「随分暑いね! 」
船から降りたエレゼン族の男性、ステファニヴィアンは照り返す太陽の眩しさに目を手で覆う。
一方、同乗者である光の戦士であるココはどこかぎこちない動きで船から降りた。
彼はいつもの服ではなく、蒸し暑いトライヨラに合わせシャツに半パン、サンダル、サングラスもかけているいかにもバカンスにきたとばかりのその姿は新鮮なものだった。
「ココ? 」
振り向き、なかなか来ないココの心配をする。いつもの癖でステファニヴィアンの荷物も真っ先に下ろそうとしている姿に彼はひょいと荷物を2人分持ち上げた。
「たまには羽休めしないと」
そう言って空いた左手をココに差し出した。
手持ち無沙汰になってしまったココはステファニヴィアンの顔と手を交互に見るとそっと差し出された手に一回りも小さい白い手を重ねればぎゅっと握られた。
そして「街の案内してくれるかな」と声をかければ顔を真っ赤にしながら頷いた。

2人はトライヨラへ旅行に来た。きっかけは数日前のこと──。
「ボンもたまにはココ嬢と旅行でも行ってきたらどうすか」
「へっ」
本当に不意の言葉にステファニヴィアンも呆気にとられる。同じく機工房の方で手伝いをしていたココも立ち止まる。
「だいぶ落ち着いてきましたし、1日2日くらい工房開けても問題ないっしょ」
「いやでも何かあった時どうするんだ」
ステファニヴィアンはもしもの時のことを懸念して提案を却下する。ココも内心残念に思っていたが、ステファニヴィアンの意思を尊重したいため、彼の方に同意する。
しかし彼らが付き合って3ヶ月経つというのに、何も発展しないことに工房員全員が落ち着かなかったのだ。
スカイスチール機工房の工房長でありながら四大名家の息子であるボン──ステファニヴィアンは自分の夢の為に努力は惜しまず、時には睡眠すら惜しまない人間だ。対してココもそんな彼の支えになりたいと言い、遠い地で王位継承レースのサポーターとして参戦し、その後も色々あったというのに、変わらず工房の手伝いに来ている。
デートらしいデートを見たことがない。というか
本当に付き合っているのかすら怪しく思えるほど前と何も変わらないのだ。
「なんつうか、たまには暑いとことか行ったらどうです?バカンスとか」
「な、ココ嬢もボンと旅行したいだろ」
「あっ、えっと……」
「ココ」
急に話題を振られ、しどろもどろになるココにステファニヴィアンは優しく声をかけた。
「君の本心が聞きたい。いつも俺に合わせてくれてるだろう? 」
「……い、行きたいです……」
湯気が出そうなほど顔を真っ赤にしてそう答えたココの頭を優しく撫でる。
「今週は無理だから来週行こう。そうだ、トライヨラというところが俺は気になるね。俺の計測器の針がビンビン反応してるよ」
「も、もちろん行きます! 予定はいつでも合わせられます」
じゃあ決まりだねと頷けば背後でガッツポーズする男たちが数名とにこやかに微笑むジョイの姿があった。

そんなこともあり、トライヨラに旅行へ来ることになった2人。真っ先に向かったのは宿の方だった。
手を繋ぎ、歩いて向かった先は「フォルアード・キャビンズ」、宿屋だ。
受付嬢であるペシェカはココに気が付くと「お帰りなさいませ」と歓迎ムードで挨拶をする。彼女はステファニヴィアンの姿を見るなり「お隣のお方は? 」と尋ねてくる。ココが恋人ですとなかなか言い出せずに「えっと……」ともごもごしていると「彼女の恋人です」とさわやかに答えた。
「あらまあ! 」とペシェカは嬉しそうに笑いかける。一方、ココは真っ赤になり、すっかり黙り込んでしまった。
「2人部屋も今日は空いておりますので、そちらに案内いたしますね」
と、部屋番号の鍵を渡してくる。それを受け取ったステファニヴィアンは横を見るなり苦笑しながら「行こう」とカチコチになってしまったココを連れて案内された部屋に向かうのであった。

