※パッチ7.4前の妄想

ある日のアルカディアソサエティ内控え室。
生身の挑戦者として有名になったノアはアルカディア闘士のハニー・Bと恋人関係である。
今日も会いに来たのだが、控え室には先客がいたのだった。
見慣れないエレゼン……否、ここではエレダイト族である男女2人が向かい合うように座っていたのだ。
(綺麗な人……)
まず目がいったのは鮮やかな赤色の髪の女性。胸元の開いたセクシーな衣装が彼女の妖艶を増している。
向かいに座るは刺青の入った男性。こちらも肌の露出が多めで、鍛えられた筋肉がとても映える。
思わず見とれてしまっていたノアの視線に気づいたのか、2人はこちらに視線を向けた。
「あら、噂の人」
クスクスと笑いながら女性は呟いた。
ノアはあっ、と小さな声を漏らして愛想笑いを浮かべて会釈し、その場から立ち去ろうとする。
「こっちへ来なさい」
女性の声が脳に直接語りかけるように響く。
ノアはその声に従うように無意識に動いた。
「えっ……」
気付けば、いつの間にか女性の膝の上に座っていたのだ。
呼びかけられてから今に至るまでの記憶がさっぱり無い。向かいに座るエレダイト族の男はじっとこちらを睨みつけている。
その眼差しは敵意しかなく、思わず体が震える。
「怖がらせちゃダメよ」
女性はそう窘め、ノアの頭を優しく撫でる。
男はふんと、反省する様子も見せずその目を閉じた。
「可愛らしい子……虐めたくなっちゃう」
その声は体の奥を弄るような感覚を覚えさせる魅了的なものだった。
「えっと……」
いつの間にかとは言えど初対面の女性の膝の上に座っているのは申し訳なく、降りようとするが体が上手く動かない。
まるで、見えないものに縛られているように。
「あなた、次は私と対戦するのよね」
「……へっ」
クルーザー級王者、ハウリングブレードを倒したその次はヘビー級に勝ち上がったということはヤーナから聞いていた。
次は女性と対戦する、ということはつまり背後の女性はヘビー級闘士ということになる。
「この小さいのがか」
先程まで口を開かなかった男が話しかけてくる。
女性は「生身だからハンデ8人らしいけれどね」と説明する。その後「何人で来ようが関係ない、全員蹂躙させればいいだけの話……」と物騒な話は聞かなかったことにした。
ノアはこの2人と対戦することに恐れを抱いた。クルーザー級までの闘士たちとは明らかに雰囲気が違う。ピリついた雰囲気にノアは気を引き締めた。
男は急に立ち上がるとこちらに向かってくる。
細長い体は立ち上がると尚のこと圧を感じた。
そして長い手でノアの顎を掴み、上を向けさせる。
色素の薄い紫の瞳と目が合った。その目には怒りが含まれているように見えた。だが、その程度で怯むノアではない。
こちらも負けじと睨みつけたのだった。
「ふん」
鼻で笑えば顎を掴んでいた手を離す。そして「行くぞ」と一言残して消え去ってしまった。
「楽しみにしてるわ。あなたの悲鳴が聞けることを」
まるでブラックアウトするように意識が途切れた。

そして次に目が覚めた時には一人椅子の上に座っていた。まるで夢を見ていたような感覚に陥る。

「……怖い」
思わず恐怖で震えた。あの目の奥に燃える怒りの炎が、こちらまで燃え伝わり焼き殺すのではないかと感じた。
それでも負けられない戦いがある。
当初の目的である、アルカディアチャンピオンになり魂を解放すること。その約束を果たすために、拳を握る。
「ノア?」
ふと聞き慣れた声が聞こえ顔をあげると、そこにはヤーナが立っていた。どこか考えていた様子のノアを心配していた。
「具合、悪い? 」
「ううん、大丈夫」
いつもの笑顔で答えれば「無理しないで」と苦笑するのだった。
「もうすぐヘビー級が始まるね」
「……そうだね、ヘビー級の奴らはアタシらにとても敵わないくらい強敵だ。でも、アタシはノアを信じてる。絶対に勝つって。だから」
ヤーナはノアの手を握った。そしてその手を額に寄せて、祈りを捧げるように目を瞑る。
「絶対、生きて帰って」
その声は震えていた。
「もちろん」
そう答えたノアの声は以前のように無理をした声ではない。自分の意思で、勝つという覚悟を決めた声だった。
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