小さい頃から両親という存在はなかった。
正確にはいるんだけれど、私が親という存在を見たことがなかった。
普通のお家に、兄と姉と私。幼い頃から3人でいることがほとんどだった。
「メリー、寂しいって思ったことはある? 」
「ううん、お兄ちゃんとお姉ちゃんがいるから全然寂しくないよ」
「そうか、それならよかった」
兄はいつもそう言って優しく頭を撫でてくれた。
本当だよ、2人がいてくれたから。2人が両親の代わりに世話を焼いてくれたから。
「メリー、ご飯が出来たよ」
「メリー、今日はどんな髪型にしようか! 」
「お姉ちゃんにおまかせするね」
毎朝私の髪を結ってくれる姉の手も大好きだった。力が強くて、意地悪されていたらすっ飛んできて怒ってくれて。
「うちの可愛いメリーを泣かすな! 」って言って逆に泣かせてたっけな。

──ねえ、お兄ちゃん、お姉ちゃん
私は明日、素敵な人と夫婦になるの
この人と、幸せになるの
それでも、私のことを忘れないでね
ずっと、愛しててね


◇◇◇

「メリー」
優しく声をかけて起こすイツキは心配そうにメリーの顔を覗き込む。
「大丈夫か……? 」
「おはようございます、イツキさん」
「……怖い夢でも見たか? 」
そう言って優しく頭を撫でる。どうやら泣いたのだ、と後から気付いたメリーは優しく頬を拭った。
「いえ、そんな事は……」
「まだ起きるには早い。少しくらい寝坊してもいいだろう」
そう言ってイツキは目を閉じた。メリーも目を閉じ、イツキに擦り寄れば優しく背中に手を回して抱きしめられた。
「イツキさん」
「ん? 」
「……私、幸せです」
「なら良かった」
眠いところを起こしてしまったのか、すぐにイツキは眠りについた。そんなイツキの寝顔を見て「綺麗な顔……」と思わず呟いたのだった。
イツキは女性である、身体上は。だが、過去のトラウマもあってか、自分は女では無いと言っている。実際初対面の人から見ると中性的で男性と見間違えるくらいだ。メリーも出会った当初は男性だと勘違いしているくらいだ。
そんな2人が出会ったのは、メリーがナンパされている時に介入して助けてくれたのがきっかけだった。
メリーは可愛い。故に言い寄ってくる男が多く、それにウンザリしていたのだ。昔は兄と姉が守ってくれていたため、困ることは無かったのだが。
3人、兄はリムサ・ロミンサ、姉はウルダハ、そしてメリーはグリダニアへそれぞれ旅立った今、自分を守れるのは自分しかいない。
そんな発端にしつこいララフェルに付きまとわれていた。
「大丈夫ですか」
その姿と声と立ち振る舞いにメリーは一目惚れだった。なんて素敵で紳士な男性!と。
名前を聞く前に立ち去られた為、メリーはお近づきになりたく、必死に探し猛アタックの末に交際を開始し、今に至る。
そして、2人は今日の午後からエターナルバンドを挙げる。
イツキの口元にあるホクロが好きなメリーは眠っていることを確認し、唇でホクロに触れた。
「イツキさん、大好き」

──お兄ちゃん、お姉ちゃん
私、この人となら幸せになれるよ

エターナルバンド本番、純白のドレスに身を包んだメリーと同じく純白のテイルコートに身を包んだイツキ。
2人はお互いを見合い「似合ってる」「カッコイイ…! 」と褒めあった。

式場入りすればイツキの幼なじみであるミナトやヒナタ、その旦那であるホルテンとガルデ。メリーの兄たちであるレーヴェンとゾーネ、も暖かい拍手で迎えた。

「幸せになれよ」

親の代わりに育ててきた兄、レーヴェンは珍しく目頭が熱くなった。

──大丈夫。だってこの人は凄く優しくてカッコイイ、とても素敵な人だよ。
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