雲ひとつ無い青空と日差しが反射する海が見えるこの宿屋は窓がなく、とても開放的だった。潮風が吹き抜けて心地いい。部屋一つ一つの間隔が広いため、騒音問題になることはないだろう。
部屋にたどり着くと荷物を下ろし、テラスに向かい海を眺めた。ココは困った様子でとりあえず椅子に腰掛ける。
まるで彼氏の部屋に来たかのように縮こまっていた。
「ココ、おいで」
ステファニヴィアンは優しく呼びかける。もちろん反応したココは隣に向かう。そして隣に立つと急に抱きしめられた。
「こ、工ぼ……」
「名前で呼んで欲しいかな」
「ステファニヴィアン……さん……」
うん、と返ってくる。戸惑いながら大きな背中にそっと腕をまわした。ドクドクと脈打つ心臓の音が聞こえてしまわないか不安で仕方なかった。
しばらくすると抱き合った身体が離れる。名残惜しそうに眉を下げるとステファニヴィアンはココの前髪を上げて額にキスをする。
「2泊3日も休みを貰ったんだ、そんな悲しい顔はしないでほしいな」
「あっ、そ、そんなつもりは……! 」
「ココ、君はもう少しワガママになっていい。というか、もっとワガママになってくれ」
「これが私の性格なので……」
「そうだね、君はそういう子だ」
そう言って優しく頭を撫でる。何度もこうやって頭を撫でられてきた。自分よりも大きく、ゴツゴツしたその手で触れられることが何よりも嬉しかった。
気が強く、敵と認識すれば歯向かう勇気と潔さはあるが、ステファニヴィアンの前ではすっかりお淑やかで恋する乙女になってしまう。ステファニヴィアンに一目惚れしたあの日から少しでもいい子でいようと思っていた。
どんなに疲れていても好きな人の役に立ちたい。そんな献身的な態度にステファニヴィアンは嬉しさよりも心配の方が大きかった。だからこそ、あの時提案されて良かったと振り返る。
ココは自分の頭を撫でるその手を目を瞑ってじっと受け入れていた。その顔から幸せが滲み出ていた。
「せっかくだから海に行こう。ココも水着に着替えておいで」
「えっ、あっ、ちょっ」
俺は先にその辺歩いてるからと部屋から出ていってしまった。一人残されたココは空を掴んだ手を下ろした。
確かにせっかくバカンスに来たのだから海を楽しまないと……と考えつつ自分の荷物の中にある水着を思い出しながら困惑の顔を浮かべた。


「海に行くなら絶対ラッシュガードはないからね! 」
一昨日、トライヨラに二人で旅をすることをアリゼーとヤ・シュトラに相談した。二人は良かったじゃん、と喜んでくれたが浮かない顔のココの悩み、それはどんな水着にすればいいのかというものであり、真っ先にアリゼーはそう言ったのだった。
「私と同じタイプでいいんじゃないかしら」
「いいえ!好きな人相手ならもっと肌を出していいと思うわ! 」
ヤ・シュトラが上着付きの水着を提案するが、アリゼーがビキニだけでいい、と提案する。
「守ってあげたくなる女の子を演じればいいのよ」
「……………?? 」
アリゼーのドヤ顔に対し、ヤ・シュトラは「守ってあげたくなる……? 」といつも強気で先陣を切るココを思い出しながら首を傾げた。
「でもセクシーさを忘れちゃいけないわ。ココの肌はとても白いから黒いビキニも似合いそうね」
「だけど、白い方も私はいいと思うの」
確かに……と腕を組んで悩むアリゼーとヤ・シュトラ。ココはどっちでもいいと思う……と曖昧な返事をしたのだ。
「ココはどっちがいいの? 」
「えっ」
「とりあえず色だけでも決めましょ」
「えっ、えっと……」
やいのやいの話してる内に決まったのが結局カバンの中に入っている水着である。ココはそれを手に取り、嫌われないか不安になりながら仕方なく着替えることにした。

