季節は冬、寒さが厳しくなってきた季節に晴れて夫婦となった2人。その嫁のヒナタはいそいそと布団─にしては小さいがフカフカしている─を取り出し、それを机にかけたかと思えば、外れるとは知らなかった机の天板を乗せる。
机の土台と天板で布団を挟めば見慣れぬ形の机が出来る。それがガルデには異様なものだった。
確かに机は空気が通る為、足がどうしても冷える。というか俺を使ってくれればいいのに、と小言を零した。
そしてヒナタは机の中からコードを持って電力供給に差し込む。
そして布団をかぶ……る訳でも無く足にかける形で座った。
「ガルくんもおいで、暖かいよ」
ニコニコと明るい笑顔で見つめるヒナタにガルデは言われた通り、ヒナタの隣に座り、布団を捲って足を入れる。
「……これはなんだ? 」
「コタツっていうの。ひんがしの国での暖房器具だよ」
ヒナタはひんがしの国出身だ。なるほど、ひんがしの国にはこんな道具があるのだな、と感心しているとだんだんと足元が温まっていく。
「! 」
「ふふ、暖かくなってきた」
ガルデは初めての体験に思わずしっぽを立てる。
今まで寒さに必死に耐えながら過ごしてきた日々は何なのだろうかとさえ思った。
ヒナタはコタツから出ると台所から赤いカゴにオレンジを山盛りに入れてきて、それを台の上に置いてくれる。
ガルデの大好物であるオレンジ……よりも小ぶりだった。小さい品種のオレンジであろうか。
「あ、これはね、ミカンって言うんだよ」
これもひんがしの国からの届けものだね、とヒナタはミカンと呼ばれるオレンジの皮を剥くと、ガルデに差し出した。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
それを受け取り再びヒナタの手元を見ると、もう1個ミカンの皮を剥き、半分に割って口に頬張る。
ガルデも半分に割ったあと、口に入れる。
「甘い……! 」
思わず衝撃を受けた。普段食べているオレンジよりも甘いのだ。味が濃く、後から少し酸味がくるが、全体的に甘く、美味しい。
「美味しいでしょ」
「あぁ」
パタパタとしっぽの先を揺らし喜びを隠せない様子。
寒がりかつオレンジが大好きなガルデにとって、コタツにミカンは最高の組み合わせだったようだ。
気に入ってくれた事に喜びを感じていたヒナタは後々少しだけ苦労することになることをこの時は知らなかった。

──コタツを導入してからだいぶ日にちが経ったが、ガルデはコタツから出ようとしない。出るとしてもトイレと風呂くらいだろうか。それ以外は基本的にずっとコタツで暮らしている。
「ガルくん、体冷えちゃうよ」
ガルデはしっぽを動かして返事する。
「……俺はここらから出ない」
もごもごと背中を丸くし、横になるガルデ。彼の珍しいワガママっぷりにヒナタは半分呆れていたが、たまにはこういうワガママも可愛いなと思わず笑ってしまった。

さらに先の春の事、暑くなるまでずっと愛用していたガルデはコタツをしまうヒナタの裾を掴んでしょんぼりしていたのであった。
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