「えっ」
「くまがひどいでちゅ」
ソリューション9の片隅にあるアルカディアソサエティ、長く続いていた戦闘もようやく落ち着きベンチに座り込んでいると睡魔がやってきた。
意識が朦朧とし、首が何度も落ちかけたその時、声をかけられた。聞き覚えのある声にヴィーゼはハッと目を覚ます。ミララ族の少女、シュガーライオットだった。彼女は険しい顔でヴィーゼを見ていた。
「ちゃんと寝ないといいちあいもできないでちゅよ! 」
「うん……そうだね、ごめんね」
正論を言われたヴィーゼは俯く。すると意外な言葉を投げかけられる。
「あなた歩けまちゅか」
「へ? 」
「そんなに歩きはしまちぇん。ほんの少ちでちゅ」
シュガーライオットは小さな手でヴィーゼの手を取る。その手は少しだけ冷たく感じた。
「行きまちゅよ」
拒否権はないと言わんばかりにヴィーゼを立ち上がらせ、手を引いていった。
アルカディアソサエティの中に入り、周りのスタッフの目など気にせずずんずんと進んでいくシュガーライオットとその手に引かれるヴィーゼ。
そしてとある一室の扉を開くと真っ暗な中を歩く。辺りは暗闇に包まれているが、シュガーライオットは迷わず進んだ。
そして、ある程度進むと立ち止まり、隣からレギュレーターの稼働音が聞こえた。えっと音のする方向を見ると赤い丸い光が見えた。
「えっ、シュガーちゃん? 」
戸惑いを隠せないヴィーゼに対して何も言わず、大きな体になったことだけは何となく分かった。ただし、暗闇の中なのであくまで推測だが。
そしてスプレーを吹きかける音が聞こえると、真っ暗な世界にほんのり明るさが増した。上を見ると星が見える。また月が現れ、シュガーライオットの姿を照らした。
「本当はこんなことに使うべきではないのは分かってまちゅ。でもあたちの居場所をおちえてくれたあなたに恩返しがしたかったのでちゅよ」
自分よりも大きな体は振り向くと笑いかけた。
「シュガーちゃん……」
「さぁて、いんちゅぴれーちょんは降ってきてまちゅ。優しい眠りを贈りまちょう」
そしてまたスプレーを空に吹きかける。すると今度は大きなベッドがぼふんっと現れる。
「さぁ、これに寝てくだちゃい」
シュガーライオットはそう言ってヴィーゼにふかふかのベッドに寝転がるよう促す。ヴィーゼは恐る恐る現れたベッドに乗ると今までにないくらいふかふかで心地よく、まるで雲のベッドのようだと感じた。
「ふかふか……! 」
「まだまだ何か足りないでちゅね……そうだ! 」
何か閃いたようだ。またスプレーを振りかけると沢山のクッションが空から降ってきた。色んな形、色んな素材、色んな色のクッションだ。
「こんなに沢山いらないよ〜」
「ふかふかクッションは沢山ある方がいいんでちゅ! 」
謎理論に苦笑するヴィーゼ。だが横になって柔らかな感触に包まれると不思議と睡魔がやってくる。
「おやちゅみなちゃい、いい夢を」
シュガーライオットのその声を最後に眠りについた。