一方待ってるステファニヴィアンは近くの浜辺で海を眺めていた。賑やかなトライヨラの浜辺にはちらほら人がいる。見慣れないマムージャ族やロスガル……こちらではシュバラール族もいる。物珍しい物に好奇心が止まらないステファニヴィアンは彼らを観察していた。
(本当にいろんな種族がいるんだな……)
ココから話は聞いていた。だが自分が思っている以上の収穫があった。
閉鎖的なイシュガルドに比べて、ここは開放的だった。種族も血も関係ない、その思考を持ち続けるステファニヴィアンにとって憧れでもあった。
「お待たせしました」
背後から声をかけられ、期待を胸に振り向くと、目を見開いた。
そこに確かにココがいた。だが、その水着姿に驚いたのだ。
ホワイトパールのビキニだった。
ステファニヴィアンはてっきりパレオや上着を着てくる、そう思っていたのだ。
だが現実はビキニそのままだった。肌の露出が大きく、白い肌が日に当たって綺麗だった。
ここまで思考3秒。ステファニヴィアンは自分が着ていた上着を脱ぐとそっとココに着せる。
「えっ」
「ココ、あまり露出すると陽に焼けてしまうよ」
さぁこれ着てと自分の着ていた上着に袖を通させた。体格差もありだいぶブカブカであるが、ステファニヴィアンは内なる黒いモヤを見せない努力をした。
「似合いませんよね……」
上着を着させられ、落ち込んだ様子のココに「違うよ」と即否定する。その真剣な表情にココは見つめる。視線がかち合うと、ステファニヴィアンは視線をそらして何か言いたげに口を抑える。
「似合ってる……ただ……」
「ただ? 」
「……あまり他の男に見られるのが……な」
その言葉を理解するのに時間を要したが、理解すると同時に顔を真っ赤にする。
「えっ、えっ」
「醜い嫉妬だ、気にしないでくれ」
顔を背けたステファニヴィアンの耳は真っ赤に染まっていた。
嫉妬という感情にココは嬉しくなりながらも恥ずかしさが勝り、顔を真っ赤にして手で覆った。
そんなやり取りがされている間にステファニヴィアンに遠くから女性たちが釘付けになっていることも知らなかった程に二人だけの世界に入っていた。

落ち着いた二人はシャバーブチェに立ち寄り昼飯を食べる。もちろん名物のタコスを注文した。
届いたタコスにかぶりつく。
「うん!美味い! 」
「良かったです」
初めて食べるものにステファニヴィアンは喜んだ。その様子にココも笑顔がこぼれる。
「ココも遠慮なく食べてくれ、やっぱり食べないとスタミナつかないからね! 」
「私はいつも食べてます! 」
「ココがいっぱい食べる姿が好きなんだ」
その発言に顔を真っ赤にする。好きと言われたことに対してもだが、食い意地を張ってると思われていることが何とも恥ずかしかった。気にする事はないさ、と笑い飛ばす。
昼食を終えた二人はマーケットの方へ向かう。人混み賑わうマーケットを手を繋いで歩くが未だに慣れないココは頬を赤く染めている。
「賑やかでいいね。このくらい賑やかな方が俺は好きだな」
「私もトライヨラの雰囲気が好きで……」
「あれ、ココ? 」
名を呼ばれ、振り向く。そこに見慣れた姿があった。
「やっぱココじゃねえか! 」
「ラマチ! 」
武王ウクラマトだった。傍にもちろん理王コーナもいる。二人はこちらに近付いてくる。
「久々だな〜……って隣のやつは? 」
「えっと……」
「初めまして、俺はステファニヴィアン。ココの恋人ってとこだ」
「まじか! 話に聞いてたがお前の事だったんだな! 」
「アタシは武王ウクラマト。こっちは理王のコーナ兄さん」
「まさか王様方だったとは……これは失礼しました」
「いやいやそんな堅苦しいのはやめてくれよ。アタシらもココには世話になったし、その恩人の恋人ってなら」
「ココ……?大丈夫ですか? 」
「あー……」
すっかりゆでダコになったココを心配するコーナと苦笑いするステファニヴィアン。そして、「何だよ随分しおらしくなっちまって。いつもならこう……」
「ラマチ、ストップ! 」
湯気を出しながら黙り込んでいたココは大声を出して「ごめん! 」と一言謝り、ステファニヴィアンの手を離してどこかへ行ってしまった。
「あ、おい! 」
「……また今度ゆっくり話そう。俺はココが心配だ」
そう言うとステファニヴィアンは駆け出していった。
その二人の背中を見送ったウクラマトは「アタシ変なこと言っちまったか……? 」とだいぶ落ち込んでいた。だがコーナは「いえ、ラマチに失言はなかったと思います」と慰めたのであった。

