2人ともほぼ全裸であり、昨晩お楽しみであったのであろうことが分かる。
マイトは無防備な顔で眠るヘクトールを見ると思わず笑みがこぼれた。
いつもセットしてあげられた前髪は無造作に散らばっている。普段見られない姿を拝めるのは自分だけなんだと自覚するとくすぐったくも幸せを感じた。
布団がめくれてはだけているヘクトールを見れば風邪をひかないようにと布団をかけ直す。
マイトはそっと起きようとしたが手を捕まれ引っ張られた。
「おわっ!? 」
思わずバランスを崩し、そのままヘクトールの上に倒れ上半身に体重をかける。
「どこ行くんだ」
うっすらと見える黄色と赤のオッドアイはこちらを見ていた。
「……どこにも行かないよ」
疑いの目を向けられ、「でもトイレにいきたいなぁ」と言えばあっさりと開放された。
数分後、トイレを済ませたマイトは再びベッドに潜る。
そして、ヘクトールの厚い胸板に擦り寄ると自然と背中に腕をまわされ、抱き込まれた。
「ヘクトール」
「ん」
「もう1回しよ」
そう言うと「バカ言うな」と断られた。だが口ばかりで手は出さない。そういう優しいところがマイトは好きだった。
「なぁ、ヘクトールは、レザラのこと好きだったか」
急なその疑問にヘクトールは固まる。そしてしばらく黙り込んだのをマイトは笑って「ごめん、気になったからさ」と言う。
「……少なからずそういう気持ちはあったかもしんねえ」
「俺にレザラを重ねてることは? 」
「それはねえよ、断じて」
「良かった」
その言葉を聞けて安心したマイトはヘクトールの胸を揉む。たくましい筋肉は柔らかく、女性ほどではないが揉み心地がいい。
「……俺は、あんたを幸せにしてえんだ」
「ずっと前からそれ言ってるよな……」
ちらりと見たヘクトールの視線の先はマイトの黒い髪がだんだんと色が抜けて白くなっていることに気付いていた。根元から綺麗な銀色に染まっていく。今はだいぶ侵食され、ツートンカラーになっている。
「なんか、もう1人の自分がいるみたいで、そいつがあんたの幸せを強く願ってるんだ」
「……二重人格ってやつか? 」
自分の中のもう1人と言われてしまえ二重人格だろうと考えたが、どうやら違うようで、「まるで1つの体にもう1つの魂がある見てえな感じ」
そう説明すると「気持ち悪そうだな」と顔を引き攣らせる。そもそも魔物の魂を取り込んでいた人間が言えた発言ではないが。
「あんたはずっとかっこいい」
「んだよ、急に……」
「俺なんかより逞しくて、強くて、だけど涙脆くてリングに立つ姿は悪役を演じきっていて、それでもって本当はすごく優しい」
「……るせえよ」
「まるで前世出会ったようにあんたに惹かれたんだ」
マイトはヘクトールに抱きつき、擦り寄る。まるで猫のように。
「……」
あまりに褒め言葉とデレ発言を連発するマイトに言い返したい気持ちはあったが恥ずかしくて声が出ず黙り込んだ。だがマイトは気にせず続ける。
「もしアイツを選んで俺はそれでいいと思った。それでヘクトールが幸せになれるならって。でもさ……俺はどうやら自分が思っている以上に独占欲が強いみたいで、ヘクトールの気持ちが揺らいだらすげえ悲しいんだなって」
「……」
「……俺ばっかごめん」
胸に顔を埋める。正直泣きそうかも、と涙を必死に堪える。すると小さくため息をついたヘクトールが「マイト」と名を呼ぶ。
「どうし……」
顔を上げると口を塞がれた。キス自体は短かったが、急な出来事にマイトはびっくりして固まる。
「……俺も好きだ」
そう言うとマイトを離して背を向けてしまった。
しばらくフリーズしていたマイトは状況を読み込むと顔を真っ赤にして「ヘクトール!? 」と体を揺さぶる。
「待ってヘクトール、今のどういうことだ!? 」
「うるせえ寝ろ!! 」
顔を枕で半分隠しているが耳まで真っ赤なヘクトールにニヤけが止まらないマイトであった。