなら、と渋々頷くと背を向けた。そして、モゾモゾとボタンを外している。
「お? 」とどこか期待しているダンシング・グリーンだったが、彼女がシャツを下ろして見せたものは想像とは違うものだった。

ブラで一部隠されているが、背中をぱっくりと裂かれたような大きな古傷があった。

思わず呼吸を忘れ、目を丸くする。彼女の左腕は子供の頃に無くし、現在は機械による義肢とは聞いていた。
言葉を無くし黙り込むダンシング・グリーンをチラリと見ると、「幻滅したでしょ」と力無く笑った。
またシャツで傷を隠そうとするのを咄嗟に抱きしめて阻止した。
ぎゅっと力強く抱きしめられ、息苦しくなる。
「ちょっと……」と苦しいことを訴えれば少しだけ力が弱まる。そして肩に口を寄せられ、「アンタはカッコイイよ」と呟いた。
「へ」と思わず声が裏返る。まさかそんな言葉を言われるとは思っていなかった。
ダンシング・グリーンはノアを抱きしめたまま「アンタは綺麗だ」と更に言う。ノアは「どこが」と呟けば「身体だけじゃねえよ。アンタのその誰かを守るその姿に惚れたんだ」
「……守りたい人がいたのに」
ノアは泣きそうな声で話し出した。
「それなのに、守れなくて。私がいながら救えなかった命がたくさんあった……」
それを静かにダンシング・グリーンは聞いている。
「だから弓を、杖を置いて剣を握ったの」
抱きしめる腕にそっと手を添える。そして震える手で優しく握った。
「私が犠牲になれば、救えた命もあったのかな……って、考えたこともあったけれど、待ってる人達がたくさんいたら生きることを諦めきれなくて」
ぽたぽたと雫がこぼれ落ちる。
「どんなにボロボロになって、可愛くない、綺麗じゃない体になっても、それでも、誰かを守れるならって……」
「アンタはすげえよ」
ノアの肩に擦り寄る。鼻をすすり静かに泣くノアが落ち着くまでただ抱きしめていた。
ようやく泣き止んだノアはダンシング・グリーンの方に向き直す。
「ごめんね」
そう言った彼女は肩の荷が降りたようにスッキリした顔だった。
「最初にも言ったが、アンタが好きだ。その真っ直ぐな瞳と心が特にな。たくさん苦労してきたのは分かった。だからこそアンタを愛してえし、幸せにしてえんだ」
「……全部受け止めるよ」
ふふっと笑ったノアは抱きついた。
「優しくしてね」
その言葉に顔を真っ赤にするダンシング・グリーンであった。
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