逃げ出したココはというと、ゴーニトルクの宝浜方面へ引き返していた。そして岩陰に隠れ座り込む。息を整えれば、大きく深いため息をついた。
そして、自分が情けなく涙がこぼれ落ちてきた。
ぽたぽたと落ちる雫は海面に混じる。
憧れで大好きな人と恋人関係になれたことが何よりも嬉しかった。だけど恋人関係という名前に緊張してしまう。ステファニヴィアンは嬉々として恋人関係であることを明かしてくれた。それが、恥ずかしくも嬉しかった。
だからこそ、ステファニヴィアンの前ではせめて可愛い女でいたかった。ウクラマトの口から本当の自分を暴かれる気がしてならなかった。
今は機工士であるが、元はといえば戦士である。
(機工房を訪れた時はたまたま詩人であったが)
可愛い女とは逆のイメージである戦士がココの本当のジョブの姿である。
「どうしよう……」
幻滅された時が怖くて仕方ない。嫌われたくない。ただそれだけを恐れていた。
「お姉さんどうしたの」
「えっ」
突然背後から聞こえた声に振り向いた。そこには濃く焼けた肌の青年が立っていた。誤魔化すように目を擦ると、青年は心配そうに見つめてくる。
「何か無くし物ですか」
「……いえ、大丈夫です」
「立てますか」
青年は手を差し伸べた。そしてその手を取り立ち上がる。泣いていたのがバレたのか青年は「辛いことがあったんですか」と問いかけてくる。
「喧嘩……じゃないですけど、私が悪いんですけど……」
「とりあえずあちらに行きませんか。飲み物奢りますよ」
そう言うと青年はココの手を引いていく。
「あっ、ちょっ……」
「おい」
ドスの聞いた低い声にココはビクッと体を震わせた。そして顔を真っ青にする。
目の前にはステファニヴィアンが不機嫌を顕にして仁王立ちしていた。思わず顔を伏せてしまった。悪いことをしていないのに悪いことをしてしまった気分だった。思わず足が震える。
ステファニヴィアンはココには目もくれず、青年の方を見続けた。
「その手を離せ」
すると青年はあっさり手を離した。ココは離れたその手を自分の胸の前に持っていく。
「お兄さんが彼女の連れですか」
「あぁそうだが」
「ダメですよ、彼女泣いてましたよ」
ステファニヴィアンはココの方を思わず見た。俯いているが、身体が震えている。
「ココ……」
「俺はそんなナンパする趣味はないので誤解しないでくださいね」
それじゃと、軽く手を振りその場を立ち去ってしまった。
あっさりと身を引いた事に驚きつつもステファニヴィアンはココに近づく。
「ごめんなさい……」
そう何度も呟いて涙を零していた。思わず胸が締め付けられた。拳を握るとその手を緩めてはそっと手を出した。
「怒ってないよ」
「ごめんなさい……」
「ココ」
「……」
「宿に戻ろう。ゆっくり話がしたい」
ココの頭を撫でれば一瞬ビクッと震えたが、あっさりと手を引かれていた。そのまま宿の方へ向かった。

部屋に入るとすぐに抱きしめた。鼻をすすり泣いているココをあやす様に何も言わず抱きしめ続ける。
だが、ずっと泣いているので、ステファニヴィアンの方から口を開いた。
「ココはなんで泣いてるのかい」
「……嫌われ、たくなくて」
「ん? どこに嫌う要素があるんだい」
「ラマチが……」
「うん」
「ラマチが、普段の私の事話そうとしたので……」
「普段のこと? 」と問いかけ、ベッドに連れていく。そして座らせ隣に腰掛ける。やっと顔を上げたココに微笑むと前髪をあげてキスを落とす。そして目尻と頬にもキスをした。
「ココは普段と俺の前では何か違うのか? 」
「そ、それは……っ」
「ココも知ってるよね、ジョイのこと」
「へ? 」
いきなり知った名前が出されて抜けた声が出てくる。拍子抜けし、涙が止まった。それを見るとやっと泣き止んだと一言呟くと続ける。
「ジョイとはそれなりに付き合いが長いんだよね。彼女がまだ小さい頃からウチで働いてるのは知ってると思うけど。俺が工房に篭もり始めた頃さ、ジョイも機工士に志願してくれたあの日。お淑やかで控えめなジョイが急に人が変わってさ、俺情けないけど腰抜けちゃったよね」
クスクスと笑いながら語る。一方ココはポカーンと理解が追いつかない顔でステファニヴィアンの顔を見ながら聞いていた。
「あの時ほどびっくりしたことは無いし、彼女は彼女だからさ、どっちも本当のジョイだと思ってる。だから……もし、ココが俺に見せてる自分と普段の自分が違うのなら、それはそれで俺は知りたいし、そう簡単に嫌いになることはないって話さ」
「あ、ありがとうございます……」
そういう事か、と理解すると思わず胸板に頭を寄せた。
「ココは俺の知らないところで、活躍しているからね……。俺は、しばらく来なかった日がすごく不安で、寂しかったよ」
「あの時はごめんなさい……」
「いいや、気付けなかった俺が悪い。君の覚悟は生半可なものじゃないってさ」
「ジョイさんに言われて私も気付けたことがあったんです……ステファニヴィアンさんは私のことを心配してくれているって。だからこそ、迷惑をかけてしまうんじゃないかって」
「もちろん、そうだけど……。だからって情けないね、今となると本当に情けない男だと思うよ、せっかくのアプローチを流してしまっていたんだから」
ココの頭を優しく撫でれば腰に手を回して抱きつかれる。
「恋人っていう関係の名前にそろそろ慣れないとですね……」
「あ、やっぱり恥ずかしかったんだ」
ケタケタと笑うステファニヴィアンにココは拗ねたように頬を膨らませた。ごめんごめんと謝れば、「俺さ」と話し出す。
「めちゃくちゃ嫉妬してる」
「えっ」
思わず顔を上げてしまった。その瞬間、ステファニヴィアンの顔が近付き、唇に柔らかな感触を覚える。
リップ音と共に離れ、見えた深緑色のアイシャドウと彼の水色の瞳と目が合った。
「ココの水着姿なんて見せたくないし、触れられることすら苛立ったよ」
「こ、ぼ……」
「本当はね、今すぐ押し倒して肌なんか出せないくらいにキスマークつけて、それから俺のものって分からせたいって思ってる」
細めた目は真剣なものだった。その綺麗な瞳から目が離せなかった。理解するとまた赤くなったが、そっぽを向いて「してください」と呟いた。
「えっ」
「……私は、ずっとそうされるのを考えてました……」
「っ……ココ」
「私ずっと……ステファニヴィアンさんに押し倒される妄想ばかりしてました……はしたないですよね、すみません」
「ココ」
名を呼ぶと同時に視界がぐるりと歪む。そしてベッドに押し倒されたのだとすぐに理解した。天井をバックにステファニヴィアンが見下ろしてくる。
「嫌なら殴っていい」
「……そんなことする訳ありません」
ふふっと笑うと首に腕を回して自ら口付けたのであった。

水着姿であったため、容易に脱がされてしまった。ココはあぁ言ったものの、いざそういう雰囲気になると羞恥から「やっぱり」と拒否しようとしたが、我慢が出来ないステファニヴィアンからその手を捕まれてしまった。
「もう逃げないでくれ」
唇を首筋に寄せて軽く触れる。くすぐったさから身を捩る。
「ココ、ちゃんと日焼け止め塗ったかい? 」
「えっ……一応塗りましたけど……」
「少し焼けてる」
白い肌が勿体ない、と指先で体をなぞった。触れるその指ですら興奮するというのに、それ以上のことをされてしまってはどうなるのか、などとぐるぐると頭の中がまわる。
「綺麗だね」
「うっ……」
「そこまで緊張しなくていいさ」
ココの小ぶりの胸に吸い付く。反対の手でも揉みしだく。触られ感じるのか声が漏れ出そうになるのを手の甲で抑える。
「私、胸小さいのでっ……」
「別に俺大きいのが好きとか無いからね」
結局感度だよ、と音を立てて吸い付いた。チラリと見たその姿に思わず愛しさが膨れ上がり、恐る恐る後頭部に頭をまわして、撫でる。
「ステファニヴィアンさん……っ」
「ん? 」
「わ、私も……」
言葉を詰まらせるが、催促することなく待つ。そしてやっと言葉を口にした。
「わ、私も御奉仕……したいです」
「してくれるの? 」
それは嬉しいなぁとにこやかに笑うとココの上から離れる。膝立ちになったあと、ココも上半身を起こすと、ギョッと目を丸くする。
ステファニヴィアンの膨張した息子のサイズがあまりにもでかくて顔を青ざめさせる。だが、言い出したのも自分だ。引く訳にはいかない。
「し、失礼します……」
「無理はしなくていいからね」
恐る恐るそれに顔を近づける。そして口を開いて先っぽを咥える。苦い味が鼻を通り抜ける。
ココは察した。
(これが入るの……?死ぬ……? )
口に咥えるのもやっとだと言うのに、その先を想像したら恐ろしかった。だが、下半身は疼いている。きゅうっと締め付けられる感覚に、ココは「それでも」と考え、必死に舐める。
「上手」
変わらず優しい言葉で優しく撫でてくれる。それが何よりも嬉しくてたまらない。たまに息を詰まらせているのか、漏れ出る声に下半身がじわりと濡れた。
「んっ、ふっ……」
ココは必死に頭を動かした。太く長いそれを奥まで咥えることは難しいが、少しでも感じて欲しいと必死の思いだった。ステファニヴィアンも分かってか、何も追求せず、されるがまま、感じるままにココを見つめる。ビクビクと口の中で動く度に先っぽを吸えばより声が漏れ出る。
「ココ……もういい……」
「んっ、ふっ」
「ココっ……で、るから」
「らひへくらはい」
「いや、さすがに君にっ……」
口から離そうとするが意外にも強情であり、決して負けじと吸い付いている。限界も近いステファニヴィアンは「うっ」と小さく声を漏らした。
ドクドクと脈打ちながら口の中に出されたたっぷりの粘液にココは思わずこぼしてしまった。
「んぐっ」
「ココ、出せ」
ようやく口から離れたと思えばココは口を手で塞いでいた。慌ててティッシュを渡すが首を振る。
「ココ、いいから」
「んー! 」
「そんなもん飲まなくていいから」
涙目になっているココを説得し、何とか口から精液をティッシュに吐き出させることに成功した。
「俺飲んで欲しいとか全く思ってないから……」
「うっ……」
「十二分に気持ちよかったからさ、機嫌直してよ」
口付ければ眉間のシワもそのうち取れた。再び押し倒され、今度はココの足を開かせる。
「まっ……」
「待たないって言ったでしょ」
そう言うと隠そうとするココの両手をあっさりと掴んでしまった。そして開かれた股を見ると「もう濡れてるね」とにこりと笑った。
「うっ……恥ずかしいです……」
「何も恥ずかしがることは無いよ、俺もココを気持ちよくするから」
そう言って指先を濡れた秘部に這わせる。ぬちゃっと音をたてれば羞恥からか「うっ」と声を漏らす。だがステファニヴィアンは気にも止めず周囲を愛部する。その度に水音が響き、小さな声が共鳴するように聞こえてきた。
(すごく、挿れたい)
先程イったばかりというのにすっかり元気を取り戻したステファニヴィアンの息子はまたガチガチになっていた。だが、相手は処……
「ココ」
「っ、はい」
「そういえばキミは初めてだったり? 」
「……はい」
処女と聞いて内心すごくガッツポーズした。とても大人気ないとは自覚している。だからこそ優しくしてやらねばならないとと決心をする。
「ステファニヴィアンさん……」
「ん? 」
「あの……お恥ずかしながら……初めてですけど、その……」
「うん」
「ごめんなさい、ステファニヴィアンさんで……」
「えっ」
「工房長に抱かれる妄想を……」
語尾がだんだんと小さくなる。ステファニヴィアンはフリーズした。ココの発言を理解するために必死に思考を巡らせる。
「あっ、あー……」
理解すると彼まで真っ赤にする。
(可愛すぎる!! )
だいぶ自分に惚れ込んでいることは自覚していたがここまでとは思っていなかった。
愛しさのあまり顔を近づけ、口付ける。その間に指を一本中にいれる。
(爆発しそう。もう既にメーター振り切れてるけど)
今すぐ挿れたい気持ちを必死に我慢し、負担をかけないようにと念入りにほぐす。溢れる愛液に加えてだいぶ中は柔らかく感じた。
口付けを交わしながら中を探れば甘い声が漏れ出る。吐息混じりに漏れ出たその声はさらに興奮させる要因にしかならない。
指を二本に増やしてさらに動きを強める。中をかき混ぜられ、さらに艶めいた声を出す。
「あっ、はぁっ、んっ……」
「可愛いよ、ココ」
快楽から生理的な涙を流す。その雫を口付けで掬い上げる。
「早く……」
「ダメだよ、痛い思いさせたくない」
「でも、私、欲しくて」
「優しくしようとしているのに、そんなに煽らないでくれ」
「っ、わがまま、ダメですか」
その言葉に理性が飛びかけた。もう糸はあと一本という所まできた。それは反則だろと指を抜く。

(こっちの気も知らずに!)

酷くしそうになるのを必死に抑えてスキンを取り出す。窓は開いているが、気にしないことにした。どうせ聞こえない、はずだ。たぶん。
焦りからか上手く付けられないのをやっとつけ終えて、再びココの足の間に入る。
「ココ」
「はい」
「煽ったキミが悪い」
「……はい」
「痛くてもやめないから」
言葉の代わりに頷かれた。だいぶガチガチになった息子が爆発しそうだ。
「きて、ください」
その言葉に最後の糸も切れた。


「あぁっ!んっ、んっ」
「ぐっ……」
初めてということもあり痛みはあったが、ココは我慢した。だがステファニヴィアンにはお見通しだった。だが、散々煽られ我慢できなくなっていた為、ゆっくりと動いた。
ココは背中に手をまわして指先に力を入れるが、爪をたてないようにしている。
「ココ……」
ミチミチとココの中を圧迫している。ココの中は狭く熱くとても気持ちが良かった。
泣いているが、無理に挿れた自分が悪いのは分かっている。謝罪の言葉を詰まらせ、その代わりに何度も口付けた。
「んっ、ふっ……」
吐息を漏らし、ココもステファニヴィアンを求める。
「んあっ、んっ、きもちいい、ですか……」
「……うん」
罪悪感はある。現状ココは眉間にシワを寄せている。痛いだろうに我慢させてしまっている。
「ステファニヴィアンさん……」
「ステフでいいよ」
「ステ……フ」
「うん」
きゅうっと締め付けられ、ビクッと脈打った。
「あまり締め付けないでくれ、暴発しそうだ」
「いいですよ……」
「良くない」
しばらくじっとしていた為か、慣れた様子で、ココの眉間からシワがほぐれた。
「痛く、ないので……」
「本当に? 」
「はい」
「痛かったら言うんだよ」
「もちろんです」
さっきまで我慢してただろうになぁと考えながらゆっくりと腰を動かす。抜き差しの音が部屋に響き、聴覚すら犯す。
突き上げる度に声を漏らすココの反応から見るに、だいぶ慣れたようだ。
「ココ……」
「んっ、んっ」
寝そべるココの背中に手を入れて、密着させる。そして、さらに腰を早めた。
「あっ、あっ、ひぅ、あっ…んっ」
「ココっ」
根元まではいかなかったが、だいぶ飲み込んだ。そのまま勢いで奥を突き上げる。
「おっ、あっ、うっ♡」
「えっちな子だ」
「あっ、うっ、うっ、ぐっ、あんっ」
「少しは気持ちよくなったかな」
「んっ、うっ、すて」
「ん? 」
恐らく名前を呼ぼうとしているのか反応すれば黄色の瞳は涙を浮かべながらこちらを見る。
「すき……」
「俺も」
今度は、ゆっくりと焦らすように腰を振ればぎゅうっと抱きつかれる。
「もっと……」
ココの甘えた声に答えるように動かすスピードを早めれば、声を我慢することなく喘ぎ出す。
「ひっ、あっ、うっ、いっ、んっ」
激しく肌どうしがぶつかり合う。その音はさらに二人を興奮させる。
「すて、ふ、あっはぁ、んっ…」
「っ、ぐ……」
だいぶ限界が近い。ステファニヴィアンは歯を噛み締めて我慢する。だが、ココの中はもっとと締め付けて離さない。
「ひ、あっ、いっ、く……」
「いく? 」
「いき、そ…きもちい…っあんっ」
だいぶ蕩けた瞳で見つめられる。さらにココの奥を攻める。
「んっ、んんっ! んんっ! 」
舌を絡め合う口付けをしながらステファニヴィアンはスキンの中に欲を吐き出し、ココも中を強く締め付け、腰を浮かせながら派手にイった。


疲れ果てたのかココは死んだ目で天井を見つめていた。対して賢者タイムに入ったステファニヴィアンは完全に反省モードにも入っていた。
「……ココ」
名を呼べば力のない返事が返ってくる。よそよそしく正座をすると「無理させてすまない」と頭を下げた。
だいぶ落ち着いたココは「そんな」と少しづついつもの調子を取り戻していった。
「私がお願いしたことなので気にしないでください」
「それでも負担をかけた俺が悪い。だから俺のせいにしてくれ」
情けないとだいぶ落ち込んでいるようで、それを慰めようにも手足に力が入らない。そこでココはお願いすることで、罪悪感を拭おうと閃いた。
「お風呂……入りたいんですけど……動けなくて」
「……分かった」
ベッドから降りたステファニヴィアンはココを軽々と姫抱きし、そのまま浴室へ向かった。

体を洗い、大きなバスタブに二人で入る。
ステファニヴィアンの胸にに寄りかかるように背中を預けた。
熱すぎない丁度いい温度の湯に疲れが吹っ飛んだ。
「……ステファニヴィアンさん」
「ん? 」
「私、幸せですよ」
ココは耳を真っ赤にしてそう呟いた。その丸い耳があまりにも愛おしく、思わず唇で挟めばかなり大きな声でびっくりされたのは言うまでもない。

◇◇◇

「で、どこまで進展したんですか? 」
「それ聞いちゃう? 」
旅行から帰宅した次の日、工房にまた戻れば第一声がそれだった。苦笑しながらステファニヴィアンはこう答えた。
「……彼女のご両親に挨拶しないとなとは思うよ」
その言葉に「ボンとココ嬢結婚するってよーーーっ! 」と大声を出され、焦りのあまり道具を床に散乱させるほどの事件となったのだった。


「くしゅん! 」
「大丈夫?」
「誰かが噂したのかも……」
「それはそれは幸せな噂かもしれないわね」
アリゼーとヤ・シュトラに進展した報告をしに来たココはとても幸せそうな顔をしていた。
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